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アリの隊列
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人がいる。私は、ビルの中のその様子を眺めていた。
人は、アリの隊列と違い、乱れた隊列で進んでいく。窓越しに見るその隊列は、いつしかぼやけていた。
いつの間にか、隊列も丸い模様に変わっていた。
「雨か……」
私は、ぼんやりとした頭をベッドに預ける。うつらうつらとしながら、夢の世界へと堕ちて行く。見えていた窓からの景色は、いつしか、滲んで何も分からなくなった。
気付くと、私は暗闇の中にいた。目蓋を開けても、何も見えない。真っ暗な暗闇の中で、私の体だけが、何故か光っている。
「なんで自分の体だけ光っているのだろう……?」
目蓋の周りは暗闇ばかり。そう思って、辺りを見渡す。すると、何処かの入り口だろうか? 外灯の光る扉が、少し離れた所にあるのが見えた。
私は、一先ずそこに行く事にした。近くて遠いその入口は、ぼんやりとした明かりを灯したまま、私を待っているように佇んでいた。
木の扉は、どこかで見覚えがあった。でも思い出せない。でも、どこかで確かに見た。
「わかんないなぁ……」
一瞬入るか躊躇った後、そろりと扉を開けた。カランカランと音がした。カウンター席のみの、カフェのようだ。
「いらっしゃい」
ハスキーな声で、紳士のようなおじさんがカウンターの中でカップを拭いていた。私は会釈した。
「どこでもどうぞ」
とりあえず、店の最奥に腰かけた。
「どうぞ」
頼む前に、ホットコーヒーが出てきた。
「貴方の物語をお聞かせいただけますかな?」
男は、そう言って私を見た。
「私の物語……」
咄嗟には出て来なかった。今までの人生を思い返す。私は、これまでの人生を語った。彼氏に二股された事、大学で成績優秀だった事、就職するのが嫌で大学院へ進学した事など。
男は、黙って私の話を聞いていた。
「貴方は、アリの隊列からは、抜け出した存在だったわけですね」
私が話し終えると、男はそう言って、きゅっとカップを拭き鳴らした。
「隊列から抜け出した……」
私は、眠る直前に見ていた光景をふと思い出した。乱れたアリの隊列のような人間達。
「あぁ……。でも、私は、あの乱れた列にすら入れなかったのかもしれない」
男は、カップを置いて言った。
「隊列に入れなくても良いではないですか。どこに行くかは貴方の自由です。どこかの隊列に入ってはみ出ても良い。それも貴方の自由」
男と目が合った。その目はオッドアイだった。赤と青の二つの眼球は、私を捉えて離さなかった。
「どうするかは、私の自由……」
「そう、自由です」
男は微笑む。私は、なんとなく微笑み返した。
「そうですよね」
私は、彼の出したコーヒーを飲んだ。少し苦みの強いコーヒーで、どこか懐かしい味だった。
「さぁ、晴れましたよ」
男がそう言った瞬間。私は自室のベッドにいた。しかし、何故か口の中にはコーヒーの風味が残っていた。
私は、もう一度、窓の外を見た。人はまばらで、それぞれ好きな方向へ歩いていた。
「私は、自由……」
私は、呟く。
「そう。貴方は自由です」
男の声が聞こえた瞬間。私の体は、病院のベッドの上だった。
「気が付いたのね!」
母はそう言って、私の手を握り締めた。
私は、思い出した。大学の研究に没頭するあまり、過労で倒れた事を。そして、私は選択する事とした。これからも研究を続ける事を。殆どが見向きもしない、私だけの夢の研究を。
「これからどうするかは、貴方次第です」
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
人は、アリの隊列と違い、乱れた隊列で進んでいく。窓越しに見るその隊列は、いつしかぼやけていた。
いつの間にか、隊列も丸い模様に変わっていた。
「雨か……」
私は、ぼんやりとした頭をベッドに預ける。うつらうつらとしながら、夢の世界へと堕ちて行く。見えていた窓からの景色は、いつしか、滲んで何も分からなくなった。
気付くと、私は暗闇の中にいた。目蓋を開けても、何も見えない。真っ暗な暗闇の中で、私の体だけが、何故か光っている。
「なんで自分の体だけ光っているのだろう……?」
目蓋の周りは暗闇ばかり。そう思って、辺りを見渡す。すると、何処かの入り口だろうか? 外灯の光る扉が、少し離れた所にあるのが見えた。
私は、一先ずそこに行く事にした。近くて遠いその入口は、ぼんやりとした明かりを灯したまま、私を待っているように佇んでいた。
木の扉は、どこかで見覚えがあった。でも思い出せない。でも、どこかで確かに見た。
「わかんないなぁ……」
一瞬入るか躊躇った後、そろりと扉を開けた。カランカランと音がした。カウンター席のみの、カフェのようだ。
「いらっしゃい」
ハスキーな声で、紳士のようなおじさんがカウンターの中でカップを拭いていた。私は会釈した。
「どこでもどうぞ」
とりあえず、店の最奥に腰かけた。
「どうぞ」
頼む前に、ホットコーヒーが出てきた。
「貴方の物語をお聞かせいただけますかな?」
男は、そう言って私を見た。
「私の物語……」
咄嗟には出て来なかった。今までの人生を思い返す。私は、これまでの人生を語った。彼氏に二股された事、大学で成績優秀だった事、就職するのが嫌で大学院へ進学した事など。
男は、黙って私の話を聞いていた。
「貴方は、アリの隊列からは、抜け出した存在だったわけですね」
私が話し終えると、男はそう言って、きゅっとカップを拭き鳴らした。
「隊列から抜け出した……」
私は、眠る直前に見ていた光景をふと思い出した。乱れたアリの隊列のような人間達。
「あぁ……。でも、私は、あの乱れた列にすら入れなかったのかもしれない」
男は、カップを置いて言った。
「隊列に入れなくても良いではないですか。どこに行くかは貴方の自由です。どこかの隊列に入ってはみ出ても良い。それも貴方の自由」
男と目が合った。その目はオッドアイだった。赤と青の二つの眼球は、私を捉えて離さなかった。
「どうするかは、私の自由……」
「そう、自由です」
男は微笑む。私は、なんとなく微笑み返した。
「そうですよね」
私は、彼の出したコーヒーを飲んだ。少し苦みの強いコーヒーで、どこか懐かしい味だった。
「さぁ、晴れましたよ」
男がそう言った瞬間。私は自室のベッドにいた。しかし、何故か口の中にはコーヒーの風味が残っていた。
私は、もう一度、窓の外を見た。人はまばらで、それぞれ好きな方向へ歩いていた。
「私は、自由……」
私は、呟く。
「そう。貴方は自由です」
男の声が聞こえた瞬間。私の体は、病院のベッドの上だった。
「気が付いたのね!」
母はそう言って、私の手を握り締めた。
私は、思い出した。大学の研究に没頭するあまり、過労で倒れた事を。そして、私は選択する事とした。これからも研究を続ける事を。殆どが見向きもしない、私だけの夢の研究を。
「これからどうするかは、貴方次第です」
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
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