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第135話 彼らの選択
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――――場が荒れだした本国某所の応接室に、リオンハルトが入ってきてすかさず鶴の一声。
リオンハルトも内心アルスリアやヴォルフガング相手に自制心を失ってしまうところがあるので、ただの冷徹さよりもさらに苦々しい顔をしながら改造兵たちに命じる。副官のライザも入ってきて、複雑な心持で苦笑いをした。
「――おっ……リオンハルト……えーと…………閣下!」
「――全員、列を成して閣下に敬礼ッ!!」
――珍しくバルザックは、まともな軍人らしく他3人の改造兵に号令を掛けた。メランも慌てて4人で横1列に並んでリオンハルトに敬礼した。改子も号令に従うも、欲情と闘争心が湧いてくる状況下で苦々しい顔を浮かべた。
リオンハルトとライザも敬礼を返したのち、『休め』の構えを取りながら話し始める。
「――4人とも、楽にしてよろしい。そこの長椅子に掛けたまえ。少し面談を行なう。」
「――はっ!」
「ういっす……」
「――ちっ……了解。」
「了解ですぅ……」
そうそれぞれが返事をしてから、4人同時に長椅子に腰掛け、背筋を伸ばしてリオンハルトの話に傾聴した。対面にリオンハルトとライザも座る。
「――――まず……先のニルヴァ市国侵攻作戦では真にご苦労だった。最も重傷を負ったメラン=マリギナ軍曹だが……見ての通り傷は痛ましいが、活動に支障はない。傷痕や失った左目もいずれ時間をかけて医療機関での治療で元の健康状態まで治そう。費用は私が負担する。」
「……は……はぁい…………お気遣い、痛み入ります、閣下ぁ。」
――リオンハルトは堅苦しい創面のままだが、まず4人を労い、重傷を負ったメランへの手当てを明言した。
「――そして…………ニルヴァ市国での作戦。私は敢えて君たち4人にエリー=アナジストン一派と戦わせた。以前、セフィラの街近郊での君たちの交戦経験を踏まえ、再戦を行なうことで、諸君らの実力と……相対したエリー=アナジストン一派の実力差や成長具合を鑑みたのだ――――結果は初戦の時とは正反対と言えてしまうが…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
――ニルヴァ市国での戦いではアルスリアが全て掻っ攫う形でガラテア軍の勝利となったが、改造兵たちの戦いぶりとしては大敗を喫していた。その事実に、何か責を問われるのでは……と4人は緊張した。
「――――私が鑑みた結果、今後の作戦では……そのエリー=アナジストン一派と幾度も交戦する可能性が極めて高い。我が軍の機密情報を奪い去り、幻霧大陸へと進出するにあたって彼奴らの動向をどう分析しても、それは避けられないだろう。このまま君たちに戦わせるには荷が重いと上層部は判断している――」
「――えっ……」
「そりゃあ……」
――戦いを避ける。そう含んだ語調で話すリオンハルトに、思わずライネスとバルザックは声を漏らした。
「――――そこで私は考えた。改造兵の練度を上げ、より強力で、かつ自制心の利いた新たなる改造兵の開発、及び導入も視野に入れている。言うなれば――――今後、君たちに無理な戦闘任務に就かせる必要は無くなってきているのだ。」
「ちょっと、それは――――」
「改子……」
――『もう、お役御免だ』と言わんばかりの話に、改子が噛みつきそうになる。メランが咄嗟に宥めるが……。
「――解っている。危険極まりない戦場へ向かわせる為に、我々軍の研究機関のあらゆる施術や措置によって……貴官らから恐怖心を奪い、闘争本能を刺激して戦闘狂へと変えてしまったのは私にも非がある。ただ闘争の歓喜をそのままに戦場へと派遣し、そこで命が尽きてしまうのなら、それもやむなしと当初は考えていたが……」
リオンハルトは、徐に手元の端末を開き、データを参照しながら続ける。
「――だが……報告ではあのグロウ=アナジストンなる少年……今後の作戦での重要な鍵となる人物ではあるが、ライネス=ドラグノン軍曹。及びメラン=マリギナ軍曹への精神干渉によって……命を捨てた闘争に赴くには致命的とも言える、何らかの恐怖心や生命愛護に似た精神へと洗脳状態であることを確認している。恐怖心や命を尊ぶ精神を持ったままでは……従来の我が軍のやり方では危険と判断する――」
「――ま、待ってくだせえ!!」
――自分たちのアイデンティティの否定。それも今更になって。バルザックは思わず席を立って咆哮する。
「――話は最後まで聴き給え、バルザック曹長。貴官らには2つの道がある。それを貴官ら自身が選択するのだ。」
リオンハルトは端末を閉じ、4人を睥睨して視線を向けた。
「――――2つの道……1つ目はこれまで通り、改造兵として戦場の最前線での戦闘任務に赴くこと。そして――――2つ目は、軍属を離れ、ガラテア帝国領地下で充分な手当てを受けて平穏なる時を過ごし……来るべき我が崇高なるガラテアの新時代を安全に迎えるか、だ。特にその選択は――――ライネス=ドラグノン軍曹とメラン=マリギナ軍曹に強く推奨する。」
「――なっ……」
「平穏なる時…………」
2人は驚くが、胸に手を当て考えるうち…………それも選択としては充分にある、と何処かで理解していた。
「――これは4人全員一括ではなく、君たち個人個人の選択を尊重したいと思う。このまま戦地に向かうか……それとも、充分な帝国からの庇護と手当てを受けながら一般人として暮らすか。他の誰の事情や感情ではなく、君たち自身で選びたまえ――――」
――――当然と言えば当然の処置。だが、4人の顔はひとたび翳りを見せた。彼ら自身の選択とは――――
リオンハルトも内心アルスリアやヴォルフガング相手に自制心を失ってしまうところがあるので、ただの冷徹さよりもさらに苦々しい顔をしながら改造兵たちに命じる。副官のライザも入ってきて、複雑な心持で苦笑いをした。
「――おっ……リオンハルト……えーと…………閣下!」
「――全員、列を成して閣下に敬礼ッ!!」
――珍しくバルザックは、まともな軍人らしく他3人の改造兵に号令を掛けた。メランも慌てて4人で横1列に並んでリオンハルトに敬礼した。改子も号令に従うも、欲情と闘争心が湧いてくる状況下で苦々しい顔を浮かべた。
リオンハルトとライザも敬礼を返したのち、『休め』の構えを取りながら話し始める。
「――4人とも、楽にしてよろしい。そこの長椅子に掛けたまえ。少し面談を行なう。」
「――はっ!」
「ういっす……」
「――ちっ……了解。」
「了解ですぅ……」
そうそれぞれが返事をしてから、4人同時に長椅子に腰掛け、背筋を伸ばしてリオンハルトの話に傾聴した。対面にリオンハルトとライザも座る。
「――――まず……先のニルヴァ市国侵攻作戦では真にご苦労だった。最も重傷を負ったメラン=マリギナ軍曹だが……見ての通り傷は痛ましいが、活動に支障はない。傷痕や失った左目もいずれ時間をかけて医療機関での治療で元の健康状態まで治そう。費用は私が負担する。」
「……は……はぁい…………お気遣い、痛み入ります、閣下ぁ。」
――リオンハルトは堅苦しい創面のままだが、まず4人を労い、重傷を負ったメランへの手当てを明言した。
「――そして…………ニルヴァ市国での作戦。私は敢えて君たち4人にエリー=アナジストン一派と戦わせた。以前、セフィラの街近郊での君たちの交戦経験を踏まえ、再戦を行なうことで、諸君らの実力と……相対したエリー=アナジストン一派の実力差や成長具合を鑑みたのだ――――結果は初戦の時とは正反対と言えてしまうが…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
――ニルヴァ市国での戦いではアルスリアが全て掻っ攫う形でガラテア軍の勝利となったが、改造兵たちの戦いぶりとしては大敗を喫していた。その事実に、何か責を問われるのでは……と4人は緊張した。
「――――私が鑑みた結果、今後の作戦では……そのエリー=アナジストン一派と幾度も交戦する可能性が極めて高い。我が軍の機密情報を奪い去り、幻霧大陸へと進出するにあたって彼奴らの動向をどう分析しても、それは避けられないだろう。このまま君たちに戦わせるには荷が重いと上層部は判断している――」
「――えっ……」
「そりゃあ……」
――戦いを避ける。そう含んだ語調で話すリオンハルトに、思わずライネスとバルザックは声を漏らした。
「――――そこで私は考えた。改造兵の練度を上げ、より強力で、かつ自制心の利いた新たなる改造兵の開発、及び導入も視野に入れている。言うなれば――――今後、君たちに無理な戦闘任務に就かせる必要は無くなってきているのだ。」
「ちょっと、それは――――」
「改子……」
――『もう、お役御免だ』と言わんばかりの話に、改子が噛みつきそうになる。メランが咄嗟に宥めるが……。
「――解っている。危険極まりない戦場へ向かわせる為に、我々軍の研究機関のあらゆる施術や措置によって……貴官らから恐怖心を奪い、闘争本能を刺激して戦闘狂へと変えてしまったのは私にも非がある。ただ闘争の歓喜をそのままに戦場へと派遣し、そこで命が尽きてしまうのなら、それもやむなしと当初は考えていたが……」
リオンハルトは、徐に手元の端末を開き、データを参照しながら続ける。
「――だが……報告ではあのグロウ=アナジストンなる少年……今後の作戦での重要な鍵となる人物ではあるが、ライネス=ドラグノン軍曹。及びメラン=マリギナ軍曹への精神干渉によって……命を捨てた闘争に赴くには致命的とも言える、何らかの恐怖心や生命愛護に似た精神へと洗脳状態であることを確認している。恐怖心や命を尊ぶ精神を持ったままでは……従来の我が軍のやり方では危険と判断する――」
「――ま、待ってくだせえ!!」
――自分たちのアイデンティティの否定。それも今更になって。バルザックは思わず席を立って咆哮する。
「――話は最後まで聴き給え、バルザック曹長。貴官らには2つの道がある。それを貴官ら自身が選択するのだ。」
リオンハルトは端末を閉じ、4人を睥睨して視線を向けた。
「――――2つの道……1つ目はこれまで通り、改造兵として戦場の最前線での戦闘任務に赴くこと。そして――――2つ目は、軍属を離れ、ガラテア帝国領地下で充分な手当てを受けて平穏なる時を過ごし……来るべき我が崇高なるガラテアの新時代を安全に迎えるか、だ。特にその選択は――――ライネス=ドラグノン軍曹とメラン=マリギナ軍曹に強く推奨する。」
「――なっ……」
「平穏なる時…………」
2人は驚くが、胸に手を当て考えるうち…………それも選択としては充分にある、と何処かで理解していた。
「――これは4人全員一括ではなく、君たち個人個人の選択を尊重したいと思う。このまま戦地に向かうか……それとも、充分な帝国からの庇護と手当てを受けながら一般人として暮らすか。他の誰の事情や感情ではなく、君たち自身で選びたまえ――――」
――――当然と言えば当然の処置。だが、4人の顔はひとたび翳りを見せた。彼ら自身の選択とは――――
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