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九章 初めての夏休み

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 さすがというか、ルカさんからの返答は夕方には届いていた。
 その内容は明日朝食を食べ終わったらぜひ建国祭に行きましょう、という内容だった。
 ただ私たちの普段来ている服だと平民の中では悪目立ちをしてしまうため、変装、というか平民の服を着て建国祭に出かけることを提案していた。
 服はルカさんが用意してくれるみたいで、ありがたくその案を受けることにした。
 明日はお土産も忘れずに持って行かないとね。


「それで明日はどうするのですか?」

 夕飯の席につくと、さっそく母様に聞かれて朝食後にルカさんが迎えに来てくれることを伝えた。

「今日帰ってきたばかりなのに、明日もう出かけるのかい?」

「はい。
 ルカさんが明日しか開いていないようで」

「そうか……。
 でも、無理はしないようにね」

「姉さま、でかけるの?」

「はい。
 ごめんなさいね、リュラ。
 遊ぶのはまた今度」

 しゅん、とした様子のリュラに罪悪感を抱くけど、こればっかりは仕方ない。
 きっと明日は兄様が遊んでくれる、はず!
 ちらっと兄様の方を見ると何かを考えこむようにしていた。
 一体何を考えているんだろう?
 なんだかよくないことのような……。

 そんな予感はしたけど、特に何か聞くこともなくそのまま夕食は終わった。
 
 部屋に戻るとさっそく明日の準備に取り掛かった。
 といっても何を持っていったらいいんだろうか?
 うーんと悩んでいたら、ベンネが助けに来てくれた。

「お祭りということですから……。
 まずはお金を用意しなくてはいけませんね。
 あとは服は用意してくださるようですから、特にはないですかね。
 ハンカチなどは用意しておきましょう」

 そっかお金!
 前も今もろくにお金を持ち運ぶことがなかったから、頭になかったな。
 お祭りは屋台だから、そりゃ現金払いだよね。

「ありがとう」

 一度部屋から出て行ったかと思えば、すぐに現金を用意してベンネは戻ってきてくれた。
 ついでにもろもろももう用意してくれている。
 さすがとしか言いようがない。

「一応多めに用意していますので、足りないことはないかとは思いますが……。
 あとは今日は早めに寝てくださいね。
 旅の疲れもとれていないでしょうから」

「そうするわ。 
 おやすみなさい」

 思えば建国祭には初めて出かける。
 どんな一日になるのかわくわくしながら私は眠りについた。


 
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