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高校生小考録 珈琲考
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どこかの高校生たちのなんということもない、話。本当になんということもない日常。
場所:教室
時 :放課後
直人:奈良直人(なら なおと)
熊吾:永谷熊吾(ながや くまご)
博輝:山西博輝(やまにし ひろき)
「開幕」
直人:熊吾、博輝、君たちは珈琲というものを飲んだことはあるかい。
熊吾:おいおい、こちとら伊達に十七年も生きちゃあいねぇよ。珈琲なんざ毎日飲んでらぁ。
博輝:え、熊さんすごいね。俺、何回かしかないよ。それに、苦くて飲み切れたこと無いし。
熊吾:その苦いてぇのがおつなところよ。まだおめぇには早すぎるってことさ。
直人:僕はね、実はこれまでに一度も飲んだことがないんだ。
(熊吾、博輝、驚く)
熊吾:一度も? こりゃおでれぇた。そんな高校生がいるもんなんだな。
直人:うん。だから僕も一度飲んでおこうと思ってね、家から持ってきたんだよ。
(直人、鞄から缶珈琲を取り出す)
博輝:あ、B〇SSの微糖だ!
熊吾:びとう? あ、そりゃおめぇ!
直人:ん、これではいけなかったかな。
博輝:いや、そんなことは無いけど、初めてで微糖は結構ハードル高いんじゃない。苦いよ、それ。
直人:そうだったのか。しかし、持ってきて仕舞ったものは仕方ない。ひとまず飲んでみるとするよ。もし、僕が飲み切れなかったら、君、飲んでくれるかい。
博輝:うーん。加糖なら何とか飲めるんだけどな。微糖はもしかしたら飲めないかも。あ、でも熊さんがいるじゃん。
熊吾:いや、その、それがよ……。
直人:そうだ、君は確か珈琲を毎日飲むんだったね。
熊吾:いや……飲むには飲むけどよ……。
博輝:もしかして、熊さん飲んだこと無いの?
熊吾:馬鹿言っちゃあいけねぇ。毎日飲んでるぜ。その……湯屋でな。
博輝:熊さん、湯屋でって……
直人:熊吾、それはもしかして珈琲牛乳ではないのか。
熊吾:へへ、その通りで。面目ねえ、それより苦いのはどうも飲めねぇのよ。
博輝:俺だって珈琲牛乳くらいは飲めるよ! さっきは馬鹿にされたけど、俺の方が珈琲飲めるってことじゃん。
熊吾:面目ねえ。
直人:まあまあ、博輝、その辺で許してやって呉れ。僕、一寸、飲んでみるよ。
博輝:まずはちょっとだけにしなよ。
直人:分かった。
(直人、珈琲を開栓。飲む)
直人:バフン!!
熊吾:馬糞?
直人:嗚呼、まづい! なんだこれは、世の人々はこんなものを飲んでいるというのか! 嗚呼、まづい。
博輝:あー、やっぱ苦かった? まあ、初めてで微糖はそりゃ苦いよ。
直人:済まないが、博輝、これを飲んで仕舞ってくれ、僕はもう、止すよ。
博輝:まあ、良いけど…… うわ! 直人が吹き出したから飲み口べちゃべちゃじゃん。
直人:済まない。
博輝:あ、そうだ、熊さん先飲む?
熊吾:ごめんこうむりやしょう。おめぇ、先に飲みねぇ、それでも残ったら俺が飲むよ。
博輝:じゃあ、それでいいや。
(博輝、飲む)
博輝:バフン!!
熊吾:馬糞?
博輝:びっくりした、こんなに苦かったっけ、ってか、まずいねこれ。なんか錆みたいな味する。
直人:君でも駄目だったか。熊吾、もう君しかいない。
熊吾:おいおい、随分と缶がベタベタしてるね。仕方ねぇ、こちとら江戸っ子でぇ!
(熊吾、飲む)
熊吾:馬糞!! 何だこりゃ。おいおい、水にといた馬糞だって、もうちょいとましな味だぜ。
直人:やはり駄目か、恐ろしいな珈琲というものは。
熊吾:それだけじゃねえ、なんかこう、納豆みてぇな味だ。
博輝:納豆、確かにそんな味だった……。ねえ、直人、この缶珈琲、どこから持ってきた?
直人:先に家の古い納屋を掃除してたら出てきたんだ。まあ、缶に入っているし、差支えないだろう。
熊吾:おいおい、差支え大ありだよ、するとてめぇ、俺に腐れ豆の汁飲ませやがったな
直人:腐っていたのか……まづい筈だ。
博輝:俺、なんで気が付かなかったんだろう。
(沈黙)
直人:珈琲は捨てようか。
博輝:うん、そうだね。床も、拭いた方がいいね……。
直人:僕たちは……何をしていたんだろうか。
博輝:うん。
(博輝、缶珈琲を捨てに行こうとする)
熊吾:あ! おいおい! ちょいと待ちねぇ! もったいねぇよそりゃあ。
直人:熊吾、飲むんじゃない。気が触れたか!
熊吾:そうじゃねぇ、このままじゃいけねえから、冷蔵庫に入れとけ。
博輝:そんなことしてどうするのさ。
熊吾:缶(燗)が駄目でも冷やなら飲めるかもしれねえ。
「閉幕」
場所:教室
時 :放課後
直人:奈良直人(なら なおと)
熊吾:永谷熊吾(ながや くまご)
博輝:山西博輝(やまにし ひろき)
「開幕」
直人:熊吾、博輝、君たちは珈琲というものを飲んだことはあるかい。
熊吾:おいおい、こちとら伊達に十七年も生きちゃあいねぇよ。珈琲なんざ毎日飲んでらぁ。
博輝:え、熊さんすごいね。俺、何回かしかないよ。それに、苦くて飲み切れたこと無いし。
熊吾:その苦いてぇのがおつなところよ。まだおめぇには早すぎるってことさ。
直人:僕はね、実はこれまでに一度も飲んだことがないんだ。
(熊吾、博輝、驚く)
熊吾:一度も? こりゃおでれぇた。そんな高校生がいるもんなんだな。
直人:うん。だから僕も一度飲んでおこうと思ってね、家から持ってきたんだよ。
(直人、鞄から缶珈琲を取り出す)
博輝:あ、B〇SSの微糖だ!
熊吾:びとう? あ、そりゃおめぇ!
直人:ん、これではいけなかったかな。
博輝:いや、そんなことは無いけど、初めてで微糖は結構ハードル高いんじゃない。苦いよ、それ。
直人:そうだったのか。しかし、持ってきて仕舞ったものは仕方ない。ひとまず飲んでみるとするよ。もし、僕が飲み切れなかったら、君、飲んでくれるかい。
博輝:うーん。加糖なら何とか飲めるんだけどな。微糖はもしかしたら飲めないかも。あ、でも熊さんがいるじゃん。
熊吾:いや、その、それがよ……。
直人:そうだ、君は確か珈琲を毎日飲むんだったね。
熊吾:いや……飲むには飲むけどよ……。
博輝:もしかして、熊さん飲んだこと無いの?
熊吾:馬鹿言っちゃあいけねぇ。毎日飲んでるぜ。その……湯屋でな。
博輝:熊さん、湯屋でって……
直人:熊吾、それはもしかして珈琲牛乳ではないのか。
熊吾:へへ、その通りで。面目ねえ、それより苦いのはどうも飲めねぇのよ。
博輝:俺だって珈琲牛乳くらいは飲めるよ! さっきは馬鹿にされたけど、俺の方が珈琲飲めるってことじゃん。
熊吾:面目ねえ。
直人:まあまあ、博輝、その辺で許してやって呉れ。僕、一寸、飲んでみるよ。
博輝:まずはちょっとだけにしなよ。
直人:分かった。
(直人、珈琲を開栓。飲む)
直人:バフン!!
熊吾:馬糞?
直人:嗚呼、まづい! なんだこれは、世の人々はこんなものを飲んでいるというのか! 嗚呼、まづい。
博輝:あー、やっぱ苦かった? まあ、初めてで微糖はそりゃ苦いよ。
直人:済まないが、博輝、これを飲んで仕舞ってくれ、僕はもう、止すよ。
博輝:まあ、良いけど…… うわ! 直人が吹き出したから飲み口べちゃべちゃじゃん。
直人:済まない。
博輝:あ、そうだ、熊さん先飲む?
熊吾:ごめんこうむりやしょう。おめぇ、先に飲みねぇ、それでも残ったら俺が飲むよ。
博輝:じゃあ、それでいいや。
(博輝、飲む)
博輝:バフン!!
熊吾:馬糞?
博輝:びっくりした、こんなに苦かったっけ、ってか、まずいねこれ。なんか錆みたいな味する。
直人:君でも駄目だったか。熊吾、もう君しかいない。
熊吾:おいおい、随分と缶がベタベタしてるね。仕方ねぇ、こちとら江戸っ子でぇ!
(熊吾、飲む)
熊吾:馬糞!! 何だこりゃ。おいおい、水にといた馬糞だって、もうちょいとましな味だぜ。
直人:やはり駄目か、恐ろしいな珈琲というものは。
熊吾:それだけじゃねえ、なんかこう、納豆みてぇな味だ。
博輝:納豆、確かにそんな味だった……。ねえ、直人、この缶珈琲、どこから持ってきた?
直人:先に家の古い納屋を掃除してたら出てきたんだ。まあ、缶に入っているし、差支えないだろう。
熊吾:おいおい、差支え大ありだよ、するとてめぇ、俺に腐れ豆の汁飲ませやがったな
直人:腐っていたのか……まづい筈だ。
博輝:俺、なんで気が付かなかったんだろう。
(沈黙)
直人:珈琲は捨てようか。
博輝:うん、そうだね。床も、拭いた方がいいね……。
直人:僕たちは……何をしていたんだろうか。
博輝:うん。
(博輝、缶珈琲を捨てに行こうとする)
熊吾:あ! おいおい! ちょいと待ちねぇ! もったいねぇよそりゃあ。
直人:熊吾、飲むんじゃない。気が触れたか!
熊吾:そうじゃねぇ、このままじゃいけねえから、冷蔵庫に入れとけ。
博輝:そんなことしてどうするのさ。
熊吾:缶(燗)が駄目でも冷やなら飲めるかもしれねえ。
「閉幕」
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