あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio

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十章 新学期

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 向かった先は運動場。どうやら剣舞をやるみたいだ。本当は試合をしたかったみたいだけれど、一年でそれは……、と拒否されたみたい。まあ、試合よりも剣舞の方が見やすそうだからよかったかも。

「楽しみですね、アーネさんのお兄様」

「はい!」

 実は兄様が剣を振るっているところを想像もできないけれど、楽しみなのは確かだ。絶対にきれいだもん。兄様のクラスの演技が始まる時間が近づいてくると人がどんどんと増えてくる。楽しみにしているようで、そのざわめきも聞こえてくるようだ。

「早めに来ておいてよかったですね。 
 こんなにも人が来るとは、正直思っていませんでした」

 ぽつりとこれなら特別席の申し出を受けておけばよかったかな、という言葉が聞こえてくる。ちらりと視線をやるのは運動場中央付近に設置された明らかな特別席。王族などの特別な身分な人が座るところだ。私としては絶対に落ち着かないからこっちの席でよかったです……。

「そうですね。
 皆さん楽しみにしているのが伝わってきます」

 そこで、間もなく時間になるというアナウンスが入る。あわてて視線を運動場の中央に向けると少しして4人の生徒が現れた。ミハルトさんもそこにいる。クラスで参加って聞いていたけど何か変更があったのかな?
 でもそのうち3人には見覚えがない。お兄様も参加するといっていたから、また別の集団があるのかな?

 その4人は音楽に合わせて軽快に剣を振るう。打ち合うのかと思っていたらそうではなく、本当に舞みたいだ。体全体を使って動いていて、剣を持ったままくるりと周り二人の位置が入れ替わった時は剣先が体をかすめるのではないかとハラハラしたほどの距離間で舞うこともあった。
 最後は2人一組で剣を互いに斜め下にすることでカキン! という甲高い音が鳴って剣舞が終了した。当たり前かもだけど、あれ本当に剣だったのですね……。
 軽やかできれいだった剣舞に賞賛の拍手が送られると4人は礼をして退場していった。

「見事な舞でしたね」

「はい!
 剣舞というものを初めて見たのですが、思わず見入ってしまいました」

 初めてのことに感想を言い合っていると、次の人たちが現れた。先ほどよりも人数が増えて6人だ。あ、兄様がいる!


 今度は先ほどの様子とは全然違うものだ。音楽はなっておらず、気合を入れるためか声を上げつつ激しく打ち合いをしている。ガキン! という音まで聞こえてきているから、これ相当力いっぱいやってるよね。それでもおそらく決められた動きなのだろう。3ペアが心地よいほどそろった動きを見せている。
 途中で3人で1ペアになり、一人の人に二人で切りかかり、それをうまくいなす、というところもあったけれどとてもかっこいい! その激しさや息ピッタリな動きに目を離すこともできなかった。
 最後、また二人一組に戻り、数回打ち合った後今度は斜め上に剣を掲げ、終わった。
 
 すごくかっこよかった! 思い切り拍手をしたくて思わず立ち上がって拍手をすると、周りの人もそれにつられるように立ち上がって拍手を送った。

 なんだか周りの人があまり真面目ではない、みたいなことを言っていたからハラハラしていたどみんなすごい!

 でも最後の剣舞を見てその意味が分かった。全員が出てきての最後の剣舞では、おそらくそろった動きが売りなのだろうけど、少しばらついている。今までがそろっていたし、今もきれいなところはきれいだからこそ余計に目立つ。なんでこれを最後にもってきたんだろう、そう釈然としない気持ちになりながらも兄様のクラスの演目は終わっていった。


 
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