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第6章 エターニャ神皇国編

守り護れず

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 「ふぅ~…緊張するなぁ…イメージだ、イメージ」
 
 刀を天に向け深呼吸をしたセナが放出する力をイメージし魔力・燐気・龍気を全身に巡らせるとそれに合わせる様にグラニールも全身にをまとわせた。

 「いくよ!グラニール!」

 「グルワァァァァァ!!」

 「雷霆!!!!」

 刀に雷属性にしたすべての力を込めセナが空へ放出した。

 「合図だ!全員開始してください!」

 「ホントに見えた!セナ様すっご!」

 「あんなの食らったらと思うと…」

 「さぁ!合図があがりました!やりましょう!!」

 セナの合図を見た各地に配置されていたメンバーがそれぞれの感想を口にしながら立札を立てて回りセナの合図をみて混乱する人々に聖都で起こっていることを説明し始めた。

 「おいおい…マジかよ…」

 「流石の私もここまでとは…」

 「…かなり大げさな予想をしてたんだけど…やはりそれを上回るのね…」

 聖都で見ていたエイケン、サイ、リレイが空を見上げ口を開け驚きとあきれが混じったような複雑な心境を吐露した。

 「あーっはっはっはっは!セナ君最高!」

 「あんなもの…向けられたらどうしろと…」

 「どうするもこうするも…すべて間に合いませんよ…」

 「ひぃ…」

 腹を抱え笑い焦げるアディオンをよそにレオとメイが顔を蒼くし、ペドロは失神寸前だった。

 「セナ様…恐ろしいですわ…」

 「あんな力を使っちゃって…セナとグラニール大丈夫かな…」

 「化け物め…」

 「すごい…すべてを浄化する神の雷みたい…」

 セナの全力をみたカトリーヌとアリア、シャドウとコルネがそれぞれつぶやいた。

 「ぐぎぎぎぎぎぃ……もう限界だ…」

 『セ、セナ様もうよろしいかと…』

 『わがりまじだぁ…』

 「はぁはぁはぁ…うまくやれたかな…」

 全力を出し切ったセナが意識を失いグラニールはなんとか墜落せずゆっくり着地すると倒れる様に眠りに着いた。

 「グラニール殿の周りに結界を!セナ様をお運びいたす!!」

 「準備はできておりますわ!」

 控えていたヤオとタオが迅速に動き始めた。

 「では私はアディオン殿の元へセナ様をお連れ致しまする」

 「私はここでグラニール殿の様子をみながらメディーの到着を待ちますわ!」

 セナを背負いヤオが燐気をまとい全速力で駆け出した。

 「ペドロ教皇代理の言葉に不満あるものは余の前にくるがいい!」

 内心セナの技を見て度肝を抜かれていたゲオルグがそれを悟られることなく威風堂々と告げた。

 その後、小さな混乱がいくつかあったが暴動などおこらず、シルティア各地でもセナの雷をみた人々がリネアの力だと知らされ大人しくなった。

 =====================================

 「さて第一段階無事に終わったね」

 「ここからね」

 「近々、リネアやジルネイからも兵がくるそれまで踏ん張るしかあるまい」

 「ふぅ~緊張して死にそうでしたよ…」

 大聖堂にある教皇代理室でそれぞれが深く息を吐きとりあえず無事に告知できたことに安堵の息を吐いた。

 「ガラム様!おやめください!!」

 「うるさいっ!あのクズが何かこそこそやっていたと思えば!」

 バンと勢いよくドアが開けられると顔を真っ赤にした小太りの男が息荒く現れた。

 「おい!ペドロどういうことだっ!!貴様われらを裏切るのかっ!」

 「ガラム大司祭殿、来賓の前です失礼ですよ」

 深いため息のあと、冷たい目で見ながらペドロが言うとガラムはさらに顔を赤くし今にも掴みかかろうとした。

 「貴様ぁ!この売国奴がっ!」

 「失礼な…アルドラの手先になりさがったあなたには言われたくありませんよ」

 「なんだとっ!私が教皇になったら白紙に戻し貴様を処刑してやる!」

 「先ほどの話を聞かなかったんですか?あなたはもはや教皇候補で今はただの一介の大司祭です」

 「そんなもの無効だ!」

 「3国の代表もお聞きになられそれにすでにシルティア全土へ知らせておりますよ?あぁそれと一つ間違ってました」

 「なにをだ!」

 「あなたは一介の大司祭ではなくアルドラの手先となりシルティアを混乱させた容疑者です」

 ペドロがそういうと、神官騎士の格好をした帝国の兵が数人あらわれガラムを取り押さえた。

 「貴様!」

 「往生際がわるいねぇ君」

 「うるさいっ!童が!部外者が口出すな!」

 「ん゛?ボクは大人だけど?」

 「どこがだ!そんな貧相な体の大人などいるわけないだろうがっ!」

 「ふむふむ…」

 「おちつけアディオン、所詮馬鹿の言葉だ、事実だとしても取り乱すほどでもあるまい」

 「なにを小童どうしで慰めあってるんだ!いい加減わたしを放せ!無礼者どもが!」 

 「ほぅ?」

 「彼は死刑でいいね」

 「うむ」

 どす黒い笑顔をうかべアディオンとサイが頷きあった。

 「アディオン殿!セナ様をお連れ致した」

 「ぐはっ!」

 「ん!さすが早いね!どれどれそこのソファーに寝かせてくれるかい?」

 ゲオルグやレオ、エイケンが顔を蒼くする中、ガラムを吹き飛ばしヤオがセナを背負ってあらわれた。

 「どうですか?」

 「ふむ。全力をだして枯渇してるね、けど驚異的なスピードで回復していってるようだから、とりあえずボクの魔力と君の燐気だけ分け与えてあげれば目が覚めそうだね」

 ヤオの問いにアディオンが答え右手をアディオン、左手をヤオが握りセナへと力を流し込んだ。

 「う…うぅ…」

 「セナ様!」

 「セナ!」

 力をわけあたえられるとすぐにセナが目を覚まし始め、カトリーヌとアリアが声をかけた。

 「セナ様ご気分は」

 「まだくらくらしますね…それで成功したんですか?」

 ゆっくり体を起こしたセナが心配するヤオに不安げに尋ねた。

 「安心せよ、セナ殿のおかげで第一段階は成功だ」

 「ほっ…よかったぁ」

 ゲオルグの言葉にセナが安堵の息を吐いた。

 「こらっ!ぐはっ!!」

 全員がセナの様子を見て朗らかに笑みをうかべていると、突然神官騎士が倒れ見るとガラムが怒り狂いながら立ち上がった。

 「貴様ら…どこまでもコケにしおって」

 「ガラム殿それいじょう罪をかさねないほうが」

 「うるさい!」

 ペドロの言葉に激高したガラムが力任せに拘束されていたロープを引きちぎった。

 「どこにそんな力が!」

 「こうなっては向こうに知られてもされ、こちらにいても極刑…かくなる上は…」

 「ガラム殿なにを!それはなんですかっ!?」

 気が狂ったかのようにガラムが大声をあげ懐から緑色に輝く水晶のようなものをとりだした。

 「ふははははっ!こうなったら聖都ごと吹き飛ばし全員道連れだぁぁ!!」

 「なっ!?」

 「ぐっ!近づけん!」

 「ふははははっ!無駄だ無駄ぁ!これはアルドラが独自に開発した禁呪により作られたものだっ!魔法陣の点滅が早まっていき点滅をやめた時、ここら一帯をすべて吹き飛ばすだろう!!あーっはっはっはっは!!」

 床に投げつけると球の周りに魔法陣のようなものが浮き上がり激しく点滅を開始し危険を察知したサイが手を伸ばしたが魔法陣にはじかれた。

 「ほーらぁ!もうすぐだ!!ぐっひっひっひっひ!」

 「くっそ!なんだこれ!剣がはじかれちまう!」

 「リレイ!」

 「無理よ!はじめてみたわ!」

 「え?」

 焦る全員をよそめにセナの手を握っていたアリアが驚きの声を上げた。

 「セナ!」

 「セナ様そんなお身体でなにを!」

 「皆さんはできるだけ逃げてください!爆発は僕がおさえてみせます!」

 「今の君じゃまだ無理だ!」

 「やれるだけやりますから!皆をお願いします!」

 「セナ様!」

 「絶対隔離壁!」

 「セナ様!!!」

 セナが地面に手をつけ呪術や錬金術に魔力と龍気、燐気をすべてつぎ込むと、球を魔法陣ごと覆うドーム状のものができあがりセナも中に入ってしまった。

 「ヤオ!念話だ!」

 「無理にございます!あの壁はすべてを遮るものゆえ…」

 「ふはは!無駄だ!そんな小さなもので抑えきれるものではない…わ?!」

 「うるせぇよ!」

 力なく地面に手をついたヤオを指さし笑い飛ばしていたガラムの首がエイケンの見えない太刀筋により切り飛ばされた。

 「おい!全員退避するぞ!できるかぎりの住民もにがせ!」

 「エイケン様!でもセナが!」

 「セナの心意気を無駄にすんな!」

 エイケンが歯を食いしばりながら指示をだした。

 「そうだな!急げ!ペドロは兵に民の避難を指示しろ!」

 サイが我に返ると声をあげ、それにあてられたかのように全員が急いで部屋からでた。

 「ボクは残るよ!」

 「私もです」

 アディオンとヤオはその場から動かずリレイに伝えた。

 「わかったわ…二人ともセナ様をお願い!私は必ず全員を救って見せるわ!」

 「任せてよボクはセナ君の主治医だからね」

 「従者として主が命をかえたのならば私もかけねばなりませぬゆえ、お任せください」

 リレイの言葉にアディオンとヤオが答えた。

 「崩落にきをつけなきゃならないね」

 「セナ様のことですから床を含め囲ったと思いますが…吹き飛べば同じにございます」

 「あははははっ!たしかにね!」

 ふっと笑顔を浮かべいったヤオの言葉にアディオンが一瞬目を丸くして驚いた後、笑顔を浮かべて答えた。

 「きたっ!」

 「アディオン殿こちらへ!」

 大聖堂が揺れ始めるとヤオは焼け石に水だとは思いつつも地面に手を置き障壁をつくった。

 【ドーーーーーン!!】

 激しい爆発音と共に大聖堂を中心に聖都が激しく揺れた。

 「くっふぅ…ご、ご無事か…」

 「お、おかげさまで…かろうじて無事だよ…」

 2階から床が抜け1階の礼拝堂へ叩き落された二人だったがヤオがアディオンを庇いながら落ちたことでアディオンはかすり傷で済み、痛みに耐えているヤオに笑顔を向け神聖魔法を使い回復をした。

 「私はよろしいのでセナ様をお探しくだされ…」

 「わかった…」

 アディオンを遮り痛みに耐えながらいうヤオに頷くとアディオンは立ち上がりがれきと化した礼拝堂の中を見渡した。

 「いたっ!セナ君!!」

 「くっ!セナ様…」

 アディオンの言葉に歯を食いしばり立ち上がりヤオもセナの元へと歩き始めた。

 「これは…」

 「アディオン殿…セナ様は…」

 横たわるセナの元にしゃがみこんだアディオンの背中にヤオが不安げに声をかけた。

 「おい!無事かぁー!」

 「アディオン!ヤオ!!」

 「セナぁー!」

 そこへ避難していたエイケン、サイ、リレイ、アリアとカトリーヌが駆け寄ってきた。

 「二人とも無事だったのね!セナ様は?」

 「…………………」

 「おい!アディオン!!セナはどうなんだ!!」

 リレイの問いにセナをみつめたまま沈黙するアディオンにエイケンが掴みかかった。

 「ひどい損傷だけど生きてる……」

 「だったら!」

 「ダメだ…ボクには治せないようだ……」

 「そんなにひどいのっ!?」

 力なく頭を横にふるアディオンにアリアが涙をながしへたり込んでしまった。

 「あなたでも治せないほどなの!?」

 「普通のケガなら治せるレベルだよ…」

 「じゃあなんで!」

 「ダメなんだ…」

 「だからなにがよっ!……アディオン?」

 諦めたかのようにいうアディオンに興奮したリレイが掴みかかるとアディオンはポロポロと涙を流していた。

 「神聖魔法…治癒とポーションが効かないんだ……というより悪化してしまうんだ……」

 「え?ど…どういうこと……?」

 「治癒の魔力を流すと怪我が増す…ポーションを飲ませても同様だった……よくなるどころか悪化してしまうんだ……」

 「ガラムが言っていた禁呪というやつか……」

 「神聖魔法を使う国で神聖魔法で死ぬってかっ!ふざけんなっ!なんか方法はねぇのか!」

 サイがガラムの言っていたことを思い出し苦々しくいうと、エイケンが激高しアディオンの肩をゆらしながら必死に尋ねた。

 「残念だけどボクにはなにもできないし思いつかない……ごめん」

 「くそがっ!どうにかなんねぇのかよ!」

 アディオンを投げ捨てる様に手放すとエイケンは悔しそうに叫んだ。

 「燐気もだめなところをみると龍気でもだめそうね……ヤオ、回復できなくても悪化させないほうほうはない?」

 「あるにはありまするが…セナ様への負担が……」

 リレイが燐気をながしがっかりしたヤオを見ながら尋ねた。

 「それでもいいわ!できるだけ症状を抑えて持ちこたえさせて!それとタオにいってグラニールをここによんで!」

 「御意…」

 「リレイどうするのだ?」

 「私たちに知恵がないならありそうなところに連れて行ってみせるしかないじゃない!」

 「どういうことだ?」

 「ドラニスタへ行くわ!エイケンはセナ様をグラニールに!サイ、ヤオとタオのサポートをお願い!アディオンいくわよ!」

 リレイが次々と指示をだしヤオの処置とグラニールの回復を待った。

 「リレイ様わたしも…」

 「気持ちはわかるけどダメよ、あなたはここで混乱をおさめるのを手伝って」

 「そんな…」

 「神聖魔法がつかえないということはあなたの歌すらセナ様を傷つける可能性がある」

 「っ!?」

 「かならず助けて見せるから…私たちとセナ様を信じて……」

 「はい…」

 「大陸最強のナンバーズの名に懸けて!必ずセナ様をすくってみせるわ!!」

 リレイが今までにないほどの信念に満ちた目で力強く宣言すると、サイ、エイケン、アディオンそして突然あらわれたシャドウもリレイの後ろにならんだ。

 「みなさん……セナを……セナを助けて……」

 ボロボロと泣くアリアの言葉に5人のナンバーズが頷いた。

 「俺はアルドラに再度侵入し、情報をさがしだしてみる」

 シャドウがそういい消えようとした時、コルネがシャドウの腕を捕まえた。

 「すいません師匠…私を破門にしてください…」

 「どういうことだ?」

 「あの時…セナ様は私を庇い自身も壁の中に入ったのです…私が自分の身体を犠牲にしようとしたのを察していたようで壁を作った際、私を見て笑ったんです…私はこれより…セナ様のために生きて死にます…」

 「貴様の命だ…好きにするがいい…」

 「ありがとうございます」

 腕をはなし頭をさげるとシャドウは頭をひとなでし消えた。
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