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第163話 翻るチェッカーフラッグ
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――――もはやライバルは強化機械装甲のみ。最後のジャンプ台を前に、イロハは大きく勝負を懸ける――――
「ギアの開放度を90%――――!!」
「――――っ!!」
――イロハはさらに出力を上げて、『黒風』の悲鳴にも似たエンジンの嘶きを上げて超速でジャンプ台を駆ける。強化機械装甲もラストスパートとばかりにスピードを上げていく。ガショッ、ガショッ、ガショッ……と地を蹴る音が殊更大きく響く。
ジャンプしたタイミングは、奇しくも同時であった――――
宙高く飛び上がり、そして着地――――
「――くはぁーッ!! よっしゃあああッ!! 1位ッスよおおお!!」
「――――!!」
――ジャンプに懸けたスピードとパワーが強化機械装甲を大きく上回っていたのか、着地した時点で一気に強化機械装甲との距離を突き放した。
――5周目もとうとう終盤。後は直線距離にして600mも無いほどだ。
「――よっしゃあ!! いける! いけるわよイロハちゃん!!」
「――頑張って!! イロハッ!!」
――もはやエリー一行も他の観客同様、声を嗄らして応援するのみ。あるいは、言葉も失い、ただただ決着の瞬間を見入る――――
「――熱ッ…………!!」
――だが、比喩でも何でもなく、イロハの愛馬『黒風』は断末魔にも似た悲鳴を上げていた。
高まり過ぎた出力と小回りを幾度も幾度も利かせた無茶な走行、さらにはジャンプ台からの数百kg以上は掛かるかと思われる着地の衝撃。
『黒風』はボディのあちこちから煙と蒸気を噴き、烈火の如き高温状態に陥っていた。いつ大破してもおかしくない――――
一方、強化機械装甲の方はまだ余裕がありそうだ。向こうも真のラストスパートとばかりに出力を上げ、超速で走りなお猛然とイロハに迫る。速い――――
「――や、やべえ…………イロハ!! 無理をすんな!! 死んじまうぞッ!!」
――生命の危機に、ガイも叫ぶ。
だが、イロハは――――
「――――『黒風』!! 最後の勝負に出るっスよ!! ギアを150%まで開放――――あの強化機械装甲のガラクタにひと泡吹かせて勝ってやるっス!!」
――何と、イロハはやめるどころか、さらに限界を超えてエンジンを全開。フルスロットルで走り始めた――――さらに加速度的に『黒風』に負荷がかかる。このままラスト500mも無いとはいえ、走ると――――
「――――現在、『黒風』時速642km……ゴール前に大破する確率、92%――――!!」
――テイテツですらも、この熱狂の渦中にいると動物本能的に緊張が走るのか、声に力が入る。パーセンテージで告げた以上に、イロハは非常に危険な状態だ。
「――くうっ……ふんぬぬぬぬぬ――――!!」
かつてない速度で、殺人的なGがイロハの全身に掛かる。ゴーグルをしていてもハッキリ解るほど目は真っ赤に充血し、全身の筋と骨が悲鳴を上げている――
――その時だった――――
「――あ、あいつ……まだあんな隠し玉を――――!?」
エリーが驚嘆したのは、限界を超えて走るイロハではなく、強化機械装甲の方だった。
2足歩行によるダッシュだけでなく、背面部が可動し、ブースターが火を噴いた――――さらに加速し、一気に距離を詰めて来る――
強化機械装甲は、手の部分も可動させる。前腕部に折り畳んで収納していたと見える、電磁ナイフをバチンッ、と留め、強烈にイロハに斬りかかる――――!!
「――そんな、イロハーーーッッッ!!」
エリーは見ておられず、自分の練気の開放度を上げ、万が一に備えて走り出した――
「――――来ると思ってたっスよ!! ウチがゴールする直前に加速すれば、そうやって接近戦で確実に倒しに来ることを――――!!」
――イロハ自身も練気を高め……腰元に挿していた鍛冶用ハンマーの予備を取り出した。瞬時にハンマーに電気を帯びる――――
「――おりゃああああああーーーッッッ!!」
「――――!!」
――強化機械装甲の電磁ナイフが届くより速く、イロハの電磁ハンマーが強化機械装甲の胴を打った――――打撃そのものの威力は低いが、たちまち相手の全身に電流が激しく流れ、火花が散る。
強化機械装甲は、ゴテゴテの見た目通り全身に機械の鎧で身を包んでいる。つまり、全身に電気系統があり、動いているということ――――
電気系統が一瞬にしていかれた強化機械装甲は、そのまま制御を失い、超速のまま地に転がり落ちた――――
――巻き起こる歓声。そして喝采――――
「――タタラ=イロハ。これを狙っていたのか――」
――遠巻きに見ていたゴッシュが、イロハの勇気と冷静さ、その精神性に1人拍手を贈った――――
「――うおおおおおおっ…………獲ったッス――――!!」
爆走したまま、遂にイロハは1人、ゴールテープを切り、チェッカーフラッグが強烈に翩翻と翻った――――
――だが、こんな猛スピードを出したまま、止まれるわけがない。もはや『黒風』は制御を失っていた――
「――うおおおおッ……エリーさーんッ!! 頼むッスーーーッッッ!!」
――イロハはライダーズハイの高まり過ぎた熱狂をそのままに、僅かばかりに残った知性と理性で、『黒風』から離れて宙に飛び上がり――――エリーの名を叫んだ。
「――イロハちゃん!! ――――よっ、と――――」
――エリーはスタンバイしていて正解だった。空中に飛び出したイロハを、過たずキャッチし、着地した。
「――――そこまで。勝者、タタラ=イロハ――――!!」
ゴッシュが、覇者をアナウンスした――――
「ギアの開放度を90%――――!!」
「――――っ!!」
――イロハはさらに出力を上げて、『黒風』の悲鳴にも似たエンジンの嘶きを上げて超速でジャンプ台を駆ける。強化機械装甲もラストスパートとばかりにスピードを上げていく。ガショッ、ガショッ、ガショッ……と地を蹴る音が殊更大きく響く。
ジャンプしたタイミングは、奇しくも同時であった――――
宙高く飛び上がり、そして着地――――
「――くはぁーッ!! よっしゃあああッ!! 1位ッスよおおお!!」
「――――!!」
――ジャンプに懸けたスピードとパワーが強化機械装甲を大きく上回っていたのか、着地した時点で一気に強化機械装甲との距離を突き放した。
――5周目もとうとう終盤。後は直線距離にして600mも無いほどだ。
「――よっしゃあ!! いける! いけるわよイロハちゃん!!」
「――頑張って!! イロハッ!!」
――もはやエリー一行も他の観客同様、声を嗄らして応援するのみ。あるいは、言葉も失い、ただただ決着の瞬間を見入る――――
「――熱ッ…………!!」
――だが、比喩でも何でもなく、イロハの愛馬『黒風』は断末魔にも似た悲鳴を上げていた。
高まり過ぎた出力と小回りを幾度も幾度も利かせた無茶な走行、さらにはジャンプ台からの数百kg以上は掛かるかと思われる着地の衝撃。
『黒風』はボディのあちこちから煙と蒸気を噴き、烈火の如き高温状態に陥っていた。いつ大破してもおかしくない――――
一方、強化機械装甲の方はまだ余裕がありそうだ。向こうも真のラストスパートとばかりに出力を上げ、超速で走りなお猛然とイロハに迫る。速い――――
「――や、やべえ…………イロハ!! 無理をすんな!! 死んじまうぞッ!!」
――生命の危機に、ガイも叫ぶ。
だが、イロハは――――
「――――『黒風』!! 最後の勝負に出るっスよ!! ギアを150%まで開放――――あの強化機械装甲のガラクタにひと泡吹かせて勝ってやるっス!!」
――何と、イロハはやめるどころか、さらに限界を超えてエンジンを全開。フルスロットルで走り始めた――――さらに加速度的に『黒風』に負荷がかかる。このままラスト500mも無いとはいえ、走ると――――
「――――現在、『黒風』時速642km……ゴール前に大破する確率、92%――――!!」
――テイテツですらも、この熱狂の渦中にいると動物本能的に緊張が走るのか、声に力が入る。パーセンテージで告げた以上に、イロハは非常に危険な状態だ。
「――くうっ……ふんぬぬぬぬぬ――――!!」
かつてない速度で、殺人的なGがイロハの全身に掛かる。ゴーグルをしていてもハッキリ解るほど目は真っ赤に充血し、全身の筋と骨が悲鳴を上げている――
――その時だった――――
「――あ、あいつ……まだあんな隠し玉を――――!?」
エリーが驚嘆したのは、限界を超えて走るイロハではなく、強化機械装甲の方だった。
2足歩行によるダッシュだけでなく、背面部が可動し、ブースターが火を噴いた――――さらに加速し、一気に距離を詰めて来る――
強化機械装甲は、手の部分も可動させる。前腕部に折り畳んで収納していたと見える、電磁ナイフをバチンッ、と留め、強烈にイロハに斬りかかる――――!!
「――そんな、イロハーーーッッッ!!」
エリーは見ておられず、自分の練気の開放度を上げ、万が一に備えて走り出した――
「――――来ると思ってたっスよ!! ウチがゴールする直前に加速すれば、そうやって接近戦で確実に倒しに来ることを――――!!」
――イロハ自身も練気を高め……腰元に挿していた鍛冶用ハンマーの予備を取り出した。瞬時にハンマーに電気を帯びる――――
「――おりゃああああああーーーッッッ!!」
「――――!!」
――強化機械装甲の電磁ナイフが届くより速く、イロハの電磁ハンマーが強化機械装甲の胴を打った――――打撃そのものの威力は低いが、たちまち相手の全身に電流が激しく流れ、火花が散る。
強化機械装甲は、ゴテゴテの見た目通り全身に機械の鎧で身を包んでいる。つまり、全身に電気系統があり、動いているということ――――
電気系統が一瞬にしていかれた強化機械装甲は、そのまま制御を失い、超速のまま地に転がり落ちた――――
――巻き起こる歓声。そして喝采――――
「――タタラ=イロハ。これを狙っていたのか――」
――遠巻きに見ていたゴッシュが、イロハの勇気と冷静さ、その精神性に1人拍手を贈った――――
「――うおおおおおおっ…………獲ったッス――――!!」
爆走したまま、遂にイロハは1人、ゴールテープを切り、チェッカーフラッグが強烈に翩翻と翻った――――
――だが、こんな猛スピードを出したまま、止まれるわけがない。もはや『黒風』は制御を失っていた――
「――うおおおおッ……エリーさーんッ!! 頼むッスーーーッッッ!!」
――イロハはライダーズハイの高まり過ぎた熱狂をそのままに、僅かばかりに残った知性と理性で、『黒風』から離れて宙に飛び上がり――――エリーの名を叫んだ。
「――イロハちゃん!! ――――よっ、と――――」
――エリーはスタンバイしていて正解だった。空中に飛び出したイロハを、過たずキャッチし、着地した。
「――――そこまで。勝者、タタラ=イロハ――――!!」
ゴッシュが、覇者をアナウンスした――――
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