あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio

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九章 初めての夏休み

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 そして二日後。
 今日は建国祭の当日だ。
 この日はまず平民に向けて、国王様が挨拶をする。
 これは王城の中から国王様やルカさんたちが、王城敷地内の広場に集まった民に向けて顔を見せてやるものだ。
 なんというか、やっぱり大変そう……。

 そして夜からは貴族に向けたパーティーがある。
 このパーティはやはり12歳になった後から参加するものだから、私もルカさんも参加することはない。
 今年からは兄様が参加するから、家は少しあわただしかったけどね。
 建国祭の内容がほぼ私には無関係だったため、今まで建国祭を意識したことがなかったのだ。

 今年はルカさんとお出かけできてうれしかったけど、最後の終わり方がなぁ。

「ねえ、アーネ。
 どこか変なところはないかな?」
 
 なんて物思いにふけっていると、いつの間にか兄様が近くにいた。
 
「わぁ!
 とてもかっこいいです」

 パーティー用の衣装に身を包んで、髪も整えている兄様は本当にかっこよかった。
 それは騎士の正装を意識しているようで、シルエットもかっこいい。
 
 素直に感想を口にすると、兄様はありがとうと言ってなでてくれた。
 それにしても、もしかしてこれが兄様にとって誕生会以降初めてのパーティー? 
 それで緊張しているのか!

「兄様ならきっと大丈夫です。
 頑張ってくださいね」

 そう伝えると、なんだか感動したような顔になったのは気のせいだろうか。
 今回のパーティーも婚約者探しの一環になるのかな?

 留守番組の私たちはただ今晩の夕飯を楽しみにしています。
 そういえば……。

「あの、ルカさんの様子を見てくることはできますか……?
 この前からお会いできていないので、気になってしまって」

 私の言葉に、兄様がうーんと悩みだした。
 ちなみに、チンピラに絡まれたことは兄様も知っている。 
 そりゃお祭りに行ったのに、父様と早々に帰ってきたら何かあったと疑うに決まっているよな。

 それであったことを話したらとても心配されました。
 そして何やら怖い顔をしていたけど、まあ犯人の顔を知らないので何かするという心配もないでしょう。
 
 その場にルカさんもいたことも話したので、あの一言だけで私の意図を理解してくれたのだろう。
 
「それは難しいかな……。
 ルカミア様はパーティーに参加されないだろうから」

「そう、ですよね!
 パーティー、楽しんできてくださいね」

「ありがとう」

 
 夕方ごろ、兄様たちを見送ったらお待ちかねの夕飯!
 いつも豪華でおいしい食事だけれど、今日はもっと豪華だ。

 そして、この日だけは食堂で、や家族だけで、等の決まりを破ってもいいのだ。
 だから部屋でベンネや兄様、リュラと食べたり、天気が良ければお庭で食べたり、いろいろ自由にさせてもらえる。
 去年までは兄様が一緒だったけど、今年はリュラと二人。
 私がパーティーに参加するようになったらリュラが一人になってしまうのか……。

「姉さま、ご飯食べましょう?」

「そうね。
 今日は誰と食べる?」

 ふふっと笑いながら、リュラに問いかけると少し考える。
 そして、元気な声で先生! と答えた。
 やっぱり今年も先生は一緒に食べることになりそうだ。
 先生も一応貴族らしいけど、やっぱりパーティーには行かないとのこと。
 だから、この日はよく一緒にご飯を食べてきた。

「じゃあ、先生を誘いに行きましょう?」

「はい!」

 
 リュラと二人、先生の部屋の前に立つ。
 そしてノックをすると少しして返事が返ってきた。

「一緒にご飯を食べませんか?」

「せんか!」

「私とでいいのですか?」

「はい!
 今日はいい天気ですから、お庭でいただきましょう?
 きっと星がきれいに見えます」

 そうして誘うと、さっそく庭に行こうという話になった。


「ただいまお料理の方をお持ちいたしますね」
 
 事前に言っておいたからか、もう庭の準備は済んでいた。
 そしてほどなくしてほかほかの料理も運ばれてきた。

 予想通り、今日は星がとてもきれいに見えていた。
 少し無理を言って屋敷の灯りを一部落としてもらい、テーブルの上にはろうそくをともす。
 いつもとは全く違った夕食にリュラはとても楽しそうにしていた。

「たまにはこんな風に食べる夕食もいいですね。
 誘ってくださってありがとうございます」

 そういって、先生は少しワインを口にする。
 こうしてお酒を飲む姿を見るのは珍しいかもしれない。

「楽しんでいただけて良かったです」

 こうして、穏やかなまま夕食は食べ終わった。
 もちろん今日はデザート付き。
 見た目にも力を入れていた料理の数々は本当においしかった。

 帰ってきた両親、兄様は疲れた様子で、数年後には私もそちらに参加しなければいけないと思うと今から気が重かった。

 
 

 
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