異世界で名を馳せよう!?

Reみづき

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今 すべき事

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 謎の男によって突如異世界に転移させられた祐介は今、途方に暮れていた。

それは、数分前に遡る

転移させられた魔方陣から生み出される
莫大な光量に包まれていた祐介は、ここで初めて異世界の空気を吸った。
次いで時間経過とともにまぶた越しでも眩しいと伝わるような光がだんだんと消えて行った。
恐る恐る目を開けた祐介の目にまず入ったのは見渡す限りの大草原だった。
今の日本では、少なくとも祐介出身地である東京ではとても目にかかれないような広大な青空と地平線を見て、改めて祐介はここがあの男の言う通り異世界だという事に気付かされた。
繰り返すが祐介は異世界に飛ばされた。
ただし、付け加えるとすれば
・・・・祐介は、椅子に縛り付けられたまま、異世界に飛ばされた。

「フッッザケンナァァァ!!!!」
雄大な大草原に祐介の怒声がどこまでも届いた。


「おいぃ!!何で縄ほどかずにこんなとこ飛ばすの!?第一何なんだよ!俺は鍵探してただけだぞ!それがぁ!何かぁ!
いつの間にかどっかの部屋で椅子に縛り付けられててさぁ!何も言えないまま見知らぬオッさんにわけわかんねぇままここに飛ばされて挙げ句の果てには見知らぬ土地で野ざらしだよ!!あのオッさんなんだ!?鬼の末裔か何かか!?」

巻き付けられた縄を何とかしようとグッグッと力を入れてみる。
だが、依然縄は祐介の体を離れない。
数分ほど踏ん張った結果、「こりゃ無理だ。」
という結論に至った。
祐介はどうしようもないままただただ天を仰ぐしかなかった。

「クッソ、マジかよ。これはさすがに想定外過ぎるぞ。つーか異世界って事はあれか?スライムとかゴブリンとか危険生物がひしめくトンデモ世界ってことか?
なぁ、これ縛り付ける必要性あった?
俺頭ボーッとしてたし別に逃げる事はなかったと思うよ?そしてさ、何でマンション?死後の世界マンションってどんだけ近代化の波が押し寄せてるの?家具まであったよ。何?もしかしてあのオッさんの自宅?バカッかぁ?随分といいとこに住んでますねぇ!俺をここに置いといてぇ!!」

などとギャンギャン喚いているとブチッっと何かが、というより縄が千切れる音がした。縄による緊縛が無くなると自由になった祐介は改めて、異世界の地に立った。
ふと、縄の切断面が目に入るとそれは実に滑らかで、ナイフか何かで切られたようだった。
大方、男が自分の不手際な気付いて慌てて解いたのだろう。
硬くなった体をほぐして、あたりをグルッと見回す。
360度、どこを見ても遥かな地平線しか見えない光景に祐介は頭をひねった。
「さて、どこに行きゃいいんだろうなぁ」
願わくは、男が現れて近くの人里にでも
連れて行ってくれはしないだろうか?
という打算を含んだ独り言だったが思惑外れ、誰からの返答も返ってこなかった。
祐介は肩をすくめると、何処とも知れない草原を一歩踏み出した。
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