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第30話:決意
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数日後。
ヴィオラとブルーノを乗せた馬車は、王都へ向かう街道を疾走していた。
今回用意された馬車は、ヴィオラが徹底的にチューニングを施した特別仕様車だ。
車軸には炭素繊維補強、サスペンションには多層構造の衝撃吸収ゴム、そして車内の静音性は王家の馬車を遥かに凌ぐ。
だが、快適な乗り心地とは裏腹に、車内の空気は少し張り詰めていた。
王都へ近づくにつれ、ブルーノの口数が減っているのだ。
彼は窓の外を睨みつけながら、膝の上で拳を握りしめている。
(……閣下の脈拍数が平常時より上昇しています。交感神経優位の状態。これは怒りではなく警戒、……いえ、不安でしょうか?)
ヴィオラは対面に座るブルーノを観察した。
最強の辺境伯と恐れられる彼が、不安を感じている?
自分のことではない。
おそらく、ヴィオラが再び傷つけられることを懸念しているのだ。
「……閣下」
「ん? ああ、すまん。考え事をしていた」
ブルーノが我に返る。
ヴィオラは少し迷ってから、持参していたバスケットを開いた。
「糖分補給が必要です。脳の演算処理能力が低下していますよ」
差し出されたのは、ヴィオラが昨晩焼いたクッキーだった。
形は歪で、大きさも不揃いだが、素材には領地で採れた最高級の小麦とバターが使われている。
「……お前が作ったのか?」
「はい。配合比率は完璧ですが、成形プロセスにおいて熱可塑性の制御に失敗しました。味は保証しますが、外観検査は不合格品です」
ヴィオラが淡々と説明すると、ブルーノはふっと表情を緩めた。
彼は大きな手でクッキーを一つ摘み、口に運ぶ。
サクッ、という軽快な音。
「……美味い。甘さが控えめで、小麦の香りがする」
「それは良かったです。……リラックスしてください、閣下」
ヴィオラは自らの胸に手を当てた。
「今の私には、この地で実証されたデータがあります。そして何より、貴方が適正な評価を与えてくれました。……自己肯定感という名の保護コーティングは、十分に厚い状態です」
その言葉を聞いたブルーノは、ヴィオラの隣へと席を移動した。
馬車が揺れるタイミングで、自然と肩が触れ合う。
「……口先だけでなく、態度でも示しておこう」
ブルーノのゴツゴツとした手が、ヴィオラの手を包み込んだ。
彼の体温は高く、熱いほどだ。
ヴィオラの冷たい指先が、じんわりと温められていく。
「何があっても、俺が守る。王が相手だろうと、国が相手だろうとだ。……お前を傷つける奴は、俺が許さん」
その言葉は、誓いのように重く、そして優しかった。
ヴィオラとブルーノを乗せた馬車は、王都へ向かう街道を疾走していた。
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(……閣下の脈拍数が平常時より上昇しています。交感神経優位の状態。これは怒りではなく警戒、……いえ、不安でしょうか?)
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おそらく、ヴィオラが再び傷つけられることを懸念しているのだ。
「……閣下」
「ん? ああ、すまん。考え事をしていた」
ブルーノが我に返る。
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「……お前が作ったのか?」
「はい。配合比率は完璧ですが、成形プロセスにおいて熱可塑性の制御に失敗しました。味は保証しますが、外観検査は不合格品です」
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彼は大きな手でクッキーを一つ摘み、口に運ぶ。
サクッ、という軽快な音。
「……美味い。甘さが控えめで、小麦の香りがする」
「それは良かったです。……リラックスしてください、閣下」
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その言葉を聞いたブルーノは、ヴィオラの隣へと席を移動した。
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「……口先だけでなく、態度でも示しておこう」
ブルーノのゴツゴツとした手が、ヴィオラの手を包み込んだ。
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ヴィオラの冷たい指先が、じんわりと温められていく。
「何があっても、俺が守る。王が相手だろうと、国が相手だろうとだ。……お前を傷つける奴は、俺が許さん」
その言葉は、誓いのように重く、そして優しかった。
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