「妻ならわかってよ」浮気夫が、私の成果を愛人の手柄にしました。〜私なしでも事業が回ると思っているようなので、現実を見せて差し上げましょう~

水上

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第47話:勘違いしていた女の絶望

 アーサーが王都の裏路地の安宿で、クロエが残した香水の小瓶を握りしめながら慟哭していた頃。

 モンゴメリ公爵家から追放されたイザベラもまた、己の無知と虚栄心が招いた地獄の底でもがいていた。

 王都から馬車で三日も離れた、荒涼とした山間部に位置する厳格な修道院。
 そこは、貴族の令嬢としての罪を犯した者が送られる、事実上の終身刑務所だった。

「……こんなの、こんなの絶対に間違ってるわ! 私はお姫様なのよ! どうして私がこんなカビ臭い修道服を着て、床磨きなんてしなきゃならないの!」

 冷たい石造りの回廊で、イザベラは荒れた手で雑巾を握りしめ、ヒステリックに叫んでいた。

 かつては甘いピンクのドレスに身を包み、うるうるとしたアメジストの瞳で男たちを翻弄していた愛らしい童顔は、粗食と過酷な労働によって完全に削げ落ちていた。

 髪は艶を失い、無造作に短く切り揃えられている。

「静かにしなさい、イザベラ。ここは神聖な祈りの場です。あなたのその傲慢な口を慎まなければ、今日の食事は抜きにしますよ」

 修道院長の冷ややかな声が、回廊に響いた。

「っ……! お父様にお手紙を書くわ! 私をこんなところから出してくださいって! アーサー様だって、絶対に私を迎えに来てくださるはずよ!」

 イザベラは、現実を直視できず、まだ自分の特別な価値を信じて喚き散らした。

 しかし、修道院長は憐れむようなため息を吐いた。

「あなたのご実家であるモンゴメリ公爵家は、あなたが引き起こした毒水事件の莫大な慰謝料請求により、領地の半分を手放す事態に陥っています。あなたへの仕送りはおろか、手紙の受け取りすら拒否されていますよ。……そして、あのヴァレンティン伯爵も、全財産と身分を失い、今や王都の貧民街で日雇い労働をしているそうです。誰も、あなたを迎えに来る者などいません」

「なっ……、嘘よ! アーサー様が!? 公爵家が……!」

 イザベラの足から力が抜け、冷たい石の床にへたり込んだ。
 彼女の頭の中を占めていたのは、クロエの成果を奪い、称賛を浴びていた華やかな日々の幻影だった。

 クロエを惨めな敗北者と嘲笑い、自分がアーサーの隣で永遠に甘い蜜を吸い続けられると信じていた。

 しかし、その蜜はすべてクロエの才能から絞り出されたものであり、クロエがいなくなった途端、彼女の手元には自分自身の無能さしか残されていなかったのだ。

「……嫌。……嫌ぁぁぁっ! 私が何をしたっていうの! 私はただ、愛されたかっただけなのに……!」

 イザベラは、修道院の冷たい壁に頭を打ち付けながら絶叫した。
 しかし、彼女の泣き声は分厚い石壁に吸い込まれ、誰の同情も引き寄せることはなかった。

 他人の努力を泥棒のように盗み、それを自分の実力だと勘違いして他者を見下していた女に与えられた、永遠の孤独と労働の地獄だった。

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