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第5話:カビの植民地
領地の北部に位置する巨大な備蓄倉庫群。
そこは、冬の長い辺境において生命線とも言える場所だ。
しかし今、その一角は葬式のような重苦しい空気に包まれていた。
「……説明しろ」
ジェラルドの低い声が、石造りの倉庫内に響く。
彼の前には、管理責任者と輸送業者の男たちが一列に並ばされ、処刑台の囚人のように震えていた。
開け放たれた木箱の中身は無残だった。
隣国から輸入した高級織物や、冬に備えた穀物の袋が、びっしりと青黒いカビに覆われている。
強烈な腐敗臭が鼻をつき、倉庫全体がカビの胞子で霞んでいるようにさえ見えた。
「も、申し訳ございません閣下! 湿気対策は万全でした! 換気も規定通り行っておりましたし、乾燥剤も……」
「ではなぜ、これらは腐っている? 自然発生したとでも言うのか?」
ジェラルドの眼光が鋭さを増す。
輸送業者の代表である小太りの男が、脂汗を拭いながら言い訳を始めた。
「こ、これは今年の雨が多かったせいでして……、あるいは、倉庫自体の老朽化が原因かと! 我々の輸送に不備はございません! 正規の陸路ルートで、厳重に運んでまいりました!」
責任を領地の設備になすりつけようとする業者に、ジェラルドのこめかみに青筋が浮かぶ。
その時、倉庫の入り口から遠慮がちな声がした。
「あの……、失礼いたします」
作業着姿のリディアが、顕微鏡と採取キットが入った鞄を抱えて入ってきた。
ジェラルドの表情が、一瞬だけ柔らかくなる。
「来たか、リディア。カビ臭い場所ですまないが、専門家の意見が必要だ」
「はい。お役に立てるなら」
リディアは眼鏡の位置を直すと、腐敗した木箱へと歩み寄った。
業者の男が「なんだこの小娘は」という視線を向けるが、ジェラルドの一睨みで縮み上がる。
リディアはピンセットでカビの一部を採取し、持参した携帯用顕微鏡のステージに乗せた。
美術品の修復において、カビ(菌類)との戦いは日常茶飯事だ。
キャンバスを食い荒らすカビ、紙を茶色く変色させるフォクシング。
それらの種類を特定し、適切な処置を施すのは、彼女にとって初歩的なスキルだった。
レンズを覗き込むリディアの瞳が、スッと細められる。
彼女はもう一度、今度は木箱の表面を指でなぞり、その感触を確かめた。
そして、少しだけ指先を舐めた。
「な、何をしている!」
「……しょっぱいです」
リディアはジェラルドの制止に構わず、静かに呟いた。
そして、業者の方へ向き直った。
「あの、輸送ルートは正規の陸路とおっしゃいましたよね?」
「あ、ああ、そうだ! 山脈を越えるルートだ!」
「おかしいですね」
リディアの口調は丁寧だが、そこには逃げ道を塞ぐ冷徹な響きがあった。
「ここに繁殖しているカビはアスペルギルス・ハローフィルスの変種です。これは好塩菌といって、塩分濃度の高い環境を好みます。さらに言えば、この特定の胞子の形状は、南方の港町特有のものです」
彼女は顕微鏡から顔を上げ、淡々と事実を告げた。
「乾燥した山越えの陸路を通ってきた荷物に、南の海の湿ったカビが生え、しかも木箱の表面から潮風の塩分が検出される……。科学的にあり得ない現象です」
業者の顔から血の気が引いていく。
リディアは追い打ちをかけるように続けた。
「考えられる可能性は一つです。あなた方は、関税の高い陸路を避け、コストを浮かせるために、湿気の多い違法な海路を使って密輸同然に運んできた。そして、船底の劣悪な環境でカビの植民地となった荷物を、そのままここに搬入した」
「な、な……っ!」
「違いますか?」
小声だが、核心を突く問いかけ。
業者の男は口をパクパクさせたが、反論の言葉が出てこない。
カビという動かぬ証拠が、雄弁に嘘を語っていたからだ。
ジェラルドが近くの木箱を拳で叩いた。
その音は銃声のように響いた。
「……私の領地で、安っぽい小細工が通用すると思ったか?」
ジェラルドがゆっくりと業者に歩み寄る。
その巨大な影が男を飲み込む。
「た、確かに契約違反だ! 損害賠償を……、い、いや、許してくれぇ!」
「許しは神に乞え。私はただ、契約書に基づき、貴様たちの組織を取り潰しにするだけだ」
ジェラルドの冷酷な指示により、衛兵たちが業者を取り押さえた。
連行されていく男たちの叫び声が遠ざかると、倉庫には再び静寂が戻った。
「助かった、リディア」
ジェラルドがふぅ、と息を吐き、強張らせていた表情を緩めた。
「君の鑑定眼は、美術品だけでなく犯罪も見抜くようだな。……正直、業者の嘘は見抜けても、証拠がなくて攻めあぐねていた」
「お役に立てて光栄です。カビも、時には真実を語ってくれますから」
リディアは微笑んだ。
以前の彼女なら、男たちの剣幕に怯えて何も言えなかったかもしれない。
けれど今は、隣にこの絶対的な味方がいる。
それが彼女に勇気を与えていた。
「それにしても……、ジェラルド様があれほどお怒りになるとは思いませんでした。やはり、不正はお嫌いですか?」
「不正も嫌いだが、それ以上に腹が立ったのは……」
ジェラルドは視線を逸らし、ポリポリと頬の傷を掻いた。
「あいつらが運び込んだカビのせいで、君に不潔な空気を吸わせたことだ。気管支によくない」
「え……?」
予想外の理由に、リディアは瞬きをした。
領地の損害よりも、リディア自身の健康?
あまりの過保護ぶりに、胸の奥がくすぐったくなる。
「ふふっ……、ありがとうございます。ジェラルド様のあの迫力があれば、カビも逃げ出すかもしれませんね」
「……また顔の話か」
ジェラルドは苦虫を噛み潰したような顔になり、しかしどこか照れくさそうに鼻を鳴らした。
「私が笑顔を見せない理由を知っているか?」
「えっと、威厳を保つため……、でしょうか?」
「違う」
彼は大真面目な顔で、とんでもないことを言った。
「私が笑顔を見せると、赤子は泣き出し、老人は拝み出し、君は、顔の筋肉が痙攣したのかと心配して救急医を呼ぶだろう。……社会の平穏のために、自粛しているだけだ」
「……っ」
リディアは吹き出しそうになるのを必死で堪えた。
この人は、自分の笑顔を災害か何かだと思っているのだろうか。
「そんなこと、ありませんよ」
リディアはクスクスと笑いながら、彼を見上げた。
「ジェラルド様の笑顔は、きっととても……、安心すると思います。少なくとも、私は」
その言葉に、強面辺境伯は言葉を詰まらせ、耳まで真っ赤にしてそっぽを向いた。
「……口が上手くなったな。さあ、戻るぞ。カビ臭い場所に長居は無用だ」
スタスタと先に行ってしまう大きな背中を追いかけながら、リディアはこの辺境での生活が、日に日に愛おしくなっているのを感じていた。
カビだらけだった彼女の人生にも、今は爽やかな風が吹いている。
そこは、冬の長い辺境において生命線とも言える場所だ。
しかし今、その一角は葬式のような重苦しい空気に包まれていた。
「……説明しろ」
ジェラルドの低い声が、石造りの倉庫内に響く。
彼の前には、管理責任者と輸送業者の男たちが一列に並ばされ、処刑台の囚人のように震えていた。
開け放たれた木箱の中身は無残だった。
隣国から輸入した高級織物や、冬に備えた穀物の袋が、びっしりと青黒いカビに覆われている。
強烈な腐敗臭が鼻をつき、倉庫全体がカビの胞子で霞んでいるようにさえ見えた。
「も、申し訳ございません閣下! 湿気対策は万全でした! 換気も規定通り行っておりましたし、乾燥剤も……」
「ではなぜ、これらは腐っている? 自然発生したとでも言うのか?」
ジェラルドの眼光が鋭さを増す。
輸送業者の代表である小太りの男が、脂汗を拭いながら言い訳を始めた。
「こ、これは今年の雨が多かったせいでして……、あるいは、倉庫自体の老朽化が原因かと! 我々の輸送に不備はございません! 正規の陸路ルートで、厳重に運んでまいりました!」
責任を領地の設備になすりつけようとする業者に、ジェラルドのこめかみに青筋が浮かぶ。
その時、倉庫の入り口から遠慮がちな声がした。
「あの……、失礼いたします」
作業着姿のリディアが、顕微鏡と採取キットが入った鞄を抱えて入ってきた。
ジェラルドの表情が、一瞬だけ柔らかくなる。
「来たか、リディア。カビ臭い場所ですまないが、専門家の意見が必要だ」
「はい。お役に立てるなら」
リディアは眼鏡の位置を直すと、腐敗した木箱へと歩み寄った。
業者の男が「なんだこの小娘は」という視線を向けるが、ジェラルドの一睨みで縮み上がる。
リディアはピンセットでカビの一部を採取し、持参した携帯用顕微鏡のステージに乗せた。
美術品の修復において、カビ(菌類)との戦いは日常茶飯事だ。
キャンバスを食い荒らすカビ、紙を茶色く変色させるフォクシング。
それらの種類を特定し、適切な処置を施すのは、彼女にとって初歩的なスキルだった。
レンズを覗き込むリディアの瞳が、スッと細められる。
彼女はもう一度、今度は木箱の表面を指でなぞり、その感触を確かめた。
そして、少しだけ指先を舐めた。
「な、何をしている!」
「……しょっぱいです」
リディアはジェラルドの制止に構わず、静かに呟いた。
そして、業者の方へ向き直った。
「あの、輸送ルートは正規の陸路とおっしゃいましたよね?」
「あ、ああ、そうだ! 山脈を越えるルートだ!」
「おかしいですね」
リディアの口調は丁寧だが、そこには逃げ道を塞ぐ冷徹な響きがあった。
「ここに繁殖しているカビはアスペルギルス・ハローフィルスの変種です。これは好塩菌といって、塩分濃度の高い環境を好みます。さらに言えば、この特定の胞子の形状は、南方の港町特有のものです」
彼女は顕微鏡から顔を上げ、淡々と事実を告げた。
「乾燥した山越えの陸路を通ってきた荷物に、南の海の湿ったカビが生え、しかも木箱の表面から潮風の塩分が検出される……。科学的にあり得ない現象です」
業者の顔から血の気が引いていく。
リディアは追い打ちをかけるように続けた。
「考えられる可能性は一つです。あなた方は、関税の高い陸路を避け、コストを浮かせるために、湿気の多い違法な海路を使って密輸同然に運んできた。そして、船底の劣悪な環境でカビの植民地となった荷物を、そのままここに搬入した」
「な、な……っ!」
「違いますか?」
小声だが、核心を突く問いかけ。
業者の男は口をパクパクさせたが、反論の言葉が出てこない。
カビという動かぬ証拠が、雄弁に嘘を語っていたからだ。
ジェラルドが近くの木箱を拳で叩いた。
その音は銃声のように響いた。
「……私の領地で、安っぽい小細工が通用すると思ったか?」
ジェラルドがゆっくりと業者に歩み寄る。
その巨大な影が男を飲み込む。
「た、確かに契約違反だ! 損害賠償を……、い、いや、許してくれぇ!」
「許しは神に乞え。私はただ、契約書に基づき、貴様たちの組織を取り潰しにするだけだ」
ジェラルドの冷酷な指示により、衛兵たちが業者を取り押さえた。
連行されていく男たちの叫び声が遠ざかると、倉庫には再び静寂が戻った。
「助かった、リディア」
ジェラルドがふぅ、と息を吐き、強張らせていた表情を緩めた。
「君の鑑定眼は、美術品だけでなく犯罪も見抜くようだな。……正直、業者の嘘は見抜けても、証拠がなくて攻めあぐねていた」
「お役に立てて光栄です。カビも、時には真実を語ってくれますから」
リディアは微笑んだ。
以前の彼女なら、男たちの剣幕に怯えて何も言えなかったかもしれない。
けれど今は、隣にこの絶対的な味方がいる。
それが彼女に勇気を与えていた。
「それにしても……、ジェラルド様があれほどお怒りになるとは思いませんでした。やはり、不正はお嫌いですか?」
「不正も嫌いだが、それ以上に腹が立ったのは……」
ジェラルドは視線を逸らし、ポリポリと頬の傷を掻いた。
「あいつらが運び込んだカビのせいで、君に不潔な空気を吸わせたことだ。気管支によくない」
「え……?」
予想外の理由に、リディアは瞬きをした。
領地の損害よりも、リディア自身の健康?
あまりの過保護ぶりに、胸の奥がくすぐったくなる。
「ふふっ……、ありがとうございます。ジェラルド様のあの迫力があれば、カビも逃げ出すかもしれませんね」
「……また顔の話か」
ジェラルドは苦虫を噛み潰したような顔になり、しかしどこか照れくさそうに鼻を鳴らした。
「私が笑顔を見せない理由を知っているか?」
「えっと、威厳を保つため……、でしょうか?」
「違う」
彼は大真面目な顔で、とんでもないことを言った。
「私が笑顔を見せると、赤子は泣き出し、老人は拝み出し、君は、顔の筋肉が痙攣したのかと心配して救急医を呼ぶだろう。……社会の平穏のために、自粛しているだけだ」
「……っ」
リディアは吹き出しそうになるのを必死で堪えた。
この人は、自分の笑顔を災害か何かだと思っているのだろうか。
「そんなこと、ありませんよ」
リディアはクスクスと笑いながら、彼を見上げた。
「ジェラルド様の笑顔は、きっととても……、安心すると思います。少なくとも、私は」
その言葉に、強面辺境伯は言葉を詰まらせ、耳まで真っ赤にしてそっぽを向いた。
「……口が上手くなったな。さあ、戻るぞ。カビ臭い場所に長居は無用だ」
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