創世樹

mk-2

文字の大きさ
152 / 223

第151話 湯あたりします!!・中編

しおりを挟む
 ――開放的な気分の中、露天風呂ではしゃぐエリーとイロハ。セリーナが苦々しく見ていると、従業員の女性が風呂の中の仕切りを外した。



「――はーい。仕切り外しますよー。今から混浴でーす。男湯にも行きたい方はどうぞー。」




「――ニャッ!? 遂に!? 遂に混浴なのね!? やったあああーっ!! ガイ~っ♡」




 エリーはそう叫ぶと、湯の底に沈んでいって、そのまま女湯から消えた。湯の中を潜っているようだ……。




「――にっひっひっひ~っ。いよいよ混浴温泉でのくんずほぐれつが拝めるんスかねえ――――って、ああーッ!?」



 イロハが突然、ひと際大声で叫ぶ。突然の大音量に、知覚鋭敏化を使わなくても驚き竦み上がってしまうセリーナ。



「――何だ、いきなり。大体お前ら騒ぎ過ぎだぞ。湯に浸かってリラックスするくらい、もう少し落ち着いてだな――」



 ――イロハは、なおヒヒ爺のような創面でセリーナににじり寄っていく。



「――いつもの冒険だと胸当てや着痩せで気付きにくかったっスけど……セリーナさん。エリーさんよりさらにめっちゃご立派なお胸をお持ちじゃあないっスかああ~っ……げっへっへっへ。是非ぜひ触らせて――――」




「――――それ以上近寄るな。私の肌に一瞬でも触れれば、その瞬間、私は、お前を、コロス――――」




「――――ひいッ!? さ、サーセンしたッス……」




 ――女性同性愛者レズビアンとはいえ、女性なら誰にでも自らの肢体に触れさせるわけでは当然ない。いやらしく近寄るイロハに対し、湯の中とはいえ拳法の構えを取り、練気チャクラを集中し始めた――――これは本気だ。思わぬ鋭い殺気に、さすがのイロハも身を引く。





「――しっかし……」



「――何だ?」




 セリーナの牽制で少し落ち着いたイロハは、劣情ではない目で、セリーナの引き締まった肢体を眺める。どこか沈痛な面持ちで。




「――闘技場で合流した時から違和感あったっスけど……やっぱり、身体弄くってるっスよね……? セリーナさん。ガラテア軍に改造でもされたんスか――――?」




「――むっ……」




 イロハは、セリーナの身体の異変に気付いていた。




 セリーナが構えを解くと……うっすらとカモフラージュされていたセリーナの左半身が見えて来た――――所々、機械化されている。サイボーグだ――――




「――やはり、バレていたか……奴らにこの身体を蹂躙されたなど、出来れば誰にも悟られたくなかったのだがな…………」



「……光学的な技術で隠してるっスけど……やっぱ所々身体の動きがぎこちないし、たまにモーター音っぽい音も聞こえてたっス。それ……大丈夫なんスか…………?」




 ――セリーナは機械化された半身を自らの指でなぞりながら、話し出す。




「――――あの軍人……アルスリアと言ったか。奴に転移玉テレポボールを投げつけられた後、私は運の無いことに、ガラテア軍が駐留するすぐ近くに飛ばされてしまった。リオンハルトとかいう軍人と、アルスリアに見付かり……私を戦力に加えようと改造手術を受けてしまったんだ――――」




「――セリーナさん。」




 ――思わぬ辱めを、離れ離れになっている間に受けていたセリーナ。しかしセリーナは冷静に続ける。




「――だが安心しろ。奴らが私の頭を弄くって洗脳する前に、私は逃げ出してやった。それも、この機械化された箇所だけでなく、練気までより強化された状態でな――――ガラテアの鳥頭共め。みすみす敵を強くして逃がすなど、ざまは無い。」




「……でも、そんな身体、ミラさんが見たら――――」




「わかっている。ミラのことだ。酷く悲しませてしまうだろう…………だから普段は光学迷彩で隠しているし、ミラのもとへ帰るまでには何とか見れる身体を取り戻して見せるさ。」




「………………」




 ――純粋な己の肉体の何割かを失い、機械化されてしまったというのに…………セリーナは意外と落ち着いていた。やはり、身体が変わってしまったとはいえ強力な力を得たから納得しているのか…………あるいは肉体が異形と化してしまうことは心さえ人のままなら問題ないという認識なのか。





「――きっと再生医療や生体科学の分野で元の人間らしい姿に戻れるはずっス。その時はテイテツさんと……ウチも協力するっスからね。」



「――ああ。そうだな。その時が来れば、頼む。」



 イロハの気遣いに、セリーナは再び光学迷彩で機械部分を隠しつつ、どこか恭しい態度と心持ちで応えた。



「――さあーって!! あっちの湯はどうなってるッスかねえ!? ぬふ♪ ぬふふふふ…………」




「――おい。いくら混浴だからって、いたずらしに行くなよ!」




「だ―いじょうぶっス!! ウチ、推しカプの傍に自分は要らないタイプの人間なんで!! 少し遠くから眺めるだけっスよ~……ぐへへへへへ……」




「……おしかぷ……?」




 ――聴き慣れないオタク言葉に、セリーナは頭を傾げるだけだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...