40 / 55
第40話 冷厳なるヒーロー
しおりを挟む
――――マユは転送装置の前で、懐から脇差を取り出した。以前、最初にカジタの店に来た時も持っていた、謎めいた短刀だ。
「――――まさか、これが単なる武器ではなく……ヒーローへと変身する為の道具でありんした、なんて、気付くのに手間がかかりんした。早速、役に立ってもらいんすよ。」
マユは脇差の刀身を少しだけ鞘から抜き、刃に映り込んでいる自分の顔を見るようにして、念じた――――
「――――わっちの願いに応えて、『雪水嵐《ユキミズアラシ》』――――」
――瞬間、マユは全身から青白い光を放ち、一瞬にしてヒーローに変身した。
スピーカー越しに対悪性怪物殲滅班《スレイヤーズギルド》の面々の驚く声が鳴り響く。
サクライが問いかける。
「――所長……!! その姿は……本当にヒーローの力を得たのですね。事前に言ってくれればもう少し準備は――――。」
「――今は一刻を争うでありんす。力が湧いて来る…………それも、リッチマンとネイキッドフレイムを助けるのに相応しい力が――――早く、2人のもとへ転送して。」
そこで少し躊躇ってしまうサクライ。
「――これまでのリッチマンとネイキッドフレイムを見れば、ヒーロー化に何らかの代償を払っているはず。所長。本当によろしいのですか…………?」
「――くどい。さっさと転送して。なに、代償と言ってもリッチマンとネイキッドフレイムよりよっぽど軽いものでありんす。時間がない。早く。」
「…………了解。転送装置起動!! 座標は現在モニターしているリッチマンとネイキッドフレイムの前へ!!」
――サクライは不安を抱えながらも、オペレーターたちに指令を下し、マユをすぐさま2人のもとへ転送した――――
>>
「――く、くそっ…………!! このままじゃあ、やべえ…………ッ!!」
「――やむ負えんな……ここは退くか。」
――リッチマンとネイキッドフレイムは目の前の三ツ首の魔犬を前に、消耗戦を強いられ、傷を癒す薬剤戦術ももう後が無いところまで来ていた。
「――悔しいが、しゃあねえ!! リター――」
――撤退を判断し、『リターン』を念じかけるリッチマンだったが――――
「――少し待ってください。今、助けのヒーローがそこへ行きます!!」
――突然、通信系を介して聴こえる、サクライの声。
「――あんた、サクライさん!? マユは――――まさか。」
――そう言いかけた瞬間――――突如場に突風が巻き起こった。
その突風は強い冷気を帯びており、活火山の深部を思わせるエリア一帯を一瞬にして温度を下げ、凍てつかせた。
三ツ首の魔犬も警戒し、一旦飛び跳ねて距離を取った。
――長い金髪をたなびかせて雪風の中から現れたのは――――
「――おめえ……マユ!! マユじゃあねえかっ!!」
――脇差を構え、突如現れたマユは、全身に青い全身タイツのような装いで、髪は一部、簪《かんざし》で留まっている。そして氷雪のような冷たく鋭い目で魔犬を睨み付ける。
まるで日ノ本古来のくノ一を思わせるような、ボディラインも露わになったセクシーな出で立ちだが、今は当然そんなことを気にしている余裕はない。
「――2人とも、これを――――」
――マユが何やら念じると、リッチマンとネイキッドフレイムの身体に冷気の層を纏わされた。この灼熱煉獄の熱さを微塵も感じない。冷気のコートだ。
「――2人とも、深手を負ってよく我慢したでありんす――――潤しの水よ!!」
再びマユが念じると、今度は清らかな光を伴った水が発生し、全身に傷を負ったリッチマンとネイキッドフレイムの身体が癒えていく。
……どうやら、突如ヒーローとして加勢に来たマユは、冷気と水、そしてそれから成る回復を操る能力を持っているようだ。
――ならば、炎を繰り出してくる敵には特効の能力と言えよう――
「――――どうやら、この敵にはうってつけの能力でありんすね。わっちのこの力は――――2人とも行きんすよ。氷水のヒーロー・アクアセイバー…………参る。」
――マユが加わり、ヒーローは3人となった――――
「――――まさか、これが単なる武器ではなく……ヒーローへと変身する為の道具でありんした、なんて、気付くのに手間がかかりんした。早速、役に立ってもらいんすよ。」
マユは脇差の刀身を少しだけ鞘から抜き、刃に映り込んでいる自分の顔を見るようにして、念じた――――
「――――わっちの願いに応えて、『雪水嵐《ユキミズアラシ》』――――」
――瞬間、マユは全身から青白い光を放ち、一瞬にしてヒーローに変身した。
スピーカー越しに対悪性怪物殲滅班《スレイヤーズギルド》の面々の驚く声が鳴り響く。
サクライが問いかける。
「――所長……!! その姿は……本当にヒーローの力を得たのですね。事前に言ってくれればもう少し準備は――――。」
「――今は一刻を争うでありんす。力が湧いて来る…………それも、リッチマンとネイキッドフレイムを助けるのに相応しい力が――――早く、2人のもとへ転送して。」
そこで少し躊躇ってしまうサクライ。
「――これまでのリッチマンとネイキッドフレイムを見れば、ヒーロー化に何らかの代償を払っているはず。所長。本当によろしいのですか…………?」
「――くどい。さっさと転送して。なに、代償と言ってもリッチマンとネイキッドフレイムよりよっぽど軽いものでありんす。時間がない。早く。」
「…………了解。転送装置起動!! 座標は現在モニターしているリッチマンとネイキッドフレイムの前へ!!」
――サクライは不安を抱えながらも、オペレーターたちに指令を下し、マユをすぐさま2人のもとへ転送した――――
>>
「――く、くそっ…………!! このままじゃあ、やべえ…………ッ!!」
「――やむ負えんな……ここは退くか。」
――リッチマンとネイキッドフレイムは目の前の三ツ首の魔犬を前に、消耗戦を強いられ、傷を癒す薬剤戦術ももう後が無いところまで来ていた。
「――悔しいが、しゃあねえ!! リター――」
――撤退を判断し、『リターン』を念じかけるリッチマンだったが――――
「――少し待ってください。今、助けのヒーローがそこへ行きます!!」
――突然、通信系を介して聴こえる、サクライの声。
「――あんた、サクライさん!? マユは――――まさか。」
――そう言いかけた瞬間――――突如場に突風が巻き起こった。
その突風は強い冷気を帯びており、活火山の深部を思わせるエリア一帯を一瞬にして温度を下げ、凍てつかせた。
三ツ首の魔犬も警戒し、一旦飛び跳ねて距離を取った。
――長い金髪をたなびかせて雪風の中から現れたのは――――
「――おめえ……マユ!! マユじゃあねえかっ!!」
――脇差を構え、突如現れたマユは、全身に青い全身タイツのような装いで、髪は一部、簪《かんざし》で留まっている。そして氷雪のような冷たく鋭い目で魔犬を睨み付ける。
まるで日ノ本古来のくノ一を思わせるような、ボディラインも露わになったセクシーな出で立ちだが、今は当然そんなことを気にしている余裕はない。
「――2人とも、これを――――」
――マユが何やら念じると、リッチマンとネイキッドフレイムの身体に冷気の層を纏わされた。この灼熱煉獄の熱さを微塵も感じない。冷気のコートだ。
「――2人とも、深手を負ってよく我慢したでありんす――――潤しの水よ!!」
再びマユが念じると、今度は清らかな光を伴った水が発生し、全身に傷を負ったリッチマンとネイキッドフレイムの身体が癒えていく。
……どうやら、突如ヒーローとして加勢に来たマユは、冷気と水、そしてそれから成る回復を操る能力を持っているようだ。
――ならば、炎を繰り出してくる敵には特効の能力と言えよう――
「――――どうやら、この敵にはうってつけの能力でありんすね。わっちのこの力は――――2人とも行きんすよ。氷水のヒーロー・アクアセイバー…………参る。」
――マユが加わり、ヒーローは3人となった――――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる