169 / 261
九章 初めての夏休み
168
しおりを挟む
「アーネ……?」
少ししてこちらに来た父様は、やっぱり驚いた顔をしている。
そして隣のルカさんに気が付くと、一瞬固まってしまった。
「ひとまずこっちへ」
人ごみの中、妙に人目を集めてしまったこの状況では引き続きお祭りを楽しむこともできず、父様の後をついていく。
父様と一緒に何人かの人も来ていて、歩き出すとそっと横や後ろを守ってくれた。
ちなみに絡んできた五人はかつぎあっげられて、どこかへと連れていかれた。
少し歩くと、立派な建物が見えてきた。
建国祭の本部がここらしい。
とある部屋に通されると、席を勧められる。
そして少し待ってろと言って父様たちはどこかへと行ってしまった。
「大丈夫ですか、ルカさん」
いきなり騎士団の人が現れてごたごたしてしまったから、ルカさんの様子を見ていなかったけど……。
心配になってそっと様子をうかがってみると、ぐっと手を握って少し震えている。
そして拳の上にぽたり、としずくが落ちてきた。
その様子に思わずぎゅっとルカさんを抱きしめた。
きっと先ほどのような事態に陥ったことがなかったであろうルカさんだから、とても怖かったんだろう。
少しの間そうしていると、ノックの音が聞こえた。
その音に驚いて離れると、もうルカさんの涙は止まっていた。
「どうぞ」
「失礼いたします。
お茶をお持ちいたしました」
「ありがとうございます」
この時にはもういつものルカさんに戻っていて、微笑んでお礼を言っていた。
その様子はさすがとか言えない。
「アーネさん、ありがとうござました。
いろいろとご迷惑をおかけしてしまいましたわ」
「気にしないでくださいね」
お茶をいただきながら、そうして話をしているとお父様たちが入ってきた。
「大丈夫でしたか、ルカミア様」
そっとルカさんの前に膝をつき、そう尋ねる。
こくりとうなずくと、ほっとしたような顔をした。
さすがに王女様にけがを負わせるわけにはいかないもんね。
「アーネも大丈夫だったか?」
「はい」
さて、この後また建国祭に戻るわけにはいかにだろうしな。
せっかくルカさんと遊びに来れたのに……。
「さて、今日はもう帰った方がいいだろう。
迎えをやろう。
アーネは、一緒に帰るか」
「え、あのお仕事の方は大丈夫なのですか?」
「どうにかなる」
本当に大丈夫なのか怪しいところだが、言いきられてしまってはこれ以上は何も言えない。
ここはおとなしく帰ったほうがよさそうだ。
「ルカさん、お借りした服は必ず返しますね。
今日は……」
「はい。
また遊びましょう」
申し訳なさを感じつつ、そう伝えるとルカさんは残念そうにそういった。
せっかくのお出かけをこんな風に台無しにするなんて、本当に許せない。
少ししてこちらに来た父様は、やっぱり驚いた顔をしている。
そして隣のルカさんに気が付くと、一瞬固まってしまった。
「ひとまずこっちへ」
人ごみの中、妙に人目を集めてしまったこの状況では引き続きお祭りを楽しむこともできず、父様の後をついていく。
父様と一緒に何人かの人も来ていて、歩き出すとそっと横や後ろを守ってくれた。
ちなみに絡んできた五人はかつぎあっげられて、どこかへと連れていかれた。
少し歩くと、立派な建物が見えてきた。
建国祭の本部がここらしい。
とある部屋に通されると、席を勧められる。
そして少し待ってろと言って父様たちはどこかへと行ってしまった。
「大丈夫ですか、ルカさん」
いきなり騎士団の人が現れてごたごたしてしまったから、ルカさんの様子を見ていなかったけど……。
心配になってそっと様子をうかがってみると、ぐっと手を握って少し震えている。
そして拳の上にぽたり、としずくが落ちてきた。
その様子に思わずぎゅっとルカさんを抱きしめた。
きっと先ほどのような事態に陥ったことがなかったであろうルカさんだから、とても怖かったんだろう。
少しの間そうしていると、ノックの音が聞こえた。
その音に驚いて離れると、もうルカさんの涙は止まっていた。
「どうぞ」
「失礼いたします。
お茶をお持ちいたしました」
「ありがとうございます」
この時にはもういつものルカさんに戻っていて、微笑んでお礼を言っていた。
その様子はさすがとか言えない。
「アーネさん、ありがとうござました。
いろいろとご迷惑をおかけしてしまいましたわ」
「気にしないでくださいね」
お茶をいただきながら、そうして話をしているとお父様たちが入ってきた。
「大丈夫でしたか、ルカミア様」
そっとルカさんの前に膝をつき、そう尋ねる。
こくりとうなずくと、ほっとしたような顔をした。
さすがに王女様にけがを負わせるわけにはいかないもんね。
「アーネも大丈夫だったか?」
「はい」
さて、この後また建国祭に戻るわけにはいかにだろうしな。
せっかくルカさんと遊びに来れたのに……。
「さて、今日はもう帰った方がいいだろう。
迎えをやろう。
アーネは、一緒に帰るか」
「え、あのお仕事の方は大丈夫なのですか?」
「どうにかなる」
本当に大丈夫なのか怪しいところだが、言いきられてしまってはこれ以上は何も言えない。
ここはおとなしく帰ったほうがよさそうだ。
「ルカさん、お借りした服は必ず返しますね。
今日は……」
「はい。
また遊びましょう」
申し訳なさを感じつつ、そう伝えるとルカさんは残念そうにそういった。
せっかくのお出かけをこんな風に台無しにするなんて、本当に許せない。
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる