110 / 223
第109話 奈落転落
しおりを挟む
「――――君たち『人間』に大した用は無いよ。私のプレッシャーで肉体と精神が固まるうちは……私に触れることすら出来ないのだから。」
「――ぐっ……」
「何っだ……この得体の知れねえ圧は……ッ!!」
「力が……入らん…………」
エリーたちはそのまま力を入れることすらままならず、這いつくばってしまう。
まるで――――絶対的な君主を前に跪いてしまう下僕のように…………。
「――お姉ちゃん……み、んな…………あっ――――?」
謎のプレッシャーで固まる中、女はグロウに近付き――――優しく抱擁した。
背を抱き、頭をよしよし、と撫でられ…………さながら愛情を傾ける伴侶のようにグロウにだけ優しく接した。
「――――ああ……会いたかった。本当に会いたかったよ、グロウ。私の名前は、アルスリアっていうんだ。もっとも……それはお互いにこの星で『人間』を模して生まれ……生きていくための仮初めの名前に過ぎないけどね――――さあ、一緒に行こう。『養分』のオトコよ。『種子』たるオンナである私は…………君と『創世樹』という結婚式場で結ばれる為だけに存在するのだから――――」
「――あっ……あ……!?」
そのままグロウの手を引いて、アルスリアは戦艦へと――――ガラテア軍へと連れ去ろうとする――――
「――ん?」
刹那、アルスリアは熱を伴った圧を背後から感じた。
「――――グロウを…………離せ…………ッ!!」
エリーは、練気の力を限界ギリギリまで開放して、アルスリアの放つ『プレッシャー』に逆らう。僅かではあるが、一歩、また一歩と、アルスリアの手からグロウを奪い返そうと近付く。
「――――これは驚いたな。まさか『鬼』遺伝子混合ユニットも練気を通じて鍛え上げれば、私のプレッシャーにすら抗えるとは。だが――――」
「――――ぐっ!!」
――アルスリアは、エリーに対するプレッシャーをさらに強め、完全に拘束する。
「――所詮は『創世樹』を守護する古代種の一部に過ぎない、たかが『鬼』だ。その程度では私に抗う道理は無いよ。ましてや…………仮初めの姉弟関係を結ぶ程度の雑魚に、私たち『つがい』の運命と言える結婚を邪魔する道理など、これっぽっちも存在しないのだからね――――!!」
「く…………あ…………っ」
「お姉……ちゃん…………!!」
――当然、グロウもエリーの身を案じるのだが…………この切迫した状況で奇妙な感覚を覚え、戸惑っていた。
(――な……何なんだ…………この人に抱かれていると…………まるで、あったかいベッドで寝ているような安らかな気持ちになるのは……!? この女の人……アルスリア…………を見ていると――――まるで、自分自身とこの人と仲間――――いや、おんなじ存在だったみたいに……恋しい気持ちになる……胸がときめく……一体何なんだ、これ――――)
――禍々しいプレッシャーを放ち、冷酷に他を圧倒するアルスリアを前に、本来ならば凍り付くほどに恐ろしいはずなのに、グロウは奇妙な安らぎすら感じていた。
「――――ふむ。このままグロウ……『養分のオトコ』だけを連れて行っても、ダーリンは悲しむばっかりか…………いいだろう。目の上のたん瘤だが、姑と思って、君も連れて行ってあげよう、エリー。もっとも、君に待っているのは本来の務め――――『鬼』遺伝子混合ユニットとしての生物兵器への実験と改造だがね。ははは。」
「――うううう…………!」
アルスリアは、プレッシャーに加えて、離れたモノを動かすサイコキネシスでエリーを捕縛したまま、戦艦へと連れて行く――――言う間もなく、戦艦へ格納されてしまった。
「――まっ……ちやがれ…………エリーを……かえ…………せ――――」
今度はガイが抵抗するが――――
「!? ……そ、それ…………は…………ウチの……!?」
グロウを抱いたまま振り返るアルスリア。懐から取り出したのは、虹色の球体――――
「――そうだよ。タタラ=イロハくん。発信器からの映像を見て、我が軍の技術部によってすぐに研究開発された。勝てない敵と出会った時の、まさにとっておきだね。この転移玉は。」
「――んな……ばか……な――――」
「ヴォルフガングお父様は丁寧にも、人数分持たせてくれたよ。君たちを一箇所へではなく、世界中の何処かへバラバラに放逐する為にね――――もっとも、この使い方は勝てない敵に、ではなく……負かした敵へのダメ押しだがね。改造兵たちの、意趣返しだよ――――そらっ。」
「――うわっ!!」
「――こんなことが……」
「――ウチの……発明~……」
「――仕切り直しですか……」
――そのまま。いとも簡単に。アルスリアが投げた『ガラテア式転移玉』によって、ガイたちは何処か遠くへと飛ばされてしまった――――
「――エリーッ!! みんな!!」
「――ガイも……4人とも……お、おのれ――――」
――殺されてはいないとはいえ、目の前でエリーとグロウは連れ去られ、ガイたちは世界の何処かへ放逐されてしまった。残るカシムとヴィクターは、憤怒と絶望に叩き落とされた。
「――さて。もうじき、我が軍の援軍が到着する。さっきまでの部隊とは違い、皆、重装備だよ。君たちニルヴァ市国の者たちは……一体何時間持ち堪えられるのかね? ――――ははははは――――」
そう嘲笑って、アルスリアもグロウを抱いて戦艦へ帰っていった。
同時に、空が敵の増援で真っ黒に埋め尽くされる――――
「――俺たちも、これまでか。カシム――――」
「――そのようだ。ヴィクター。せめて最期には……エリーたちの無事を祈ろう――――」
2人は、最後の練気を振り絞り、生存率0%の抗戦を行なった。
「――――ヒッズ…………エリー……ガイ……グロウ…………どうやら俺は終わりのようだ。どうか、無事で――――」
――――ニルヴァ市国の民と共に戦ってきたタイラーの最期の声は、爆撃音にかき消された――――
「――ぐっ……」
「何っだ……この得体の知れねえ圧は……ッ!!」
「力が……入らん…………」
エリーたちはそのまま力を入れることすらままならず、這いつくばってしまう。
まるで――――絶対的な君主を前に跪いてしまう下僕のように…………。
「――お姉ちゃん……み、んな…………あっ――――?」
謎のプレッシャーで固まる中、女はグロウに近付き――――優しく抱擁した。
背を抱き、頭をよしよし、と撫でられ…………さながら愛情を傾ける伴侶のようにグロウにだけ優しく接した。
「――――ああ……会いたかった。本当に会いたかったよ、グロウ。私の名前は、アルスリアっていうんだ。もっとも……それはお互いにこの星で『人間』を模して生まれ……生きていくための仮初めの名前に過ぎないけどね――――さあ、一緒に行こう。『養分』のオトコよ。『種子』たるオンナである私は…………君と『創世樹』という結婚式場で結ばれる為だけに存在するのだから――――」
「――あっ……あ……!?」
そのままグロウの手を引いて、アルスリアは戦艦へと――――ガラテア軍へと連れ去ろうとする――――
「――ん?」
刹那、アルスリアは熱を伴った圧を背後から感じた。
「――――グロウを…………離せ…………ッ!!」
エリーは、練気の力を限界ギリギリまで開放して、アルスリアの放つ『プレッシャー』に逆らう。僅かではあるが、一歩、また一歩と、アルスリアの手からグロウを奪い返そうと近付く。
「――――これは驚いたな。まさか『鬼』遺伝子混合ユニットも練気を通じて鍛え上げれば、私のプレッシャーにすら抗えるとは。だが――――」
「――――ぐっ!!」
――アルスリアは、エリーに対するプレッシャーをさらに強め、完全に拘束する。
「――所詮は『創世樹』を守護する古代種の一部に過ぎない、たかが『鬼』だ。その程度では私に抗う道理は無いよ。ましてや…………仮初めの姉弟関係を結ぶ程度の雑魚に、私たち『つがい』の運命と言える結婚を邪魔する道理など、これっぽっちも存在しないのだからね――――!!」
「く…………あ…………っ」
「お姉……ちゃん…………!!」
――当然、グロウもエリーの身を案じるのだが…………この切迫した状況で奇妙な感覚を覚え、戸惑っていた。
(――な……何なんだ…………この人に抱かれていると…………まるで、あったかいベッドで寝ているような安らかな気持ちになるのは……!? この女の人……アルスリア…………を見ていると――――まるで、自分自身とこの人と仲間――――いや、おんなじ存在だったみたいに……恋しい気持ちになる……胸がときめく……一体何なんだ、これ――――)
――禍々しいプレッシャーを放ち、冷酷に他を圧倒するアルスリアを前に、本来ならば凍り付くほどに恐ろしいはずなのに、グロウは奇妙な安らぎすら感じていた。
「――――ふむ。このままグロウ……『養分のオトコ』だけを連れて行っても、ダーリンは悲しむばっかりか…………いいだろう。目の上のたん瘤だが、姑と思って、君も連れて行ってあげよう、エリー。もっとも、君に待っているのは本来の務め――――『鬼』遺伝子混合ユニットとしての生物兵器への実験と改造だがね。ははは。」
「――うううう…………!」
アルスリアは、プレッシャーに加えて、離れたモノを動かすサイコキネシスでエリーを捕縛したまま、戦艦へと連れて行く――――言う間もなく、戦艦へ格納されてしまった。
「――まっ……ちやがれ…………エリーを……かえ…………せ――――」
今度はガイが抵抗するが――――
「!? ……そ、それ…………は…………ウチの……!?」
グロウを抱いたまま振り返るアルスリア。懐から取り出したのは、虹色の球体――――
「――そうだよ。タタラ=イロハくん。発信器からの映像を見て、我が軍の技術部によってすぐに研究開発された。勝てない敵と出会った時の、まさにとっておきだね。この転移玉は。」
「――んな……ばか……な――――」
「ヴォルフガングお父様は丁寧にも、人数分持たせてくれたよ。君たちを一箇所へではなく、世界中の何処かへバラバラに放逐する為にね――――もっとも、この使い方は勝てない敵に、ではなく……負かした敵へのダメ押しだがね。改造兵たちの、意趣返しだよ――――そらっ。」
「――うわっ!!」
「――こんなことが……」
「――ウチの……発明~……」
「――仕切り直しですか……」
――そのまま。いとも簡単に。アルスリアが投げた『ガラテア式転移玉』によって、ガイたちは何処か遠くへと飛ばされてしまった――――
「――エリーッ!! みんな!!」
「――ガイも……4人とも……お、おのれ――――」
――殺されてはいないとはいえ、目の前でエリーとグロウは連れ去られ、ガイたちは世界の何処かへ放逐されてしまった。残るカシムとヴィクターは、憤怒と絶望に叩き落とされた。
「――さて。もうじき、我が軍の援軍が到着する。さっきまでの部隊とは違い、皆、重装備だよ。君たちニルヴァ市国の者たちは……一体何時間持ち堪えられるのかね? ――――ははははは――――」
そう嘲笑って、アルスリアもグロウを抱いて戦艦へ帰っていった。
同時に、空が敵の増援で真っ黒に埋め尽くされる――――
「――俺たちも、これまでか。カシム――――」
「――そのようだ。ヴィクター。せめて最期には……エリーたちの無事を祈ろう――――」
2人は、最後の練気を振り絞り、生存率0%の抗戦を行なった。
「――――ヒッズ…………エリー……ガイ……グロウ…………どうやら俺は終わりのようだ。どうか、無事で――――」
――――ニルヴァ市国の民と共に戦ってきたタイラーの最期の声は、爆撃音にかき消された――――
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる