創世樹

mk-2

文字の大きさ
106 / 223

第105話 連携に乗せた貸しイチ

しおりを挟む
 ――逸材である弟子たちを守る為。そして何より、自分たちの住まう国を守る為。ヴィクターとカシムもまた練気チャクラを駆使して加勢した。





 グロウの練気を通した激しい石つぶてや枯れ葉乱舞による投擲物に加え、カシムが防護壁でエリーたちを守り、ヴィクターは敵の気弾の嵐を練気のブラックホールで飲みこみ、吸い取った。





 果たして、深手を負わせた上に磁力を操る攻撃をするバルザックを攻略し、遂にはメランとライネスの撃ち放つ気弾をも実質的に無効化した。





「――グロウ。如何に君の使う練気の量が膨大とはいえあれほど激しく練気を込めた攻撃をし続ければ疲れるだろう。私の防護壁の後ろで少し休んでなさい。」




「――う、うん……」






 遠距離からの投擲戦でライネスたち4人を圧倒したグロウ。やはり底知れぬ力を秘めてはいるが、疲労で激しく汗をかいている。素直にカシムの後ろへと身を退けた。






「――ちいィッ!! 隊長の磁力もメランの気弾も効かないってのォ!? ……しゃあない。なら頼みはあたしとライネスの幻覚攻撃だろ! 行くよ、ライネスッ!!」





「――えっ……お、おうッ!!」






 ――敵の気弾の応酬は止めたが、同時にグロウも少し下がった。ならば格闘戦に幻覚を加味した攻撃のみ。






 今のところ、やはりこの2人の繰り出す幻覚攻撃が最も厄介だろうか。攻撃のタイミングが読めない。下手をすると幻覚を見たと同時に死に直結する。






「――――さっき喰らってみて解ったよ! あんたら、一度に大人数に幻覚は仕掛けられないわね!! なら、数が多いこっちの方が断然有利!! もし喰らっても『アレ』があるっしょ!? このまま叩きのめすよ!!」




「よっしゃ!!」
「応ッ!!」
「にひひ! 一気に勝鬨、上げてやるっスよ!!」





 ――エリーの鼓舞する掛け声に、ガイ、セリーナ、イロハは快活に返事。相手が初見殺しと言ってもいい幻覚攻撃の使い手でも臆さず突撃する。






 突貫してくるライネスと改子は2人。こちらは前衛だけでも4人ほど。後衛にグロウとテイテツが控え、さらにカシムとヴィクターが加勢して計8人。充分に勝機はうかがえる。





「――むっ!! こりゃあ――――」





 ――早速、改子とライネスはガイに仕掛けてきたようだ。突然ガイの視界からライネスが煙のように消え、改子は何十人にも分身して動きが掴めない。






 予測不可能な攻撃に、ガイも思わず身を縮めて一瞬止まってしまう。






「――ホラ、こっちだ喰らえエエエイッ!!」





 ――気が付けば、ガイは背後を改子に取られていた。鋭いナイフの一閃がガイの首に迫る――――






「――――かああああああつッッ!!」






「――なっ…………あっ……!?」






 瞬間。改子の幻覚は解けた。どうやら改子本人はガイから見て左斜め前方向の、やや太刀を振りにくい位置から仕掛けようとしていたようだが――――幻覚のかかっていないエリーが即座に、今度こそ『練気の当身』を改子の額に見舞った。







 たちまち、改子は全身に纏っていた練気が強制的に立ち消え、エネルギーの流れを阻害されて立ち眩みを起こす。






「――――隙ありッ!!」






 ――さらに練気の翼竜に跨っていたセリーナが瞬時に間合いを詰め、飛び降りながら大槍の一撃を、ノーガードの状態の改子に喰らわせた――――!!






「――がっ……げぼぉっ――――!!」





 ――心臓を狙ったセリーナだったが、翼竜のコントロールがまだ少し不安定だったのか、少し体勢が崩れたまま突きを繰り出す形になった。





 それでも新装した槍にセリーナの技と力、そして練気の強化で得たひと突きは凄まじい威力だ。急所の心臓は外れたが、脇腹を深々と抉り、穿ち抜いた。血を吐いて蹲る改子――――






「――てりゃあッ!!」





 幻覚が解け、位置と情況を把握したガイはすぐさま、改子を蹴飛ばして得物の大型ナイフ2本を遠くへ離した。






「――かっ、改子ォ!! すぐに練気を練って傷を治し――――ぐわっ!?」







「――お兄さんも隙だらけっスよ――――!!」






 ――ライネスもまた、練気の幻覚で身を隠して死角から狙うつもりでいたが、改子が倒れて動揺したのか練気の流れを乱し、そこをまたすぐさま、今度はイロハが練気の当身をライネスの額に見舞った。同じくよろめき、バランスを崩したところを――――






「――――どおりゃああああああーーーッッッ!!」





「――ぶぎゃああッはあっ――――!!」





 ――電磁力付与サンダーエンチャントを込めたままの、豪烈なイロハのハンマーのフルスイングがライネスの顔面に炸裂した。なかなかにハンサムなはずのライネスも、一瞬殴られた圧で顔面の造作を崩し、吹っ飛んだ――――








「――ナイスアシストだぜ、エリー!!」





 ガイの窮地を救った連携アシストに、エリーとガイは拳を突き合わせて称え合う。





「OK、OK。やられっぱなしだったらガイにも一発くれてやろうかと思ったけど、追撃したからチャラにしたげる。修行中、セリーナとばっか喋ってたから貸しイチね。本来なら極刑もんよ?」






「……あ? んだよ、それ――――」






「――やはり、根に持っていたか。つくづく視線と殺気を感じていたが、この朴念仁の男は全く……」





 セリーナは気付いていたが、敢えてガイに言わなかった。練気の実力が互角程度な為、ガイとセリーナが2人きりで修行することが多く、エリーとの愛情を込めたコミュニケーションが不足し、妬いてしまっていたことに。やや恨みがましく、エリーはガイに毒づいた。もっともセリーナはミラ一筋なことに変わりは無いが。






「――何なんだァ、こんな時に2人とも一体? 俺、なんかしでかしたのか…………!?」





「――ふんっ!!」

「――やれやれ……もう敵は打ち破ったも同然。畳みかけるぞ、お前ら!!」





 ――鼻息を鳴らすエリーと、頭を抱えるセリーナ。明け透けに見えて、久々に女心が動いたエリーだったが、その心の真相に今のガイは気付きもしなかった――――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...