18 / 55
第18話 調査開始
しおりを挟む
――――マユに促され、スーパーコンピューターの後ろ側に立つと、何やら下の階へくだるリフトのようなものが見えた。
「――――このリフトを下りた先に、『悪』が巣食う根城への大型の転送装置がありんす。戦うのにお金が必要と解った以上、出し惜しみはしんせん。」
そう告げると、マユは懐から札束を取り出した。ヨウヘイに手渡す。
「――うお……すっげ! 何万円あるんだ、これ!?」
「何を今更驚いてんでありんすか。こなたのお金は飽くまで敵地での充分な変身用、そいで不測の事態に備えて変身時間の延長やパワーアップの為の道具に過ぎんせん。当然、余ることがあったら返してもらいんすよ。」
――銀行から引き出してきたばかりのような、手が切れそうなほどに新品で硬い札束。ヨウヘイが実際にこれまでの人生で目にしたことなど、TV番組や映画ぐらいでしかない金額だ。
「――りょ、了解だぜ。今から行ってやらあ!!」
大金を手渡されたことで一瞬狼狽えたが、すぐに、これは闘う為の道具に過ぎぬ、と思い直して、リフトに乗った。
「――転送装置を通って敵地へ行った者とは、常に連絡が取れるようにしていんす。こちらでもモニターしんすが、何かあったらすぐに報告して欲しいでありんすぇ。ヤバくなりんしたらすぐにこちから戻ってくるよう転送し直すか、『リターン』とここへ戻ってくることを念じて叫べば戻れんす。ではご武運を。」
――民間企業の研究所とは思えないほどに、現代離れしたテクノロジーを使役している。このオペレーションルームの風景同様、さながらSF映画のようだ。マユをはじめ、『悪』に多くを奪われた被害者たる対悪性怪物殲滅班たちの執念の為せる業か。
ヨウヘイが乗っているリフトが下に下りた。10mほどくだったあたりで、リフトは止まった。
目の前には、なるほど物質の転送装置のイメージ通り、中央が窪んだステージのようなものがあり、四方は転移する為の力場を発生させる為の物々しい装置が幾つも並んでいる。
既に非日常の世界へ没入しつつあるヨウヘイ。変身用の札束を握りしめ、転送装置の中央に立つ――――
オペレーターたちの声がスピーカーから聴こえてくる。
「――転送装置、オールグリーン。異常なし。」
「――転送先座標確認。誤差修正…………問題なし。」
「――出力系統、稼働準備よし。」
「――よし。では行ってもらいんす。覚悟はいいわぇ? まあ……最初の潜入だし、あまり深追いはしんせん。まずはぬしと敵地、双方のお手並み拝見。」
「――覚悟は決まったぜ。いつでも飛ばしてくれ!!」
――マユは、その場にいるオペレーターたちと、班長のサクライの目を交互に見て、お互いに頷く。そしてこの様子も……先ほどの班員たちの部屋のモニター画面にも中継されていた。皆、食い入るように見る――
「――では行きんす。リッチマン、出撃!!」
――マユが、敵地へ転送する最終スイッチを押した――――
たちまち、転送装置が稼働し、大きなエンジン音のようなものが地下にこだまし……力場が発生して、やがてヨウヘイの姿は消えた――――
>>
>>
>>
「――――っと……ここが…………『悪』の根城――――?」
気が付くと、ヨウヘイは何やら活火山の深部を思わせるような洞窟のような空間の中にいた。次元を隔てた地下深く、遠くの方はモニターにノイズが走るように判然としない。
「――うっ…………なんか、ここ…………凄く、身体が重てえ……呼吸も浅くなってきた。」
すぐにヨウヘイの頭の傍あたりから、マユの声が聴こえる。
「――そこは云わば異次元空間。空気や重力も地上とは違いんす。早く変身して!! 極寒の中裸でいるようなもんでありんす!」
「――りょ、了解――――頼むぜ、ジャスティス・ストレージ!!」
――動けなくなるほど気分が悪くなる前に、ヨウヘイはいつもの通りジャスティス・ストレージを掲げ、中に、取り敢えず10000円札10枚、10万円を課金した――――
「――ビビビビ…………敵対勢力反応多数。生きるのに過酷な超常異次元空間を確認。正義奮起率45%。速やかに変身します――――」
街中で怪人たち相手にやったように、たちまち光の鎖に包まれたまま強烈に発光し…………希望通りヨウヘイはリッチマンへと変身した。
この異次元空間は、なかなかに深そうだ。潜れば潜るほど『何か』が出て来そうな深淵である。
そして、早速目の前に侵入者を感知したのか、豚顔面のような怪人たちが襲い来る――――
「――――さあーて!! 敵の根城を叩く為……いっちょやるか!!」
リッチマンは構え、臨戦態勢に入った。いよいよ調査開始だ――――
「――――このリフトを下りた先に、『悪』が巣食う根城への大型の転送装置がありんす。戦うのにお金が必要と解った以上、出し惜しみはしんせん。」
そう告げると、マユは懐から札束を取り出した。ヨウヘイに手渡す。
「――うお……すっげ! 何万円あるんだ、これ!?」
「何を今更驚いてんでありんすか。こなたのお金は飽くまで敵地での充分な変身用、そいで不測の事態に備えて変身時間の延長やパワーアップの為の道具に過ぎんせん。当然、余ることがあったら返してもらいんすよ。」
――銀行から引き出してきたばかりのような、手が切れそうなほどに新品で硬い札束。ヨウヘイが実際にこれまでの人生で目にしたことなど、TV番組や映画ぐらいでしかない金額だ。
「――りょ、了解だぜ。今から行ってやらあ!!」
大金を手渡されたことで一瞬狼狽えたが、すぐに、これは闘う為の道具に過ぎぬ、と思い直して、リフトに乗った。
「――転送装置を通って敵地へ行った者とは、常に連絡が取れるようにしていんす。こちらでもモニターしんすが、何かあったらすぐに報告して欲しいでありんすぇ。ヤバくなりんしたらすぐにこちから戻ってくるよう転送し直すか、『リターン』とここへ戻ってくることを念じて叫べば戻れんす。ではご武運を。」
――民間企業の研究所とは思えないほどに、現代離れしたテクノロジーを使役している。このオペレーションルームの風景同様、さながらSF映画のようだ。マユをはじめ、『悪』に多くを奪われた被害者たる対悪性怪物殲滅班たちの執念の為せる業か。
ヨウヘイが乗っているリフトが下に下りた。10mほどくだったあたりで、リフトは止まった。
目の前には、なるほど物質の転送装置のイメージ通り、中央が窪んだステージのようなものがあり、四方は転移する為の力場を発生させる為の物々しい装置が幾つも並んでいる。
既に非日常の世界へ没入しつつあるヨウヘイ。変身用の札束を握りしめ、転送装置の中央に立つ――――
オペレーターたちの声がスピーカーから聴こえてくる。
「――転送装置、オールグリーン。異常なし。」
「――転送先座標確認。誤差修正…………問題なし。」
「――出力系統、稼働準備よし。」
「――よし。では行ってもらいんす。覚悟はいいわぇ? まあ……最初の潜入だし、あまり深追いはしんせん。まずはぬしと敵地、双方のお手並み拝見。」
「――覚悟は決まったぜ。いつでも飛ばしてくれ!!」
――マユは、その場にいるオペレーターたちと、班長のサクライの目を交互に見て、お互いに頷く。そしてこの様子も……先ほどの班員たちの部屋のモニター画面にも中継されていた。皆、食い入るように見る――
「――では行きんす。リッチマン、出撃!!」
――マユが、敵地へ転送する最終スイッチを押した――――
たちまち、転送装置が稼働し、大きなエンジン音のようなものが地下にこだまし……力場が発生して、やがてヨウヘイの姿は消えた――――
>>
>>
>>
「――――っと……ここが…………『悪』の根城――――?」
気が付くと、ヨウヘイは何やら活火山の深部を思わせるような洞窟のような空間の中にいた。次元を隔てた地下深く、遠くの方はモニターにノイズが走るように判然としない。
「――うっ…………なんか、ここ…………凄く、身体が重てえ……呼吸も浅くなってきた。」
すぐにヨウヘイの頭の傍あたりから、マユの声が聴こえる。
「――そこは云わば異次元空間。空気や重力も地上とは違いんす。早く変身して!! 極寒の中裸でいるようなもんでありんす!」
「――りょ、了解――――頼むぜ、ジャスティス・ストレージ!!」
――動けなくなるほど気分が悪くなる前に、ヨウヘイはいつもの通りジャスティス・ストレージを掲げ、中に、取り敢えず10000円札10枚、10万円を課金した――――
「――ビビビビ…………敵対勢力反応多数。生きるのに過酷な超常異次元空間を確認。正義奮起率45%。速やかに変身します――――」
街中で怪人たち相手にやったように、たちまち光の鎖に包まれたまま強烈に発光し…………希望通りヨウヘイはリッチマンへと変身した。
この異次元空間は、なかなかに深そうだ。潜れば潜るほど『何か』が出て来そうな深淵である。
そして、早速目の前に侵入者を感知したのか、豚顔面のような怪人たちが襲い来る――――
「――――さあーて!! 敵の根城を叩く為……いっちょやるか!!」
リッチマンは構え、臨戦態勢に入った。いよいよ調査開始だ――――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる