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三章 いざ、入試へ!

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 えーと、持ち物は受験票に、ペンに、後は大丈夫かな?
 私は前世から緊張しても寝れないということはない。
 だから、今晩も大丈夫だろう。
 そう思いつつ、明日に備えていつもよりも早く布団に入った。

「やあ、久しぶり。
 何年ぶりかな」

 突然の声の主は、あいつ。
 でも、本当に久しぶりだ。
 平和だったのに……。

「何しに来たの?
 私はもう寝るんですけど」

「警告、かな」

 そう言ったあいつの顔はなんだか寂しげで、一瞬言葉に詰まった。
 言っていることは、意味分かんないけど。
 
「明日は入試でしょ。
 もうこちらに転生して8年も経つんだね」
 
 そう、しみじみと言うあいつ。
 そのとき、私のなかで何かが切れた。

「ねえ、感傷してるとこ悪いんだけどさ、あなたのせいでこんなことになっているんだけど!
 あなたがあのとき私に何もしなければ、私は今もっ、地球でっ、お父さんとお母さんとっ、幸せに暮らしていたのに!」

 言っていて、最近は向き合うことを避けてきた感情が、溢れてきた。
 ああ、涙が止まらない。

「君はさ、とても楽しそうに過ごしているよね。
 こちらでの一日一日を。
 それでも、やっぱり地球のこと忘れられない?
 こちらの家族では埋まらない?」

 まっすぐな目であいつが見てくる。
 そう言われても、困るのだ。 
 確かにこちらの家族は大好きなのだ。
 でも、地球のことを忘れるなど、私には一生できない。
 やっぱり、どうあがいてもあちらのことは別のことで埋められることではない。
 この世界での生活は楽しい、けど、あんな終わり方ではだめなのだ。

「あなたが、あんな終わらせ方をしたせいで!」

「ごめん。
 でも、あれは必要なことだった。
 いつか君が理解してくれるときがくるから」

 涙でぐちゃぐちゃの顔で睨んでも、怖くはないはず。
 でも、あいつは微かにおびえた。
 私には言っていることはその反応も意味がわからない。
 出会ったころからだけど。

 私の未練はいつまでも切れない。
 それは、やっぱりここでのことでは切ることはできないのだ。
 
「……、警告に来たっていったでしょう。
 周りはもう勘づいているけど、あなたの魔法の才能は周りとは比べものにならない。
 あなたは、入試で自分の才能、その一端を知ることになるわ。
 きっと、真の力は人間にはわからないから。
 それは、あなたに、あなたの魂に刻みつけられたもの。
 どうか、自分を、華原愛音を、アーネミリア・オリベルトを、見失わないで」

 また、意味がわからない。
 それに、どうしてあなたが泣きそうになっているの?

「ねえ、あなたは何者なの?
 そろそろ教えてよ」

「いつか、わかるわ。
 それまでは内緒。
 ……、ああ、喋りすぎてしまったわ。
 また、いつか会いましょう」

 そうして消えていったあいつの跡を、私はいつまでも見つめていた。 
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