白い結婚だったはずなのに、少し糖度が高すぎる気がするのですが。~殿下が今更復縁を懇願してきましたが、もう遅いです~

水上

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第33話:愚か者たちの罵り合い

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「……これは破壊ではなく、単なる経年劣化とメンテナンス不足です。私が在籍中は、応力集中箇所に適切な補強材を充填し、定期的な締め直しを行っていました。私が解雇された後、その作業を誰が引き継いだのですか?」

 宰相が視線をジュリアンに向ける。
 ジュリアンは口ごもった。

「そ、それは……、新しい職人を雇った! だが、彼らは『ヴィオラ様のやり方はマニュアルにない』と言って、何もできなかったのだ! だから、貴様が悪い! マニュアルを残さずに去ったのは、職務怠慢だ!」

「マニュアルなら、全て工務局の書庫に残してあります。ファイル番号A-001からC-999まで。……まさか、一度も開いていないのですか?」

 シーン、と場が静まり返る。
 ジュリアンの顔が赤く染まった。

 読んでいないのだ。
 いや、読もうともしなかったのだ。

「う、嘘だ! そんなもの見ていない!」

「なら、今すぐ確認させればいいでしょう。……ですが、問題の本質はそこではありません」

 ヴィオラは一歩前に出た。
 ここからは反撃のターンだ。

「ジュリアン殿下。貴方は予算不足を理由に私の補修提案を却下し続けましたね? その予算は、一体どこへ消えたのですか?」

 ヴィオラの指摘に、ジュリアンがビクリと肩を震わせた。
 彼の視線が、無意識に隣のミシェルへと泳ぐ。

「そ、それは……」

「……まさか、ミシェル様のドレスや宝石、そして毎晩の夜会に消えたわけではないですよね? 王宮の維持管理費を、交際費に流用したなどと知れれば……」

 ヴィオラが冷ややかな視線を送ると、ジュリアンは耐え切れずに叫んだ。

「ち、違う! 私が使ったんじゃない! ミシェルだ! ミシェルが『もっと豪華にして』『新しいドレスが欲しい』とねだるから……、私は断れなかったんだ!」

 その瞬間、ミシェルの表情が凍りついた。

「はぁ? 何言ってるんですの、ジュリアン様!?」

 ミシェルは猫を被るのをやめ、素の金切り声を上げた。

「貴方言ったじゃない! 『王太子の権限でどうにでもなる』って! それに、貴方だって新しい馬車やら白馬やら、役に立たない骨董品を買い漁ってたじゃないの!」

「な、なんだと!? あれは王家の品格を保つために必要な投資だ! お前の無駄遣いと一緒にするな!」

「無駄遣いですって!? 私が綺麗にしてるのは貴方のためよ! なのに、ちっとも守ってくれないし、恥ばかりかかせるし……、この役立たず!」

「黙れ! この平民上がりが! お前ごときが王太子に口答えするな!」

 査問会場は、一瞬にして修羅場と化した。
 互いに指をさし合い、罵り合う二人。

 真実の愛と称え合っていたかつての姿はどこにもない。
 あるのは、責任の押し付け合いと、醜い自己保身だけだった。

 周囲の貴族たちはドン引きし、宰相は頭を抱えている。
 ブルーノは呆れたように鼻を鳴らした。

「……見苦しいな。これが真実の愛の成れの果てか」

 ヴィオラは、その光景を実験動物を見るような冷徹な眼差しで観察していた。

 そして、静かに口を開いた。
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