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第174話 地図上の空白地帯
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――――ブリッジまで戻ってくると、ゴッシュが机の上に地図を広げて幻霧大陸への道を確認していた。ガイとグロウも共にいた。地図を覗き込み、何やら話し合っている。
「――ガイ。グロウも……もう真夜中だよ? 寝なくて大丈夫?」
「――おお。エリー。もういいのか…………?」
ガイが心配そうにエリーの顔を見遣る。
「――大丈夫だよ。さっきちゃんとお姉ちゃんと話し合ったから。」
――グロウが温かな笑みを浮かべ、ガイとエリー顔を見遣る。ガイもまたエリーとグロウの顔を交互に見て、少し安心したように息を吐いた。
「……みてえだな。その顔見て少しは気も落ち着いたぜ。」
「――へへっ……ごめんね~。投げやりなこと言っちゃって…………ちゃんと納得したから。」
――エリーも場の空気を悪くしてしまったことからばつの悪い顔を浮かべつつ苦笑いだ。
「――グロウが幻霧大陸のどっかにある創世樹の中で、あのアルスリア相手に何とか説得して、生命の刷新進化《アップデート》で消えねえように踏ん張る。ただし、ガラテア軍の糞ったれが狼藉を働くようなら……すぐにグロウのSOSに応えて助けに行く。グロウから聞いたぜ。そういうことでいいんだな?」
「うん。」
「もちろんよ。」
――仲間同士での蟠りは一先ず超えた。エリーたちもどこか精神的に一歩成長出来たようだ。
「……で? みんな、そろそろ休んだら?」
エリーが改めて休息を促す声を掛ける。
「――一応、ゴッシュのおっさん……キャプテンに、どうやって幻霧大陸に行くのか、進路を聞いておこうと思ってな。グロウも気になったから一緒に話してたんだよ。」
「――――エリー。君も見ておいてくれ。」
――ゴッシュはペンとコンパスを手に、地図上で説明をする。エリーも机に近付き地図を見遣った。
「――――まず、これだけ大きな戦艦だ。全乗組員を他国へ降ろせないと決めた以上、人里に近付いて人目に触れるわけにはいかん。現在地がここ。要塞都市・アストラガーロを海へと抜けて大洋へと差し掛かっている。このまま極力陸地を避け、大洋を高高度で飛び続けて……幻霧大陸がある地へと只管に向かう。そこまではよい。だが…………」
――そこまで言って、ゴッシュはひと息唸った。
「――――問題はどうやって上陸するか、だ。『幻霧大陸』。その名前の通り、この地は深い霧が常に立ち込めている。戦艦で空から上陸を試みた人類は未だいないが、これまで海からの上陸を試みた者たちは、真っ直ぐ霧に突入したつもりが…………いつの間にか元の航路に逆行してしまってきたという。果たして空から上陸するとして、霧に惑わされずに上陸出来るのか――――」
――机に広げた地図の、幻霧大陸周辺をペンでなぞりながらゴッシュは苦々しく語る。地図上の表現でも、さすがに人類未踏の地だけあってそのエリアは全くの空白で消失しているように表記されている。
「――そこで、だ。グロウなら何か突入できる鍵があるかもしれねえ。そう話してたとこなんだ。俺たちが今乗っているこの戦艦も、幻霧大陸から来たもんでグロウが起動キーになってた。これから先の幻霧大陸での道を開くのも…………もしかしたらグロウかもしれねえ。」
――これまでこういう情況になるとグロウは自らの出自の不明さから不安に陥ることが多かったが――――今は覚悟を決めた。自分が道を開く、と決意が表れた顔をして、答える。
「――――うん。その可能性が一番ある、と僕も思うんだ。自分の中から、そんな予感みたいなものも感じる――――ただ、僕が道を開けるんだとしたら、多分開けられるのは僕だけじゃあない――――」
「――そう。それがアルスリア=ヴァン=ゴエティアだ。奴も『種子の女』として幻霧大陸由来で生まれた存在ならば、奴にも幻霧大陸の霧を晴らす力があるかもしれん。それを許すことは即ち、ガラテア軍に先を越されることを意味する。」
――皆の脳裏に、単独でも圧倒的な力を持つ妖女・アルスリアの美しくも恐ろしい笑みが浮かんでくる。
「――あいつか~……確かに、先越されたら色々マズいかもしれないわね。少しでも幻霧大陸のこと、あたしたちが先に知って有利にことを進めたいし。」
「――その通りだ。だが、それは向こうも見越しているだろう。奴らが総力を挙げれば、我々はあっけなく後手に回る。時は一刻を争うのだと思う。」
「――連中に好き勝手させねえ為にも、俺たちが何としても幻霧大陸に上陸するしかねえな。とは言っても具体的にグロウが何をすれば霧が晴れるのか解らねえ。出来ることは、可能な限り速く到着することぐれえか…………。」
――全員が首肯した。
「――この戦艦でかなりの速度で飛んでも、幻霧大陸近海には3日以上はかかる。高高度の雲の上に身を隠しながら向かうことに決まりだな――――よし。解散。全員、コントロールを自動操縦に切り換え、休息を取るのだ。」
――『キャプテン』ゴッシュはさすがに夜も遅くなり、全員に休息を命じた――――
「――ガイ。グロウも……もう真夜中だよ? 寝なくて大丈夫?」
「――おお。エリー。もういいのか…………?」
ガイが心配そうにエリーの顔を見遣る。
「――大丈夫だよ。さっきちゃんとお姉ちゃんと話し合ったから。」
――グロウが温かな笑みを浮かべ、ガイとエリー顔を見遣る。ガイもまたエリーとグロウの顔を交互に見て、少し安心したように息を吐いた。
「……みてえだな。その顔見て少しは気も落ち着いたぜ。」
「――へへっ……ごめんね~。投げやりなこと言っちゃって…………ちゃんと納得したから。」
――エリーも場の空気を悪くしてしまったことからばつの悪い顔を浮かべつつ苦笑いだ。
「――グロウが幻霧大陸のどっかにある創世樹の中で、あのアルスリア相手に何とか説得して、生命の刷新進化《アップデート》で消えねえように踏ん張る。ただし、ガラテア軍の糞ったれが狼藉を働くようなら……すぐにグロウのSOSに応えて助けに行く。グロウから聞いたぜ。そういうことでいいんだな?」
「うん。」
「もちろんよ。」
――仲間同士での蟠りは一先ず超えた。エリーたちもどこか精神的に一歩成長出来たようだ。
「……で? みんな、そろそろ休んだら?」
エリーが改めて休息を促す声を掛ける。
「――一応、ゴッシュのおっさん……キャプテンに、どうやって幻霧大陸に行くのか、進路を聞いておこうと思ってな。グロウも気になったから一緒に話してたんだよ。」
「――――エリー。君も見ておいてくれ。」
――ゴッシュはペンとコンパスを手に、地図上で説明をする。エリーも机に近付き地図を見遣った。
「――――まず、これだけ大きな戦艦だ。全乗組員を他国へ降ろせないと決めた以上、人里に近付いて人目に触れるわけにはいかん。現在地がここ。要塞都市・アストラガーロを海へと抜けて大洋へと差し掛かっている。このまま極力陸地を避け、大洋を高高度で飛び続けて……幻霧大陸がある地へと只管に向かう。そこまではよい。だが…………」
――そこまで言って、ゴッシュはひと息唸った。
「――――問題はどうやって上陸するか、だ。『幻霧大陸』。その名前の通り、この地は深い霧が常に立ち込めている。戦艦で空から上陸を試みた人類は未だいないが、これまで海からの上陸を試みた者たちは、真っ直ぐ霧に突入したつもりが…………いつの間にか元の航路に逆行してしまってきたという。果たして空から上陸するとして、霧に惑わされずに上陸出来るのか――――」
――机に広げた地図の、幻霧大陸周辺をペンでなぞりながらゴッシュは苦々しく語る。地図上の表現でも、さすがに人類未踏の地だけあってそのエリアは全くの空白で消失しているように表記されている。
「――そこで、だ。グロウなら何か突入できる鍵があるかもしれねえ。そう話してたとこなんだ。俺たちが今乗っているこの戦艦も、幻霧大陸から来たもんでグロウが起動キーになってた。これから先の幻霧大陸での道を開くのも…………もしかしたらグロウかもしれねえ。」
――これまでこういう情況になるとグロウは自らの出自の不明さから不安に陥ることが多かったが――――今は覚悟を決めた。自分が道を開く、と決意が表れた顔をして、答える。
「――――うん。その可能性が一番ある、と僕も思うんだ。自分の中から、そんな予感みたいなものも感じる――――ただ、僕が道を開けるんだとしたら、多分開けられるのは僕だけじゃあない――――」
「――そう。それがアルスリア=ヴァン=ゴエティアだ。奴も『種子の女』として幻霧大陸由来で生まれた存在ならば、奴にも幻霧大陸の霧を晴らす力があるかもしれん。それを許すことは即ち、ガラテア軍に先を越されることを意味する。」
――皆の脳裏に、単独でも圧倒的な力を持つ妖女・アルスリアの美しくも恐ろしい笑みが浮かんでくる。
「――あいつか~……確かに、先越されたら色々マズいかもしれないわね。少しでも幻霧大陸のこと、あたしたちが先に知って有利にことを進めたいし。」
「――その通りだ。だが、それは向こうも見越しているだろう。奴らが総力を挙げれば、我々はあっけなく後手に回る。時は一刻を争うのだと思う。」
「――連中に好き勝手させねえ為にも、俺たちが何としても幻霧大陸に上陸するしかねえな。とは言っても具体的にグロウが何をすれば霧が晴れるのか解らねえ。出来ることは、可能な限り速く到着することぐれえか…………。」
――全員が首肯した。
「――この戦艦でかなりの速度で飛んでも、幻霧大陸近海には3日以上はかかる。高高度の雲の上に身を隠しながら向かうことに決まりだな――――よし。解散。全員、コントロールを自動操縦に切り換え、休息を取るのだ。」
――『キャプテン』ゴッシュはさすがに夜も遅くなり、全員に休息を命じた――――
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