ノー・リミット・パラダイス

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とんだ災難

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「知らない女の子に殺されかけた?」
 放課後、俺は真を誘ってファーストフード店に来ていた。
 勿論、夢の相談だ。

「う~ん。雅さんも見たんなら、夕君の屈折した性的欲望が見せた妄想じゃなさそうだね。その子は」
 リスのようにポテトをつまみながら。
 蔑まれたと感じるのは俺の気のせいだろうか。
「ってか、また女の子の話? いくら思春期だからといっても酷くない? お猿さんなの?」
 気のせいじゃない!?
「いや、今回はあっちが勝手に出てきたんだよ。俺は何も考えちゃいなかった。それに、二回とも俺を殺そうとしたんだぞ? 気になって当然じゃないか?」
 ただ夢の中で会っただけなら、そこまで気にも留めないだろう。
 だが、明確な敵意を抱かれていると知ったなら別だ。
 毎回出会いがしらに殺されていたら、おちおち夢も見れやしない。

「――やっぱりさ、昨日も言ったけど、考えても仕方ないんじゃない? 夢の話なんだし」
「そ、そりゃそうだけどよ。でも――」
「夕君。夢は結局夢なんだよ」
 真剣な表情で、どこか哀れみすら浮かべて、食い下がる俺を諭す。
「現実を見ようよ」
 友の言葉は何よりも正論で、
「そう――だな……」
 苛立つ自分が、少し情けなくも思えた。



 ファーストフード店を出て、さて帰ろうかと言う時だった。
「お前、二年の夜見だな?」
 立ちふさがるように俺に声をかけたのは、夢学の制服に身を包んだ体格の良い男だった。
 胸についたエンブレムの色から、三年生である事が伺える。
 その後ろにも、同じ夢学の生徒が五人。
 表情から察するに、穏やかならぬ雰囲気である事は瞬時に理解した。

「そうですけど、何か用っすか? 先輩」
「ここじゃ目立つから、ちょっと裏に来てもらおうか」
 着いて来いと言わんばかりに、男達が歩き出す。
「ゆ、夕君……」
 真が不安げな顔を浮かべて、俺の袖をギュッと掴む。
「心配すんな」
 これが見るからにドヤンキーだったら、回れ右で猛ダッシュも厭わないだろう。
 だが、そもそもの男子比率が少ない上に、曲がりなりにも進学校の夢学にそんな人種は存在しない。目の前の男達も外見は普通の学生だ。
 それに、上級生に睨まれるほど目立った行動はしていない。
 大人しく、俺達はそいつらの後に続いた。

 着いた先は、店舗の搬入口のような、表通りからは完全な死角になっているスペースだった。
 流石に若干の緊張を覚える。
「俺は空手部の轟だ」
 開口一番、体格の良い男が自己紹介をした。
 何を言われるのかと身構えていた俺は、肩透かしを食らった気分で「あ。どもっす……」と返す。
 轟と名乗ったその男は、腕組みをしながら「うむ」と頷いて、本題を口にした。
「お前、雅蝶良さんとはどんな関係だ?」

 思わず「は?」と声が出た。
 どうしてここで雅の名前が出るのか。
「別に、ただのクラスメイトですけど?」
 事実を述べる。だが、男の表情は変わらない。
 心なしか、険しくなった気もする。

「ただのクラスメイトだと? お前と蝶良さんが一緒に登校していると言う目撃証言が入っているんだ」
 男がそういうと、後ろの奴らもそうだそうだと口を揃えた。
 ああ。何となく分かったぞ。
 こいつらは雅に気がある連中の集まり。
 俺が雅と何かあるんじゃないかと勘ぐっている訳だ。
 ったく、めんどくせぇな。

「あれはアイツが勝手に来ただけで、何でもないっすよ」
「アイツだと!? おい二年! 何だその馴れ馴れしい呼び方は!」
 逆鱗に触れたのか、轟が俺の胸倉を掴んだ。
 なるほど、空手部と言うだけあって中々力は強い。
「お前が雅さんの弱みに付け込んで、色々と強要させているって噂はどうなんだ?」
 おいおい。噂にしては悪意がありすぎだろ。
 ってか何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ。イラつくな。

「くだらねぇ。気になるんなら本人に聞けばいいじゃねーか」
「何だと!? 二年のくせに生意気なんだよ!」
 殴られる。
 そう思った瞬間、俺の胸倉を掴む轟の手に、真が覆いかぶさった。
「先輩止めてください! 夕君は何もしてませんよ!」
「うるせぇ! カマ野郎はすっこんでろ!」
「あっ!」
 空いていた右手で真を突き飛ばす。
 運動部、それも空手で鍛えたその力は、真の身体を易々と吹き飛ばした。
 俺の理性も――吹っ飛んだ。
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