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<ノーブラッド編>
プロローグ
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―――――これが魔法だ!これが能力だ!
2015年、1月。
ある一つの映像が、全世界を震撼させた。
その映像に映っていたのは数人の黒ずくめ。
そして腕を後ろで組まされ、膝をついて座る、日本人男性が二人。
日本人男性たちの顔に生気はなく、その場は異様な雰囲気に包まれている。
その中で黒ずくめの一人が、静かに口を開く。
「我々は、神から偉大なる力を頂いた。この力をもってして、この世界を変えることが、我々の定めである!」
黒ずくめはそう言い放ち、自らの手に炎を灯した。
そしてその炎は一瞬にして日本人男性二人を包み込み、瞬く間に灰になった。そして灰となった二人の日本人男性たちは、風の中に消えていった。
「我々はこの魔法とも呼べる力で、この世界を創り変える!」
この一つの映像が世界を変えた。
自国民を殺された日本はもちろん、世界中の国々が、この事件を非難した。
と、同時に、手に炎を灯した原理についての研究が行われた。
しかし、この問題はなかなか解決には至らなかった。
第一の理由は、当時の世界の風潮として、軍事力、つまり武力というものを行使することへのためらいだ。たとえ、相手がどれだけ非人道的なことをしようとも、そう簡単に復讐はできない。やってはいけない、という流れがあった。世界は二度に及ぶ大戦から学んだことを忘れてはいない。武力に対して武力では全く意味がない。
それに加え、相手がどこにいるかという情報も不足していた。
手がかりとして、中東に潜伏していた宗教団体であったのは確かなのだが、拠点はわかっていなかった。何度か捜索班を派遣したが、その者たちが帰ってくることもなく、情報はつかめぬままだった。
そしてもう一つの謎、手に炎を灯した原理について。
何度も映像を見ても、全くタネがわからなかった。どういう方法で炎を灯したのか、皆目見当もつかなかった。
それこそまさに魔法のよう。
そしてこの問題は、何の手がかりも掴めぬまま、様々なしこりを残して消えていく、
かのように思われた。
ここでもう一つの動画が世界をさらに変えていく。
事の発端はアメリカのとある街でのこと。
それは、一人の少年が興味本位に始めたことだった。
その少年は、今回の映像を見て、もし手に炎を灯したことが本当に魔法のようなものだとしたら、自分にもできるのではないか、とそう思ったのだ。
普通であれば、そんなことできるはずがない。
だが、その少年は炎を灯せてしまった。
きっかけも方法もわからないが、魔法のようなことができてしまったのだ。
そしてその動画が世界中に広まり、世界が変わっていく。
もしかしたら、僕も、私も、できるのではないかと、世界中の老若男女が、この力を試した。
そして結果は、―――――できてしまった。
もちろん、全てが手に炎を灯すというものではない。
ある人は、物を凍らせ、
ある人は、風を起こし、
ある人は、電気を操り、
ある人は、物を浮かせ、
またある人は、人を殺した。
人が人を殺し、人が人を助け、目先の力にとらわれた人間たちは、善悪の判断ができなくなっていった。
そして、渾沌が世界を覆っていく。
2113年、日本。
暗い夜道。
一人の男が建物から出てきて傘をさす。
そしてそのまま家路につく。
数分歩いたところで、住宅街に出た。
街灯の明かりが夜道を照らす。
ふと、男の目の前に、人影が現れた。
その人影は、傘をさしてはいなかったが、黒い服にフードをかぶっていて、顔は見えない。
男はその人影を不審に思いつつも、その人影の横を、
―――――だな?
通り過ぎようとした。
自分の名を呼ばれた男は、目を見開いて驚き、思わず振り返る。
人影の手には、携帯型端末が握られており、煌々と画面が光っていた。
そしてその画面には、自分の顔写真が映っていた。
得体のしれない恐怖が彼の身体を覆う。
早く帰りたいのだが、足は少しずつ後ずさりすることしかできない。
しかし彼は、なんとか平常心を取り戻そうと、震える唇を動かす。
「誰だ?」
それは最もな質問だった。
だが人影はその質問に答えない。答える道理がない。
人影は、何も言わずに端末をしまい、男の方を見る。
そしておもむろに、右手を男の方へ突き出した。
その右手は、親指を立て、人差し指と中指だけを伸ばし、ピストルをマネしたように開かれていた。
そして、人影は左手で指を鳴らした。
まるでピストルの引き金を引くかのように。
男は、何が起こったかわからなかった。が、それを理解するまえに、考える前に、彼の視界が、思考が、黒く染まっていった。
男の手から離れた傘が、ゆっくりと地面に落ちていく。
2015年、1月。
ある一つの映像が、全世界を震撼させた。
その映像に映っていたのは数人の黒ずくめ。
そして腕を後ろで組まされ、膝をついて座る、日本人男性が二人。
日本人男性たちの顔に生気はなく、その場は異様な雰囲気に包まれている。
その中で黒ずくめの一人が、静かに口を開く。
「我々は、神から偉大なる力を頂いた。この力をもってして、この世界を変えることが、我々の定めである!」
黒ずくめはそう言い放ち、自らの手に炎を灯した。
そしてその炎は一瞬にして日本人男性二人を包み込み、瞬く間に灰になった。そして灰となった二人の日本人男性たちは、風の中に消えていった。
「我々はこの魔法とも呼べる力で、この世界を創り変える!」
この一つの映像が世界を変えた。
自国民を殺された日本はもちろん、世界中の国々が、この事件を非難した。
と、同時に、手に炎を灯した原理についての研究が行われた。
しかし、この問題はなかなか解決には至らなかった。
第一の理由は、当時の世界の風潮として、軍事力、つまり武力というものを行使することへのためらいだ。たとえ、相手がどれだけ非人道的なことをしようとも、そう簡単に復讐はできない。やってはいけない、という流れがあった。世界は二度に及ぶ大戦から学んだことを忘れてはいない。武力に対して武力では全く意味がない。
それに加え、相手がどこにいるかという情報も不足していた。
手がかりとして、中東に潜伏していた宗教団体であったのは確かなのだが、拠点はわかっていなかった。何度か捜索班を派遣したが、その者たちが帰ってくることもなく、情報はつかめぬままだった。
そしてもう一つの謎、手に炎を灯した原理について。
何度も映像を見ても、全くタネがわからなかった。どういう方法で炎を灯したのか、皆目見当もつかなかった。
それこそまさに魔法のよう。
そしてこの問題は、何の手がかりも掴めぬまま、様々なしこりを残して消えていく、
かのように思われた。
ここでもう一つの動画が世界をさらに変えていく。
事の発端はアメリカのとある街でのこと。
それは、一人の少年が興味本位に始めたことだった。
その少年は、今回の映像を見て、もし手に炎を灯したことが本当に魔法のようなものだとしたら、自分にもできるのではないか、とそう思ったのだ。
普通であれば、そんなことできるはずがない。
だが、その少年は炎を灯せてしまった。
きっかけも方法もわからないが、魔法のようなことができてしまったのだ。
そしてその動画が世界中に広まり、世界が変わっていく。
もしかしたら、僕も、私も、できるのではないかと、世界中の老若男女が、この力を試した。
そして結果は、―――――できてしまった。
もちろん、全てが手に炎を灯すというものではない。
ある人は、物を凍らせ、
ある人は、風を起こし、
ある人は、電気を操り、
ある人は、物を浮かせ、
またある人は、人を殺した。
人が人を殺し、人が人を助け、目先の力にとらわれた人間たちは、善悪の判断ができなくなっていった。
そして、渾沌が世界を覆っていく。
2113年、日本。
暗い夜道。
一人の男が建物から出てきて傘をさす。
そしてそのまま家路につく。
数分歩いたところで、住宅街に出た。
街灯の明かりが夜道を照らす。
ふと、男の目の前に、人影が現れた。
その人影は、傘をさしてはいなかったが、黒い服にフードをかぶっていて、顔は見えない。
男はその人影を不審に思いつつも、その人影の横を、
―――――だな?
通り過ぎようとした。
自分の名を呼ばれた男は、目を見開いて驚き、思わず振り返る。
人影の手には、携帯型端末が握られており、煌々と画面が光っていた。
そしてその画面には、自分の顔写真が映っていた。
得体のしれない恐怖が彼の身体を覆う。
早く帰りたいのだが、足は少しずつ後ずさりすることしかできない。
しかし彼は、なんとか平常心を取り戻そうと、震える唇を動かす。
「誰だ?」
それは最もな質問だった。
だが人影はその質問に答えない。答える道理がない。
人影は、何も言わずに端末をしまい、男の方を見る。
そしておもむろに、右手を男の方へ突き出した。
その右手は、親指を立て、人差し指と中指だけを伸ばし、ピストルをマネしたように開かれていた。
そして、人影は左手で指を鳴らした。
まるでピストルの引き金を引くかのように。
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男の手から離れた傘が、ゆっくりと地面に落ちていく。
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