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五章 学園生活 1‐1

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 扉を開けると、視線がこちらに集まる。
 みんなはもう席についていた。

「無事にここに来れたようでよかった。
 席は、空いているところに座って」
 
 今まで見た中で一番若いのではないかという先生がそこにいた。
 しかも、かっこいい。
 ルカさんに誘われて隣に座った後も、つい先生のほうを見てしまう。

「これで全員揃いましたね。
 では、はじめに自己紹介を。
 私の名前はファースター・チェストと申します。
 君たちの魔法実技を担当しています。
 これからよろしくお願いしますね」

 そう言ってチェスト先生は丁寧に頭を下げた。
 なんだかこちらの調子が狂う感じの先生だ。
 というか見た目が若すぎて、生徒といわれても納得してしまいそう。

「先生はおいくつなんですか?」

 気づけば誰かがそんな質問をしていた。
 やっぱり気になるよね。

「私ですか? 
 私は20歳になります。
 おそらくここの先生の中では一番若いのではないでしょうか」

 20歳!
 若い!
 若そうとは思っていたが、そこまでとは……。

「では授業を始めていきましょうか。
 これでも、魔法の扱いに関しては、ほかの先生方よりも上手であると自負しているんですよ?
 安心してください」

 いたずらっぽく笑った先生がそんなことを言う。
 女子はこれを見て、ぼうっとしていた。
 うん、その気持ちはわかる。

「みなさん、魔法を扱うのは初めてですよね。
 まずは自分の中に流れる魔力を感じてみましょう」

 先生は適度に図を描きながら丁寧に説明していく。
 だからか、とてもわかりやすい。

「では、やってみましょうか。
 感じることができた人は教えてください」

 先生の合図で、みんな一斉に立ち上がった。
 肩幅に足を開いて、手を自分が一番力を抜けるところにもっていく。
 そして目を閉じて深呼吸をしてみると、血液のように体中を流れる魔力を感じることができた。

 ゆっくりと目を開けて先生のほうを見ると、先生もこちらを見ていた。

「感じることができましたか?
 オリベルトさん」

「はい」

 それはよかった、というと先生はこちらへとくる。

「本来はこの授業中くらいはかかるものなのですよ?
 まあ、あなたのことはもとから聞いていましたが。
 では、あなたには先にこれをやってもらいましょう」

 渡されたのは、手のひらよりも一回り小さい一つの石だった。
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