あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

一章 異世界へ からの幼児編

6

「フルト、こんなところに居たのね。
　家庭教師の先生はもういらしているのに、だめじゃない。
　ほら、行きますよ」

　ここで登場したのは母さん。
　って、兄さん勉強から逃げてきたの!?

　兄さんは渋々といった感じで、母さんに連れられていく。

「また、来るからね！」

　と、言ってくれる兄は本当に優しい。
　前は僕に兄弟って居なかったし、やっぱりいいな。

　また一人になっちゃったなと、ぼ～っとしていると母さんとベンネさんが入ってきた。
　手には、服がある。おう、フリフリだ。
　あっちでは決して着なかった服。
　なにせ、僕といっているほどだからね！

「アーネ、新しい服を買ってきたの。
　着てみて」

　母さんの言葉に、ベンネさんが僕にそれを着せる。
　いやいや、どうせ似合いませんよ？

「きゃ～、かわいいわ！アーネ」

　えっ、かわいい？
　誰が？僕が？
　かわいいなんて言ってもらうのはいつぶりだろう。
　なにせ、言われたとしたらかっこいい、だったからね。

　ほら、と言ってベンネさんが抱っこして鏡の前に連れて行ってくれる。
　鏡の中には、見知らぬ赤ちゃんがいた。
　これが、こっちでの僕の姿なのか!?
　なんというか、確かにかわいい。
　特徴は兄によく似ていた。
　白い肌にエメラルドグリーンの瞳、そしてふわふわの金の髪。
　いや～、フリフリの服が結構あってるね。
　良かった、良かった。

「お嬢様も喜んでいられますね」

　ベンネさんも微笑んで、暖かい空気が部屋を包んだ。
　この世界の家族も僕は好きだよ、でもね……。

「奥様、旦那様が帰られるそうです！
　ですが、その……」

　一人の侍女が慌てた様子で、報告に来て、僕をちらり。
　えっ、父さん帰ってくるの？
　
　何かを察したのか、母さんは硬い顔をして部屋をでた。
　僕も父さんに会いたいな～。

「ここで待っていましょうね」

　えっ、僕は行けないのか……。