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第169話 自立
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「――――グロウっ……グロウっ……この馬鹿っ! バカバカ…………っ!!」
――エリーは思わぬグロウの……立派に人間として自立し、出会った時とは比べ物にならぬほど成長した顔立ちと心を見て、愛しさと別離の寂しさが湧き上がり……涙を流して何度も胸に抱いて顔を撫で付けた。
――――いつか言っていた通り、グロウはもう単なる庇護される子供から自立し、自分の意志で生きることを決定するに至った。
創世樹のシステムである『養分の男』としての本能がどうかなどはもはや関係ない。
1人の人間として、その生命をどう使い切り、どう生きるか。どう終えるか。その大事なことを遂に自分の意志で決められたのだ。
――――もはや、別れが惜しいからと言って、いつまでも傍にいさせるのはエリー自身のエゴであり、過保護に過ぎない。これからは全て自分で最後まで判断し、決定し、生を全うするのだ。
そう理解せざるを得なかった。
「――エリーお姉ちゃん…………。」
――一頻り頬を撫で付けた後、エリーは自分の涙を拭い、泣き腫らした目で優しくグロウを見つめる。
「――――強く……なったわね。あたしらに『ごめん』、とか言い訳するんじゃあなくて、『ありがとう』なんて言うなんて…………解ったわ。あたしも楽しかった。長いようで短かったけど、グロウを連れて旅が出来て本当に楽しかったわ――――!!」
――――エリーは弱々しく微笑んでいるが、対するグロウは優しく、それでいて強い目をしていた。単なる言葉以上の覚悟と成長、自立心。それらを美しい碧色の瞳が語っていた。
だが、エリーは最低限これくらいは、というつもりで言葉を続ける。
「――いーい? あんたはもう1人の人間。もうあたしがどうこう言って止めるつもりは無いわ。あんたの人生。あんた自身で後悔の無い様に強く生きるのよ。それから――」
「――それから?」
「――もしガラテア軍に捕まって、奴らが間違ったことをするのなら、必ずあたしたちを呼んで。絶対駆けつけて、グロウを助けに来る。あのアルスリアとか言う女……いいや、あんたの花嫁ね……が、好き勝手にこの世界を作り変えようもんなら、絶対に退いちゃ駄目。絶対に抵抗するのよ。あいつらの勝手で、世界中の人々の生命が弄ばれるようなことになっちゃ、一番駄目だからね?」
――――エリーは、その言葉以上に……エリーはエリーで強い意志を込めた眼差しで、グロウに言い聞かせた。
グロウが『養分の男』として生を全うするのは認める。それが本人の決めたことならば。
ただし、自分の意志で決めたのならば、決してガラテア軍をはじめとした他者の意志に翻弄されるな。その意志で生を最後まで貫け。
――そう言葉を続けようとしたエリーだったが、グロウはすぐに応えた。
「――もちろん、解ってるよ。僕の生きる道は僕が決める。そういう使命だからじゃあない。誰かに言われたからでもない――――誰かの好き勝手にはさせないよ。」
――毅然と応えるグロウに、エリーは初めて心から満足して、グロウの心根を尊重出来た。
ニカッ、と明るく笑い、グロウの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「――へへっ。ありがと、グロウ。強くなってくれて。強くなんなきゃならないのはあたしの方だったわ。幻霧大陸での冒険がどれだけのものになるかわかんないけど……最後まで、よろしくね、グロウ。」
「――――うん!!」
――エリーの方も覚悟は決まった。弟分の自ら選んだ人生を肯定し切ることが出来た。成長出来たのはグロウだけでなく、エリーの方も同様だったのかもしれない。
「………………。」
――心配になって密かに後をつけて来たガイだったが、遠巻きながら2人の納得してホッとした様子の顔立ちを見て、彼自身も安心した。何も言わずに、甲板から艦内に戻っていった――
<<
――それからエリーは、少し手持ち無沙汰になってフォルテの艦内を見て廻ることにした。
皆、思い思いの時を過ごしている。これから幻霧大陸へ向けての長い航海の旅。それぞれ艦内で過ごすうちに思うことも沢山あるだろう。
「……みんな、どうしてるかな~……」
エリーは他の仲間の様子も気になって歩き出す。
――甲板から内部に降りてまず目に留まったのは炊き出しをしているホールだったが――――
「――――あれ? あんたって、もしかして――――」
「――――ぎくっ!!」
――ぼろを纏っているが、見覚えのある姿、そしてオーラのようなものを感じる者たちが大勢紛れ込んでいた。
「――あんたら、アストラガーロから逃げてったんじゃあなかったの~? ホント、往生際が悪いわねえ……」
「――な、な、なななんのことだい……っ!? アタシらは、ただ要塞都市・アストラガーロに通りがかってガラテア軍の糞野郎共の戦争に巻き込まれた、な、難民だよ……!」
――隠しきれないキャラクター。本来なら牢獄に繋いでおく者たちかもしれないが、ここは空を駆ける戦艦の中。わざわざ罰しておく余裕もなさそうだ。
「……まあいっか。この戦艦は幻霧大陸へ行くけど、他の難民や冒険者たちとちゃんと協力すんのよー? また悪さしたら、今度こそ承知しないかんねー。」
――エリーは敢えて軽く受け流し、彼女たちを不問とした。
「――た、助かった…………。」
――ぼろを着た幼女と『かわいい息子たち』は異口同音に溜め息を吐いた――――
――エリーは思わぬグロウの……立派に人間として自立し、出会った時とは比べ物にならぬほど成長した顔立ちと心を見て、愛しさと別離の寂しさが湧き上がり……涙を流して何度も胸に抱いて顔を撫で付けた。
――――いつか言っていた通り、グロウはもう単なる庇護される子供から自立し、自分の意志で生きることを決定するに至った。
創世樹のシステムである『養分の男』としての本能がどうかなどはもはや関係ない。
1人の人間として、その生命をどう使い切り、どう生きるか。どう終えるか。その大事なことを遂に自分の意志で決められたのだ。
――――もはや、別れが惜しいからと言って、いつまでも傍にいさせるのはエリー自身のエゴであり、過保護に過ぎない。これからは全て自分で最後まで判断し、決定し、生を全うするのだ。
そう理解せざるを得なかった。
「――エリーお姉ちゃん…………。」
――一頻り頬を撫で付けた後、エリーは自分の涙を拭い、泣き腫らした目で優しくグロウを見つめる。
「――――強く……なったわね。あたしらに『ごめん』、とか言い訳するんじゃあなくて、『ありがとう』なんて言うなんて…………解ったわ。あたしも楽しかった。長いようで短かったけど、グロウを連れて旅が出来て本当に楽しかったわ――――!!」
――――エリーは弱々しく微笑んでいるが、対するグロウは優しく、それでいて強い目をしていた。単なる言葉以上の覚悟と成長、自立心。それらを美しい碧色の瞳が語っていた。
だが、エリーは最低限これくらいは、というつもりで言葉を続ける。
「――いーい? あんたはもう1人の人間。もうあたしがどうこう言って止めるつもりは無いわ。あんたの人生。あんた自身で後悔の無い様に強く生きるのよ。それから――」
「――それから?」
「――もしガラテア軍に捕まって、奴らが間違ったことをするのなら、必ずあたしたちを呼んで。絶対駆けつけて、グロウを助けに来る。あのアルスリアとか言う女……いいや、あんたの花嫁ね……が、好き勝手にこの世界を作り変えようもんなら、絶対に退いちゃ駄目。絶対に抵抗するのよ。あいつらの勝手で、世界中の人々の生命が弄ばれるようなことになっちゃ、一番駄目だからね?」
――――エリーは、その言葉以上に……エリーはエリーで強い意志を込めた眼差しで、グロウに言い聞かせた。
グロウが『養分の男』として生を全うするのは認める。それが本人の決めたことならば。
ただし、自分の意志で決めたのならば、決してガラテア軍をはじめとした他者の意志に翻弄されるな。その意志で生を最後まで貫け。
――そう言葉を続けようとしたエリーだったが、グロウはすぐに応えた。
「――もちろん、解ってるよ。僕の生きる道は僕が決める。そういう使命だからじゃあない。誰かに言われたからでもない――――誰かの好き勝手にはさせないよ。」
――毅然と応えるグロウに、エリーは初めて心から満足して、グロウの心根を尊重出来た。
ニカッ、と明るく笑い、グロウの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「――へへっ。ありがと、グロウ。強くなってくれて。強くなんなきゃならないのはあたしの方だったわ。幻霧大陸での冒険がどれだけのものになるかわかんないけど……最後まで、よろしくね、グロウ。」
「――――うん!!」
――エリーの方も覚悟は決まった。弟分の自ら選んだ人生を肯定し切ることが出来た。成長出来たのはグロウだけでなく、エリーの方も同様だったのかもしれない。
「………………。」
――心配になって密かに後をつけて来たガイだったが、遠巻きながら2人の納得してホッとした様子の顔立ちを見て、彼自身も安心した。何も言わずに、甲板から艦内に戻っていった――
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――それからエリーは、少し手持ち無沙汰になってフォルテの艦内を見て廻ることにした。
皆、思い思いの時を過ごしている。これから幻霧大陸へ向けての長い航海の旅。それぞれ艦内で過ごすうちに思うことも沢山あるだろう。
「……みんな、どうしてるかな~……」
エリーは他の仲間の様子も気になって歩き出す。
――甲板から内部に降りてまず目に留まったのは炊き出しをしているホールだったが――――
「――――あれ? あんたって、もしかして――――」
「――――ぎくっ!!」
――ぼろを纏っているが、見覚えのある姿、そしてオーラのようなものを感じる者たちが大勢紛れ込んでいた。
「――あんたら、アストラガーロから逃げてったんじゃあなかったの~? ホント、往生際が悪いわねえ……」
「――な、な、なななんのことだい……っ!? アタシらは、ただ要塞都市・アストラガーロに通りがかってガラテア軍の糞野郎共の戦争に巻き込まれた、な、難民だよ……!」
――隠しきれないキャラクター。本来なら牢獄に繋いでおく者たちかもしれないが、ここは空を駆ける戦艦の中。わざわざ罰しておく余裕もなさそうだ。
「……まあいっか。この戦艦は幻霧大陸へ行くけど、他の難民や冒険者たちとちゃんと協力すんのよー? また悪さしたら、今度こそ承知しないかんねー。」
――エリーは敢えて軽く受け流し、彼女たちを不問とした。
「――た、助かった…………。」
――ぼろを着た幼女と『かわいい息子たち』は異口同音に溜め息を吐いた――――
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