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十章 新学期

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「優秀であるならば一度、ここに書かれている魔法陣に魔力を通すことで魔法を行使することができるようになるのです。
 この仕組みはまだ分かっていないことが残念でなりませんが……」

「そうやって魔法は使われていたのですね。
 でも、以前私が魔法を使うのは早いとおっしゃっていたのでは?」

 あれ? と思い口に出すと、先生は苦笑いしていた。

「いや、少しうるさい人がいましてね。
 光魔法ならうまく制御できなくても、周りに害が及ばないものばかりですから教えてしまおうと思ったんです」

 そんな適当な理由でいいのだろうか。
 疑問は残るが、まあ先生の判断なのだからいいのだろう。

「それと、魔法陣はみなさん使うものなのですね。
 以前、お父様が魔法陣が入った石を作るのは一部の人しかできないと話していらっしゃったので、てっきり魔法陣を書くのが大変なのだと思っていました」

「そうですね、なぜそのような石を作り出すのが大変なのかという理由に関してなのですが。
 一つ目は込めなくてはいけない魔力が多いため、多くの人がそもそも魔力量が足りないのです。
 二つ目はこれは魔法陣の基本形という話はしましたよね? 
 石に魔法陣を込めようとすると、ここから魔術師オリジナルのものにする必要があるんです」

 オリジナルの魔法陣? 
 なんだか大変そうな話になってきたような……。

「魔力は一人一人特性があります。
 それにあった魔法陣があるということなんです。
 このオリジナルの魔法陣を作るのが大変なのですが、あなたならきっとできます」

 まっすぐに見つめられ言われ、思わずうなずく。
 どうしてこんなに確信をもっていってくれるのかわからないけど、きっとできると信じてくれているのだろう。

「ゆっくり探っていきましょう」

「はい」

「一気にいろいろと伝えてしまって、すみませんでした。
 今日はここまでにしましょう」
 
 頭が段々混乱してきてしまったから、正直ありがたい。
 ありがとうございました、と部屋を出そうになった時ふと学級委員のことを思いだした。

「あの、先生。
 すみませんが、文化祭の関係でくる時間が遅くなってしまうかもしれません」

「おや、魔法特進科の一年生は文化祭に参加するのですか?」

「いえ、クラスは不参加なのですがその代わり生徒会の手伝いをすることになったんです」

「そうでしたか。
 こちらのことは気にせず、ぜひ楽しんでください。
 こちらには時間が空いているときに来て下されば大丈夫ですので。
 そもそも、今やっているものはもっと後に学ぶものなのでゆっくりでいいんです」

 頑張ってくださいね、と励ましてくれる先生にお礼を言って教室を出る。
 するとタイミングよく兄様が向こうからくるところだった。

「ああ、丁度良かったかな。
 さあ帰ろう」

 お兄様が差し伸べてくれた手をとっさにつかむ。
 そしていつものように馬車に乗り込んだ。



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