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第1章 旅立ちと怒涛の出会いは濃い始まり?編

3.スキルを選んでいざ異世界へ!

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「これでお願いします」
時間を掛けてスキルを選び終えた鈴霞は、リーシアへそっとタブレットを差し出した。
「鈴霞さん……これだけで良いのですか?」
リーシアは渡されたタブレットを覗き込み、いくつかの項目を見てから鈴霞へ問いかけた。
「はい。記憶が残って地球で培ったスキル等をつけて貰えるなら、特に必要ないかな、と」
にこやかに答える鈴霞を見て、リーシアが頷いた。
鈴霞が選んだスキルは、『鑑定』と『練気』。魔法属性は『火』と『時空』と『聖』。
「そうですか……分かりました。では、スキル等を付与致しますので『ステータス』と言ってください」

「はい。『ステータス』」

言葉と同時に半透明のウィンドウが眼前に表れた。



名前:遠宮鈴霞(トオミヤ リンカ)
性別:女
種族:人族
年齢:ー
LV:ー
HP:ー
MP:ー
職業:ー
魔法属性:ー

スキル:刀剣術  武術 家事

称号    加護
無し

「このステータスパネルは、これから降りる世界で必要になります。心で『ステータス』と念じれば、他人にステータスが見えることは有りません。……では、付与していきますのでパネルを閉じてください。─────終わりました」
鈴霞がパネルを閉じて、僅か数秒。

「えっ?早くないですか⁉」

「私も一応、神ですから。付与後のステータスは森に降りてから確認して下さい。今から鈴霞さんの体となる器の方をお渡しします。魂の定着を促すために現在の姿を球体へ戻しますので、目を閉じて下さい」
「……はい」
鈴霞が静かに目を閉じたのを確認すると、リーシアは鈴霞を光の球体へ戻す。
ゆらり……と空間が揺れて鈴霞の新たな体になる少女が床へ横たえられる。
鈴霞の魂を、リーシアがそっと自らの手で包み込み、少女の肉体の心臓辺りに融かすように沈めた。

「───目を開けて良いですよ」

    リーシアの言葉を聞き、そっと目を開ける。覗き込んでいるリーシアと目が合った。
「どこかおかしな所が無いか確認してから、地上へ送ります。体を動かしてみて下さい。声は鈴霞さんに似たような感じにしてあります。動きに違和感があったら教えて下さいね。それと、こちらに鏡を用意しました。姿も確認して下さい。気に入って頂けると良いのですけれど」
リーシアの言葉を聞きながら、鈴霞が体を動かしてみて、鏡を見る。
驚きと共に、瞬時に固まった。

   それもその筈、今の鈴霞の鏡に映る姿は、両サイドに少し髪を垂らし、緩く肩甲骨辺りで1つに纏められている、さらりとした腰まである長いストレートの艶やかな黒髪。紅い蝶の髪飾りが綺麗だ。

そして、色白の肌に少し垂れ気味のくりっとした、睫毛の長い綺麗な青みがかった黒い瞳。ほんのり桜色の頬に、赤いぷっくりとした小ぶりな唇。小顔にバランスよく整った顔立ちは、以前の鈴霞に全く似ていない。

次に服装。白いシンプルなパンプスに、袖とスカート部分の裾に花模様の白い刺繍が細かく入った淡いグリーンの膝上のワンピース。
形の良い胸の下辺りに結ばれているリボンから裾にかけてふんわりとしている。以前の自分に一切似ていない美少女っぷりには驚きっぱなしだ。
「うわぁ……。可愛すぎる!足が長い!スタイル抜群!更にこれ、若返ってません?」
鈴霞はクルリと1回転してみる。体が軽い。スカートがふわりと揺れる。
「体と魂を馴染ませる為に適した年齢の体型にしたのです。年齢に応じてある程度成長もしますから、私の世界の色んな場所を見て回ってください。そのワンピースは普段用として使って下さいね」
他にもお洋服渡しますからと、ニコリと笑うリーシアに鈴霞が静かにお辞儀をした。
「色々と有り難うございます」
深々と頭を下げる鈴霞に、リーシアは慌てる。
「いいえ!こちらの責任ですので、気になさらないでください‼そ、それよりも体に違和感は有りませんか?」
リーシアが心配そうに鈴霞を見ると、鈴霞はもう一度体を動かしてみる。

「大丈夫です。体が軽くて動かしやすいです」

鈴霞が微笑むと、リーシアが嬉しそうに笑って頷いた。

「良かったです。では、森へ送りますね。これから色んな事を経験して楽しんで下さい。良い異世界生活を」

いつも見守っていますよ、とリーシアの言葉と共に、鈴霞の視界が光で覆われる。
鈴霞はリーシアに向けて手を振り、リーシアは微笑んで頷いた。
一層輝きが増し、光が収まったときには鈴霞の姿は消えていた。






「────行ったかの?」

リーシアの側に、いつの間にか一人の老人───ラムネアの姿があった。

「───はい。って言うか、あんな喋り方は肩が凝りますぅ!ラムネア様‼」

うーんと伸びをしながら、ラムネアの方に向くリーシアに、ラムネアが苦笑で返す。

「ふぉっふぉっ。まぁ、そう言うでない。あんまりフレンドリーに話すと、娘も疑り深くなるじゃろうと思っての判断じゃ」

「そうなんですけどぉ~……ちょっと不安なので、色々とサービスしてしまいました……」
項垂れるリーシアの頭を、創世神が優しく撫でた。
「ふむ……そうかそうか。なぁに、大丈夫じゃ。あの娘の年齢をわざわざ15歳にしたんじゃろ?容姿が変わっていれば、あやつらにそう簡単には見付からんですむじゃろう。異世界アークスライドに、以前召喚された勇者たちの100年目になるように細工して送ったしの」

「そうですけどぉ~。……ん?召喚の勇者たち?…………あっ!と言うことは」
リーシアが納得顔になる。
「うむ。異世界人は魔力が多いから長生きじゃからのぅ。まぁ、気付けばあやつらも焦るかも知れんの。まさか⁉の展開じゃ。あやつらが無意識領域で引っ張った感じだったからのう。余程、会いたいんじゃろう。凄いものじゃ。まぁ、あの娘にはワシの加護まで付けたしの。そう簡単には見付からんし、捕まるようなことはさせんよ」

「創世神様の加護付けちゃったんですか⁉」

驚いてリーシアが叫ぶ。
好好爺の顔で創世神は──────

「うむ、可愛いからの。娘が強くなれば簡単に手出し出来んじゃろ。この娘が転生してきたとなると、どういうリアクションをするか。さて、見付けるまで何年かかるかの?見つかる前に娘に彼氏が出来たらそれも面白いのう。これからこの世界を覗くのが楽しみじゃて」
ふぉっふぉっと笑いながら顎髭を撫でる創世神を見てリーシアは溜め息をつき────

「鈴霞さん……頑張って下さいぃ……」

項垂れて溜め息を吐き、リーシアは鈴霞を見送るのだった。









    
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