ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 1

4

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「今もね? ハルがいつもぎゅぅってしてくれるんだ!
すごくあったかくてしあわせになるの」

心がポカポカして、自然と笑顔になれてしまう。

「それがね、もっとふえたらいいなって思うんだぁ……」

ハルだけでも十分幸せ。
でも時々…本当に時々、どうしようもなく寂しい時がある。

例えば、おかあさんがハルを抱きしめる時。
おとうさんがハルに笑いかける時。
何故だか寂しくなってしまって…心がキュっとなってしまって……

「おかしいねっ、ハルがいてくれるのに。
でもね? そういう時におれのことぎゅってしてくれる人がいたらなぁって…おれもその人のことぎゅってしたいなぁってね、思うの。
ひとりでいいんだ。おれの名前をよんで、おれをぎゅってしてくれる人が、ハルのほかにもいてくれたらーー」


グイッ!!

「わぁっ、……サンタ、さん?」


(あぁ、小せぇなぁ)

小さい 小さい こいつの体。
きっと、俺と出会うのはまだずっと先のこと。

「サンタさん…? どうしたの……?」

ビクリと震えた背中を、窓越しに抱きしめた。

「……ふふふ、もしかしてサンタさんがプレゼントになってくれるの?」

「…あぁ、そうだな」

「わぁっ!すごい!!」

キャッキャっと腕の中で喜ぶこいつを、更に強く抱きしめる。

多分もうすぐ、俺はこの時間線じゃなく元の場所に戻る。
常にこいつの近くにいるわけじゃない、これが現実か夢かもわからない……そんなひと時の時間。
それなのに、こいつは「嬉しい」と笑っていて。

(ーーっ!)


ポツリ

「なぁアキ、待ってろ」


「……へ?」


お前のその願いは、絶対叶う。

まだ遠い先の話だろうけど、必ず叶う。
俺が叶えてみせる。

「ひとりでいい」とか言ってんじゃねぇよ。
丸雛や矢野元や佐古や、月森だって、お前の事呼んで抱きしめてくれる奴はたくさん出来る。

ーーそんな未来が、来るから。


(その願い、絶対に捨てんなよ……っ)


今は、叶えてやる事は出来ない。
その歯がゆさがどうにも胸にきて、苦しくなった。




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