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7.

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 私は、島流しにされる王子を移送中の馬車を襲い、周りにいた兵たちを倒し終えた。

 兵たちは全員息はあるが、気を失っている。
 私は王子が乗っている馬車に向かって歩き始めた。

 兵たちを倒すことは、さほど難しくはなかった。
 大勢いたわけではないけれど、それでも複数人の兵を相手にするのは、普通の人間にとっては困難だ。
 しかし、私には可能だった。

 なぜなら、私には兵たちがどのように動くのか、かただ。

 それは、私が戦闘の才に秀でているがゆえに兵たちの動きを読めた……、というわけではない。
 私にはそんな才能はない。
 護身術の心得はあるので、普通の人よりは多少強いけれど、それだけで兵たちを倒すことは不可能だ。

 王子は、私が兵たちを倒したことに、違和感を抱くかしら?
 そこに違和感を覚えたら、もしかすると私のことについて、認識を新たにするかもしれない。
 まあ、あの王子が答えにたどり着ける可能性は、かなり低いと思うけれど……。

 私は、馬車の前に立った。
 そして、扉に手をかけた。
 これから、王子とご対面して、そして、それからは……。

     *

 (※王子視点)

 馬車の扉が開いた。

 入ってきたのは前回と同様、ララーナだった。

「ララーナ……」

 私は息を呑んだ。
 また、あの倉庫のような場所に連れて行かれるのか……。
 そして、そこでまた……。
 
 いや、そのことを考えるのはやめよう。
 今回はすでに、島流しを宣告されて、こうして手足を拘束されている時点で詰んでいる。
 もう、おれには抵抗する術がない。
 死を免れることはできないだろう。
 となれば、今のおれにできることは一つしかない。

 それは、情報収集だ。
 
 今回がダメでも、次の周回でやり直せばいい。
 そして、そのためには有益な情報が必要だ。
 まずは、ララーナが魔法を使えるということを明らかにする。
 そして、その詳細も可能な限り知りたい。

 命を捨てるつもりではあるが、無駄にするつもりはない。 
 少しでも多く、次の周回の時に役立つ情報を手に入れなければならない。 
 しかし、おれの考えでは、ララーナは心を読む魔法を使える。
 
 つまり、おれのこのような考えも筒抜けになってしまう。 
 彼女は自身の魔法について知られないようにするだろう。 
 だから、何か対策をする必要がある。
 そして、おれは一つの策を思い付いた。

「さて、着きましたよ」
 
 前回と同じ場所に到着した。
 また、あの地獄のような時間が始まるのか……。

 いや、とにかく今は次の周回のための情報収集に専念しよう。
 そして、こちらの心を読まれないようにする必要もある。
 おれが考えたこの対策法は誰でも思い付く方法だ。
 そして大人が、ましてや王子であるこのおれがやるなんて恥さらしだ。
 しかし、心を読まれないようにするにはこうするしかない。
 
 だからおれは、先ほどからずっと心の中で、排泄物の名を呟いていた。

 これでララーナに心を読まれなければ、次の周回ではうまく立ち回ることができる。
 だから、この対策法に効果があるのか確かめる価値は充分にある。
 
 おれは深層心理を悟られないように、心の浅い部分で排泄物の名を呪文のように唱え続けた。
 
 魔法の詠唱をしていると思えば、恥ずかしさは少し和らいだ。
 ララーナの魔法に対抗できる可能性を秘めているので、これもある意味、魔法なのかもしれない。
 新たに得た魔法を唱えながら、おれは前回と同様、ララーナと共に倉庫の中に入った。

 絶対に、ララーナの魔法の詳細を暴いてやる。
 そう思っていたが、ララーナによって、おれは自らがとんでもない勘違いをしていたことに、気づくことになるのだった……。
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