3 / 26
<ノーブラッド編>
第一話 II
しおりを挟む
「今回の結果を踏まえて、各々しっかり復習しておくように。ではこれで終わりだ」
放課後、担任の蓮が連絡事項を伝え終わり、その日の授業は終わりとなった。
教室を出ていく蓮。そしてそれを見た紅白は、体を小さくするように、存在を小さくするように、足音を消して、教室を出ていこうとしたその時、
「どこに行くんだ紅白くん?」
修良につかまった。
「…あー、えっと」
「サボろうったってそうはいかないぜ、自治会会計さんよ」
修良によって、紅白の自治会サボろう作戦はあえなく撃沈した。
そうして、修良に首根っこを掴まれながら自治会室前まで連れてこられた紅白。そこには天姫が仁王立ちで待っていた。
「あー、やっぱり!」
天姫は、明らかに連れてこられた状態の紅白を見るなり、そう言った。彼女の顔には呆れの色が見て取れる。
「神操さんの予想は当たったな。まったく、こいつはいつまでたってもこうなんだから」
「まさか、お前らグルか!?」
修良は、文字通り紅白を天姫の前に差し出した。解放された紅白は、すぐさま二人に突っかかる。
「何よ、悪い?あんたがサボろうとする方が悪いんじゃない。あんたのやりそうなことなんてお見通しよ。私から逃げられると思わないことね」
「んだとこらぁ!俺がどうしようが俺の勝手だろ!なーんでこんなめんどくさいことをせにゃならんのだ!」
「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ。やりたいやりたくないにかかわらず、現に今役員なんでしょ?それなら最低限仕事しなさいよ」
「うっせぇブース」
稚拙としか言いようがない。もはやただの悪口である。
「なっ!?ブスとは何よ!関係ないじゃない!」
対する天姫もまだ子供といったところか。稚拙な悪口への耐性はまだついていないようである。大人の女性への道は遠そうだ。
「ブスだお前なんか。性格が度ブスだな。このブースブースブース!」
この悪口のレパートリーの少なさ。確認のために言っておくが、彼は高校二年生である。
「まぁまぁ、二人とも、とりあえず中に入ろうぜ」
またいがみ合いだした二人を修良がなだめながら、三人は自治会室に入っていく。修良はいつも二人の仲裁役なのか、呆れの色と微笑ましさの色をないまぜにした表情をしていた。
「もう、如月先輩遅いですよ」
中に入ると、一人の女子生徒が座っていた。少しふてくされた様子で、頬杖をつきながら、横目で紅白たちの方を見ている。彼女は自治会唯一の一年生、津ヶ浦 成美だ。
「おー、成美、早いじゃん!殊勝な心掛けだな!」
そう言って紅白は成美の隣に腰かける。さっきまでサボろうとしてたやつとは思えないぐらい偉そうである。
「そ、そんなこと、ないですよ」
しかし成美は、明らかにうすっぺらーな褒め言葉にまんざらでもなさそうな反応を示す。
「帰ろうとしてたあんたが偉そうなこと言ってんじゃないわよ」
そんな成美を視界に入れながらも、天姫は紅白の頭を叩く。叩かれた紅白はまた天姫にブーブー言っている。
天姫と修良もそれぞれ席に着く。と言っても、まだ集会は始まらない。自治会担当の蓮や、会長、副会長(天姫の他にもう一人いる)など、いろいろとメンツが足りていない。
「そうだ、先輩!今日、実力テストの結果が返ってきたんですけど、見てください!」
成美はそう言って、先ほど授業終わりに返却されたであろうテストの結果が書かれた紙を紅白に見せる。晃陽高校は、毎年、年度始めに、実力テストが行われている。今日の放課後、その結果が返ってきたのだ。
「おー、11位か。すげーじゃん」
その結果を見せられた紅白は素直に成美を褒める。褒められた成美は、またしても満更でもなさそうだが、今回はそれだけではなかった。
「先輩はどうだったんですか?何位ぐらいですか?」
成美は、興味津々という感じで紅白に質問する。しかしその裏にはどこか小バカにしたようなものが感じられる。
彼女はなぜか、紅白の成績があまり良くないと思っているようだ。まぁ普段の行動や言動を見ると、その予想もわからなくはない。ただ、厳密には学年が違うので、何とも言えないが、仮にも紅白が学年でも下の方であれば、11位の成美と大差ないかもしれない。
「………なんでそれをお前に言わなきゃならんのだ」
そんな成美に、紅白は目を反らしながら、少し言葉を濁す。そして成美はその反応を見逃さない。見逃すはずがない。
「なんで言ってくれないんですかぁ?あ、もしかして、先輩、人に言えないような成績だったんですか?」
成美は人をいじる紅白のようにイヤ~な顔をしながら紅白に詰め寄る。どんどん弄ってくる後輩に対して、言葉を濁し続ける紅白。
「成美ちゃん、そのくらいにしときなさい。コウも、人をおちょくるのも大概にしときなさいよ。友達なくすわよあんた」
「余計なお世話だ!」
助け船を出してくれた天姫に対して、べーっと舌を出して言い返す。いや、この場合は余計なひと言を足した天姫のせいか。
「天姫先輩、おちょくるってどういうことですか?」
「そいつ学年3位よ」
「………え?」
天姫に衝撃的事実を突きつけられ、ポカーンと硬直してしまう成美。
「ちょ、おまっ、先に言うなよ!俺がいい感じに落としてやろうと思ったのに!」
「………本当にあんたって性格を悪いわよね」
「まあな!」
喜々として肯定する紅白。ここまでいくと逆に清々しい。
「先輩って、頭良いんですか?」
硬直状態からなんとか戻ってきた成美は、必死に言葉を紡ぎ出す。しかしその表情から察するに、まだ受け入れるには至っていないらしい。
「まぁ悪くはないな」
「なんでそこでまた濁すのよ。2位の私より頭良いくせに」
「え、天姫先輩2位ナンデスカ?」
さらっと言われた衝撃発言パートⅡに、またしても硬直してしまう。どちらかと言えば、天姫の方が傷つけているような気もするが。
「そうよ。テストの時はいつもコウに教えてもらってるんだけど、私に教えてるくせに私より下ってどういうことだよって話よねー」
天姫はいつも言いたかったと言わんばかりに、ジトッとした目で紅白を見つめる。
「テストなんて適当にやっときゃいいんだよ。成績云々より、内容をちゃんと理解してるかどうかが大事なんだ」
「うわーはらたつー。適当にやって3位とかマジふざけてるわよね。さすが主席入学者。頭の出来が違うんでしょうね」
よほど溜まっていたのか、天姫の口調がどんどん悪くなっていく。女の子として、この方向の変化はよろしくない。
「シュセキニュウガク?」
そして紅白と天姫に置いて行かれた成美は、もはや人語を手放しそうになっていた。このままでは人格がなくなってしまうと本能的に思ったのか、成美は自己回復を図る。
「明志先輩はどうだったんですか!?」
「え?えーっと、8位…」
「……………」
しかし、成美が思っていた答えは返ってこなかった。修良もここで自分の方が下だったら、何かしらの力になれたかもとも思ったが、嘘はつけなかった。良くも悪くも人が良い修良が、トドメの一発を放ってしまった。成美は完全に思考が停止し、口から魂が抜けそうになっていた。
「ほらほら、何をしてるのよ。後輩をいじめるのも大概にしとかないとダメでしょ?せっかくの一年生が辞めちゃったらどうするのよ」
そんな中、教室に入ってきたのは、もう一人の自治会副会長、三年生の 音無 冬夏だ。自治会室に現れた彼女は、いかにも頼れるお姉さん、といった感じだ。成美は冬夏が来るや否や、すぐに彼女に泣きつく。
「冬夏せんぱい~。如月先輩がいじめるんです~」
よしよしと成美の頭をなでる冬夏。
「成美~。今お前が頼りにしてる冬夏さんはなぁ、何を隠そう、三年の学年トップだぞ」
成美は紅白の言葉を受け、絶望に満ちた顔で紅白を見る。そして今自分を優しく介抱してくれている冬夏を恐る恐る見上げる。その視線の先には少しバツが悪そうな冬夏の顔があった。
「もう、如月、今それを言わなくていいでしょ」
冬夏は人差し指を口の前に立てて、シーと言うようなジェスチャーをするが、時すでに遅しとはこのことだ。
「うわーん!」
プライドがずたずたにされた成美は泣きだしてしまった。自分の成績が良いと思っていたのに(現に悪くはないのだが)、今この場いる誰よりも下だったと知れば、軽く絶望するのも仕方がないのか。学年が違うので一概にどう、と言えないところはあるが、順位という指標からすると、少しかわいそうな一年生である。そんな成美の頭を優しくなでる冬夏。紅白は大爆笑していた。
「やーいやーい!俺をおちょくろうなんて百年早いぜ!せめて一桁はとらねぇとなぁ」
本当に大人げないやつである。成美が自治会に入ってからまだ一か月ほどしか経っていないが、彼女はすでに紅白のおもちゃと化していた。
「でもまぁ安心しろって成美。会長はそんなに頭よくねぇから」
「…うぅ、そうなんですか?」
さっきまで成美の絶望の全ての元凶であるはずの紅白から示された唯一の光が、成美の心を少しだけ修復させていった。
「如月、あなたあとでぐちゃぐちゃにされるわよ」
紅白の発言を受けて、呆れながらに注意を促す冬夏。
「大丈夫ですよ。どうせ今日も出席しないでしょ、あの人は」
「確かにそうだけど…」
冬夏は心配もそこそこに、ほとんど集会に顔を出さない会長を思い出しては、呆れてため息を吐いた。
「うぅ、会長ってどんな人なんですか?」
成美は涙を拭き、呼吸を整えながら質問する。
「あれ?成美ってまだ会長に会ったことなかったっけ?まぁあの人ほとんど表に出てこないからな。一応そこにはいると思うけど」
そう言って、紅白は教室の奥の扉を指さす。そこには自治会準備室と書かれている。
「準備室?」
「会長は寝るのが好きでな。準備室を改造して、自分の仮眠室にしたんだよ。そしてほとんどそこにこもって出てこない。俺だって、そんなに会ったことないしな」
「えぇ………」
成美は大丈夫かこの学校?とでも言いたげに、顔をしかめた。
「そう言えば、今年の入学式も私が代理でやったから、今の一年生はアイツに会ったことがないのね。少し注意しないと」
冬夏は呆れながら、どうしようかと画策する。彼女はこの自治会で一番会長と接点があり、一番仲がいい。
「はいはい、お遊びはそこまでだ。集会を始めるぞ」
ここで蓮が入ってきて、(会長を除く)自治会の役員たちがそろった。それぞれが各々の席に着き、放課後の臨時集会が始まった。
放課後、担任の蓮が連絡事項を伝え終わり、その日の授業は終わりとなった。
教室を出ていく蓮。そしてそれを見た紅白は、体を小さくするように、存在を小さくするように、足音を消して、教室を出ていこうとしたその時、
「どこに行くんだ紅白くん?」
修良につかまった。
「…あー、えっと」
「サボろうったってそうはいかないぜ、自治会会計さんよ」
修良によって、紅白の自治会サボろう作戦はあえなく撃沈した。
そうして、修良に首根っこを掴まれながら自治会室前まで連れてこられた紅白。そこには天姫が仁王立ちで待っていた。
「あー、やっぱり!」
天姫は、明らかに連れてこられた状態の紅白を見るなり、そう言った。彼女の顔には呆れの色が見て取れる。
「神操さんの予想は当たったな。まったく、こいつはいつまでたってもこうなんだから」
「まさか、お前らグルか!?」
修良は、文字通り紅白を天姫の前に差し出した。解放された紅白は、すぐさま二人に突っかかる。
「何よ、悪い?あんたがサボろうとする方が悪いんじゃない。あんたのやりそうなことなんてお見通しよ。私から逃げられると思わないことね」
「んだとこらぁ!俺がどうしようが俺の勝手だろ!なーんでこんなめんどくさいことをせにゃならんのだ!」
「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ。やりたいやりたくないにかかわらず、現に今役員なんでしょ?それなら最低限仕事しなさいよ」
「うっせぇブース」
稚拙としか言いようがない。もはやただの悪口である。
「なっ!?ブスとは何よ!関係ないじゃない!」
対する天姫もまだ子供といったところか。稚拙な悪口への耐性はまだついていないようである。大人の女性への道は遠そうだ。
「ブスだお前なんか。性格が度ブスだな。このブースブースブース!」
この悪口のレパートリーの少なさ。確認のために言っておくが、彼は高校二年生である。
「まぁまぁ、二人とも、とりあえず中に入ろうぜ」
またいがみ合いだした二人を修良がなだめながら、三人は自治会室に入っていく。修良はいつも二人の仲裁役なのか、呆れの色と微笑ましさの色をないまぜにした表情をしていた。
「もう、如月先輩遅いですよ」
中に入ると、一人の女子生徒が座っていた。少しふてくされた様子で、頬杖をつきながら、横目で紅白たちの方を見ている。彼女は自治会唯一の一年生、津ヶ浦 成美だ。
「おー、成美、早いじゃん!殊勝な心掛けだな!」
そう言って紅白は成美の隣に腰かける。さっきまでサボろうとしてたやつとは思えないぐらい偉そうである。
「そ、そんなこと、ないですよ」
しかし成美は、明らかにうすっぺらーな褒め言葉にまんざらでもなさそうな反応を示す。
「帰ろうとしてたあんたが偉そうなこと言ってんじゃないわよ」
そんな成美を視界に入れながらも、天姫は紅白の頭を叩く。叩かれた紅白はまた天姫にブーブー言っている。
天姫と修良もそれぞれ席に着く。と言っても、まだ集会は始まらない。自治会担当の蓮や、会長、副会長(天姫の他にもう一人いる)など、いろいろとメンツが足りていない。
「そうだ、先輩!今日、実力テストの結果が返ってきたんですけど、見てください!」
成美はそう言って、先ほど授業終わりに返却されたであろうテストの結果が書かれた紙を紅白に見せる。晃陽高校は、毎年、年度始めに、実力テストが行われている。今日の放課後、その結果が返ってきたのだ。
「おー、11位か。すげーじゃん」
その結果を見せられた紅白は素直に成美を褒める。褒められた成美は、またしても満更でもなさそうだが、今回はそれだけではなかった。
「先輩はどうだったんですか?何位ぐらいですか?」
成美は、興味津々という感じで紅白に質問する。しかしその裏にはどこか小バカにしたようなものが感じられる。
彼女はなぜか、紅白の成績があまり良くないと思っているようだ。まぁ普段の行動や言動を見ると、その予想もわからなくはない。ただ、厳密には学年が違うので、何とも言えないが、仮にも紅白が学年でも下の方であれば、11位の成美と大差ないかもしれない。
「………なんでそれをお前に言わなきゃならんのだ」
そんな成美に、紅白は目を反らしながら、少し言葉を濁す。そして成美はその反応を見逃さない。見逃すはずがない。
「なんで言ってくれないんですかぁ?あ、もしかして、先輩、人に言えないような成績だったんですか?」
成美は人をいじる紅白のようにイヤ~な顔をしながら紅白に詰め寄る。どんどん弄ってくる後輩に対して、言葉を濁し続ける紅白。
「成美ちゃん、そのくらいにしときなさい。コウも、人をおちょくるのも大概にしときなさいよ。友達なくすわよあんた」
「余計なお世話だ!」
助け船を出してくれた天姫に対して、べーっと舌を出して言い返す。いや、この場合は余計なひと言を足した天姫のせいか。
「天姫先輩、おちょくるってどういうことですか?」
「そいつ学年3位よ」
「………え?」
天姫に衝撃的事実を突きつけられ、ポカーンと硬直してしまう成美。
「ちょ、おまっ、先に言うなよ!俺がいい感じに落としてやろうと思ったのに!」
「………本当にあんたって性格を悪いわよね」
「まあな!」
喜々として肯定する紅白。ここまでいくと逆に清々しい。
「先輩って、頭良いんですか?」
硬直状態からなんとか戻ってきた成美は、必死に言葉を紡ぎ出す。しかしその表情から察するに、まだ受け入れるには至っていないらしい。
「まぁ悪くはないな」
「なんでそこでまた濁すのよ。2位の私より頭良いくせに」
「え、天姫先輩2位ナンデスカ?」
さらっと言われた衝撃発言パートⅡに、またしても硬直してしまう。どちらかと言えば、天姫の方が傷つけているような気もするが。
「そうよ。テストの時はいつもコウに教えてもらってるんだけど、私に教えてるくせに私より下ってどういうことだよって話よねー」
天姫はいつも言いたかったと言わんばかりに、ジトッとした目で紅白を見つめる。
「テストなんて適当にやっときゃいいんだよ。成績云々より、内容をちゃんと理解してるかどうかが大事なんだ」
「うわーはらたつー。適当にやって3位とかマジふざけてるわよね。さすが主席入学者。頭の出来が違うんでしょうね」
よほど溜まっていたのか、天姫の口調がどんどん悪くなっていく。女の子として、この方向の変化はよろしくない。
「シュセキニュウガク?」
そして紅白と天姫に置いて行かれた成美は、もはや人語を手放しそうになっていた。このままでは人格がなくなってしまうと本能的に思ったのか、成美は自己回復を図る。
「明志先輩はどうだったんですか!?」
「え?えーっと、8位…」
「……………」
しかし、成美が思っていた答えは返ってこなかった。修良もここで自分の方が下だったら、何かしらの力になれたかもとも思ったが、嘘はつけなかった。良くも悪くも人が良い修良が、トドメの一発を放ってしまった。成美は完全に思考が停止し、口から魂が抜けそうになっていた。
「ほらほら、何をしてるのよ。後輩をいじめるのも大概にしとかないとダメでしょ?せっかくの一年生が辞めちゃったらどうするのよ」
そんな中、教室に入ってきたのは、もう一人の自治会副会長、三年生の 音無 冬夏だ。自治会室に現れた彼女は、いかにも頼れるお姉さん、といった感じだ。成美は冬夏が来るや否や、すぐに彼女に泣きつく。
「冬夏せんぱい~。如月先輩がいじめるんです~」
よしよしと成美の頭をなでる冬夏。
「成美~。今お前が頼りにしてる冬夏さんはなぁ、何を隠そう、三年の学年トップだぞ」
成美は紅白の言葉を受け、絶望に満ちた顔で紅白を見る。そして今自分を優しく介抱してくれている冬夏を恐る恐る見上げる。その視線の先には少しバツが悪そうな冬夏の顔があった。
「もう、如月、今それを言わなくていいでしょ」
冬夏は人差し指を口の前に立てて、シーと言うようなジェスチャーをするが、時すでに遅しとはこのことだ。
「うわーん!」
プライドがずたずたにされた成美は泣きだしてしまった。自分の成績が良いと思っていたのに(現に悪くはないのだが)、今この場いる誰よりも下だったと知れば、軽く絶望するのも仕方がないのか。学年が違うので一概にどう、と言えないところはあるが、順位という指標からすると、少しかわいそうな一年生である。そんな成美の頭を優しくなでる冬夏。紅白は大爆笑していた。
「やーいやーい!俺をおちょくろうなんて百年早いぜ!せめて一桁はとらねぇとなぁ」
本当に大人げないやつである。成美が自治会に入ってからまだ一か月ほどしか経っていないが、彼女はすでに紅白のおもちゃと化していた。
「でもまぁ安心しろって成美。会長はそんなに頭よくねぇから」
「…うぅ、そうなんですか?」
さっきまで成美の絶望の全ての元凶であるはずの紅白から示された唯一の光が、成美の心を少しだけ修復させていった。
「如月、あなたあとでぐちゃぐちゃにされるわよ」
紅白の発言を受けて、呆れながらに注意を促す冬夏。
「大丈夫ですよ。どうせ今日も出席しないでしょ、あの人は」
「確かにそうだけど…」
冬夏は心配もそこそこに、ほとんど集会に顔を出さない会長を思い出しては、呆れてため息を吐いた。
「うぅ、会長ってどんな人なんですか?」
成美は涙を拭き、呼吸を整えながら質問する。
「あれ?成美ってまだ会長に会ったことなかったっけ?まぁあの人ほとんど表に出てこないからな。一応そこにはいると思うけど」
そう言って、紅白は教室の奥の扉を指さす。そこには自治会準備室と書かれている。
「準備室?」
「会長は寝るのが好きでな。準備室を改造して、自分の仮眠室にしたんだよ。そしてほとんどそこにこもって出てこない。俺だって、そんなに会ったことないしな」
「えぇ………」
成美は大丈夫かこの学校?とでも言いたげに、顔をしかめた。
「そう言えば、今年の入学式も私が代理でやったから、今の一年生はアイツに会ったことがないのね。少し注意しないと」
冬夏は呆れながら、どうしようかと画策する。彼女はこの自治会で一番会長と接点があり、一番仲がいい。
「はいはい、お遊びはそこまでだ。集会を始めるぞ」
ここで蓮が入ってきて、(会長を除く)自治会の役員たちがそろった。それぞれが各々の席に着き、放課後の臨時集会が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
奇跡の少女セリア〜私は別に特別ではありませんよ〜
アノマロカリス
ファンタジー
王国から遠く離れた山奥の小さな村アリカ…
そこに、如何なる病でも治してしまうという奇跡の少女と呼ばれるセリアという少女が居ました。
セリアはこの村で雑貨屋を営んでおり、そこでも特に人気な商品として、ポーションが好評で…
如何なる病を治す…と大変評判な話でした。
そのポーションの効果は凄まじく、その効果は伝説のエリクサーに匹敵するという話も…
そんな事から、セリアは後に聖女と言われる様になったのですが…?
実は…奇跡の少女と呼ばれるセリアには、重大な秘密がありました。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる