創世樹

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第201話 盗賊皇女殿下の横槍

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 ――――リオンハルトが遂に反旗を翻した。




 しかし、それを然程重く受け止める様子もなく、ヴォルフガングは指揮を部下に譲り、単騎で戦場を駆けて行った。




「――創世樹……及びアルスリアの位置は……あそこか。急がねば。目標捕捉。直ちに急行する――」





 ――ヴォルフガング自身も、ルハイグほどではないが息子のリオンハルト同様身体をサイボーグ化させているワンマンアーミーである。背部に仕込んだブースターを起動し、義体の脚をフル稼働させ……猛スピードでアルスリアのもとへと走っていった――――




 ――だがその直後。防御態勢を取るはずのガラテア戦艦のうち一隻が、不審な動きをしていた。





 別の戦艦の一隻の艦長が、怪しい動きをするふねに通信する。





「……? 戦艦13号! 応答せよ! ヴォルフガング中将より防御態勢を取れとの命令だ。すぐに反乱軍の方へ――――?」





 ――突然、艦長は最後の方の声を上ずらせてしまった。




 何故ならば――――その怪しい動きをしている戦艦が、何も言わずに突然砲撃して来たからだ――――友軍誤射フレンドリーファイアではない。奇襲とも言える砲撃をまともに喰らい、その艦は激しく揺れる。




「――うおおおおっ、くっ……何だ戦艦13号突然!! 砲撃系統の故障か!? 応答せよ!! まさか――――そちらもリオンハルトの『震える星』か!?」





 少し間があってから、戦艦13号から先ほどのリオンハルト同様、全回線に通信が走った。




「――――『震える星』だったら厄介だったねエ。安心しな。こっちゃただの賊風情だよ――――もっとも、ガラテア軍さえ一目置いた賊だがねエ!!」





 ――通信から聴こえる声は、意外に高く細い感じの幼女の声だった。映像も鮮明になる。映像に映る毒気のあるアイドル衣装に身を包む幼女の姿は、もはや紛れもなく御存知の――――





「――き、貴様は…………まさか、本当にただの賊なのか!? この戦場に介入して、何をするつもりだ!?」





「――――そのとおおおおおりッ!! アタシはただの盗賊風情さね!! クリムゾンローズ盗賊団の首魁……ローズ=エヴェル様とはアタシのことだアアアーーーッ!!」




 ――モニターに映るローズ。何故か艦長の座る座席の前にお立ち台のようなものを置き、どこからともなくネオンライトが目まぐるしく明滅し、ファンファーレが甲高く鳴り響く。ローズはそのお立ち台の上で踊り狂い、『かわいい息子たち』はなお一層熱狂し、雄叫びを上げている。





「――この場で戦う連中よ、よくお聴き! アタシらクリムゾンローズ盗賊団は『戦術的撤退』により一度は要塞都市・アストラガーロから脱出した……だが、運悪――――いやいや。『僥倖なことに』ガラテア軍とアストラガーロとの戦闘に割って入る形になったァァァ……密かにあの古代戦艦に忍び込み――――ガラテア軍への積年の恨みを晴らす機会を淡々と窺ってたのさああああああッ!!」




 ――所々歯切れが悪く、明らかに強がっているが、要するにアストラガーロが侵略された時に密かに古代戦艦フォルテに乗り込み難を逃れていた。そしてこの戦場のどさくさに紛れてガラテア軍の戦艦を一隻乗っ取ってしまったようだ――――




「――戦艦一隻ブン盗れたのはまさしくラッキーだったねエ~。本当はチビるほど恐かっ……ゲッホゲホ――――ううーん!! ――お陰でいつかはやりたいと思っていた目的が果たせそうさね!!」




「――お頭ァ!! と、言いますとォ!?」





 ――子分の1人がかぶりを振る。





 ローズは伏し目がちに少し声のトーンを落として語る。




「――――アタシとて……ただただ生まれながらに賊だったわけじゃあないさね…………ガラテア軍に侵攻され…………今は無き故郷……ミストラル国の皇女だったアタシは、国を守る為に人質としてこの身を差し出した――――だが。ガラテアの糞共は国を攻め滅ぼし、アタシを人体実験でぐっちゃぐちゃにしやがったのさ!! もう何十年も前のことだが――――ガラテアに報いる理由なら、アタシらにもあらァな!!」





 低いトーンからどんどんとぶち上がるローズの声に、子分たちはなおも熱狂し、コールアンドレスポンス。




「――皇女!! 盗賊皇女殿下!! 盗賊皇女殿下ローズ=エヴェル!! 俺らのお頭!! 皇女!! 盗賊皇女殿下!! 盗賊皇女殿下ローズ=エヴェル!! 俺らのお頭!!」





 ――ローズが、指をパチン、と鳴らし、一旦場を治める。




「――アタシぁね。何もリオンハルトだかみたいに大義を以て復讐する気なんか無いのさ。アタシは復讐鬼なんて柄じゃあない。アタシらは、別にガラテアを討伐するレジスタンス気取りじゃあないのさ――――」




 ――ローズが目を見開く。いつも以上に侠気に満ちた、活気漲る目。




「――アタシらはただただ! ガラテア軍に横槍入れてめっちゃくっちゃに邪魔してやりたいだけさね!! 生命の刷新進化《アップデート》!? 亡国の皇女としての恨み!? 今はどうでもいいね、んなこたァ!! アタシらも退くに退けなくなっちまった。創世樹とやらのわけわかんねエ力でみんな死ぬかもしれない。だったらァ!! 最後まで暴れまくってやるだけさ、ガラテア軍相手にねエ!! アタシらもこんな喧嘩吹っ掛けるなんざ大したもんだよ!! あーっはっはっはっはアーーーーッッッ!!」






 ――ローズはこう言っているが、たまたまゴッシュの率いるフォルテに乗り、ガラテア軍との最終闘争に巻き込まれ、退くに退けなくなっただけなのだが…………少なくともガラテアに一矢報いるつもりのようだ。






 ガラテア全軍対、エリー一行、ゴッシュ率いる冒険者たち、リオンハルト率いる『震える星』、そして突如横槍を入れて来たクリムゾンローズ盗賊団。





 幻霧大陸はもはや混迷を深めるなどという次元ではなく、混沌カオスそのものと化していた――――
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