四神の国の麒麟妃

藤間留彦

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第九話 蛇の洞

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 城は温泉の脇から真っ直ぐに伸びる石畳の道を数分歩き、十数段ほどの石段を上るとあった。高さは二階建てくらいだが、横に長い形の石造りの平城だ。扉はなく、石の壁に洞穴のように大きな口が開いている。門兵らしき男がその左右に立ってはいるが、警備を厳重にしているという感じはしない。なぜなら、城の出入り口から民らしきもの達が頻繁に出入りしているからだ。
「ここが『蛇の洞』、青龍の城ぞ」
 中に入ると天井の高い一階建ての建物だということが分かった。白い石で出来た天井には、この国の歴史か伝承の一場面だろうか、赤や緑の染料で絵が描かれている。
 ぼんやりしていると、子連れの女性と老婆が奥の部屋から出てきて、青羅にお辞儀をして通り過ぎていき、更に食材を抱えた男達が一礼して側を通って女性達が出てきた部屋に入っていった。
「こちらに。王の居室には誰も来ぬ」
 手招かれた先にあったのは地下へ続く階段だった。点々と松明の灯が壁にあるが、それがなければ真っ暗闇だろう。階段を降りた先にぽっかりと空洞があった。
中に入ると走り回れるほどの空間が広がっていた。そこは自然の鍾乳洞を使ったようで、天井は松明の光を反射して何かがきらきらと輝いている。床は畳に似た植物で編んだもので敷き詰められていて裸足でも痛くはない。壁に沿って配置されている棚には、多くの書物が並べられていた。
「すげえ……」
 こんな城もあるものだと部屋の中を奥の方に行くと、植物で編んだ間仕切りがあり、そこには布団らしきものと、さらにその奥には水が湧いているのか、水溜まりがあった。
「『蛇の洞』とはよく云ったものだと思わぬか」
「……気になってたんだけど、何で『龍』じゃなくて『蛇』なんだ?」
 洞、というのは確かに頷けるが、青羅だけではなく歴代の王の居城が「蛇」と呼ばれるのは違和感があった。
「私や民を見てどう思った」
「どうって言われてもな……すごく色白だなってくらい? あとは……何となく俺の住んでた日本って国の人っぽい感じするかな。黒髪だし、服が着物って民族衣装に少し似てるんだ。あと畳っぽい床とか、温泉あったりするのも日本っぽい」
 一瞬真剣な眼差しを向けていた青羅は、思った反応とは違ったのか目を丸くしている。
「……本当にそれだけか」
「あー……あの足の甲にするあれは……ちょっとビビった、かな。挨拶とか何かなのか?」
 青羅は俺の問いには答えず、俺の目を真っ直ぐに見詰めた後、少し淋しそうに微笑んだ。
「私は選択を間違えたかもしれぬな」
 何のことか分からず疑問符を浮かべたままの俺を、間仕切りの向こうの部屋に招いた。布団と湧き水の池しかない部屋に何か嫌なことを思い出してたじろぐ。
「なに、そなたを組み敷こうというのではない。黒威には事前に南と通じておるこの水脈を教えてある。南を脱したら此処で合流することになっておるのだ」
 どういう原理で合流できるのか分からないが、少しでも変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい。溜め息を吐いて、間仕切りの向こうの寝室に入る。まだ少しどぎまぎしながら青羅に倣って布団の上に少し離れて座った。

「先の話だが……我ら東の民は『蛇族』と呼ばれておる。青白い血脈の浮いた肌が、まるで蛇のようだ、と気味悪がられ疎まれて、な」
 俺もこの日本人離れした容姿のことで好奇の目に晒されてきたから、そういった目で見られてきた東の国の人々の気持ちは理解できた。だから、自分と違うというだけで快くない名前で呼んでいるその事実に怒りが湧いた。
「歴代の王は民を奴隷のように扱い、乳飲み子にさえ税を課した。豊かなこの国で、毎日の食料に困るような暮らしをさせたのだ。更に王達はこの森の城には入らず、中つ国に渡る橋の袂に豪奢な館を建てて暮らした。そのため、この城は長きに渡り民の神殿として使われておったのだ。それを、『蛇の洞』と名付けたのは、何代目かの青龍であった」
「……ひでえな。自分の国の民を守るために、王はいるんじゃねえのか? 民を何だと思ってんだよ!」
 権力者には私利私欲のために生きる者と、付き従う者たちのために生きる者がいると思う。赤麗は一端を覗いただけだが、どちらかといえば前者で、黒威は後者だと言えるだろう。俺は、後者のような者が望ましいと思う。国が豊かになるためには、まずは民が幸福でなくては始まらないと思うから。
「……私の母上は、先代の麒麟であった。そして、蛇族の巫女でもあった」
 赤麗が俺を罵る時に吐いた言葉を思い出す。先帝の、と言っていたが、それはつまり、青羅の母親のことだったのだ。
「あいつ……!今度会ったらぶん殴ってやるッ……!」
「ぶん、殴る……?」
「いやいや、こっちの話! 続けてくれ、あんたのことが知りたい」
 つい赤麗の暴言を思い出してカッとなって話の腰を折ってしまった。青羅の方に向き直ると、ふっと微笑んだ後、何処か遠くを見るように空に視線を投げた。
「先帝が逝去して十七年、麒麟は探し出せなかったが、その時麒麟を妃としたのは青龍の王だった。蛇族の民が麒麟として生まれ出でた子を巫女として神殿の地下に隠しておったのだが、民達を拷問し白状させた。青龍の王は他の王に奪われぬため、この洞で麒麟を犯し、帝となった」
 虫唾が走るような話だった。麒麟は人として扱われなかったと聞いたが、事実は想像より惨い。恐らくこの世界では帝になるために、麒麟の処女を奪うため非人道的な行為を行ってきた歴史があったのだ。
「先帝はすぐに赤麗の母などを次々と側室とし、母上を宮殿の座敷牢に閉じ込めて会うことはなかったが、不運なことにその一度きりの契りで母上は私を産むこととなった」
 妃とは名ばかりで、ただ帝に与えられる不老長寿の効力のためだけに、生き永らえさせられるのが、麒麟の本当の姿なのだろう。
「不運じゃねえだろ! あんたの母さんは、あんたの存在が救いだったはずだ! あんたが生まれて嬉しかったはずだ!」
 先代の麒麟は、そんな地獄のような生活の中で、青羅という存在を得られたのは幸運だったのではないだろうか。
「……うむ、母上は私に誠の愛をく与えてくれた。私と座敷牢の中二人きりで、私が十になるまで幸福な時を過ごした」
「十歳になった時に、何かあったのか?」
「私の体が大きくなり、母上の自殺を幇助することを危惧して離されたのだ。座敷牢から出され宮殿の中を自由に生活してよいと急に言われてな。しかし周りの私を見る目に耐えられず、ほとんど奥の己が部屋と座敷牢のある部屋におったが」
 子供に自分を殺させる母親が居るとは思えない。しかし、何十年も閉じ込められていれば気が可笑しくなっても不思議ではないから、その可能性を考え、帝は母と子の幸せな生活を壊したのだ。
「その頃赤麗には会ったことがある。初めて会った時八つだった彼奴は自信なげで、今のような傲慢さは欠片も無かった。私のことを『兄』と呼んでくれ、見てくれで差別もしなかった。しかし数日後には私を避け、数年後には私を『醜い大蛇の子』と罵った。赤麗の母親の教育が、彼奴をそうさせたのであろうな」
 俺は、赤麗の人生を知らない。民を苦しめていることも、俺にしたことも、許せるものではない。しかし、もし青羅の言うような子供だったとしたら、誰かが彼に正しい道を示していたら、今のような男にはなっていなかったかもしれない。
「そして私が元服を迎えた日のことだ。母は私の髪を剃髪して赤麗を嫡男とすることを望んだ。母は手ずから私の髪を剃りたいと申して刃物を持ってくるように言い、私は母の望みを叶えたく剃刀を盗んで座敷牢に入り込んだ」
 ほとんど感情を表に出さずに話していた青羅の顔が陰る。怒りと悲しみが綯い交ぜになったような瞳で宙を睨みつけて。
「母は私の髪を剃り終えると、満足そうな顔で微笑んで、その剃刀を喉に押し当てて絶命した」
 麒麟として生まれた者の多くは不老であったという。それはつまり、他殺か自殺かしか死ぬ道がないということ。青羅の母は息子の成長を見届けて、人生に悔いがなくなった瞬間に、幕を下ろすことを選んだのだ。
「……私の全身に龍の紋様が浮かび上がったのはその直ぐ後のことだった。私の母上を辱めた父上と同じ青龍の王になるとは、天も酷なことをするものよ」
「でも……あんたはつれえかもしれねえけど、あんたが王なら東の民も喜んだろ。見た感じ皆幸せそうだし、あんたが何かを民に強いてるって様子もない。城の中を自由に出入りできるなんて、普通無い話だぜ」
 東の国に到着して間もないが、青羅は誰にも命令をしていない。服を持ってきてくれた者達も、自らの意思でそうしている様子だった。城の出入りも神殿として長く使われてきたことを考えて、民の出入りを禁止しなかったのだろう。
 だからと言って王らしくないかといえばそうとも言えない。恐らく青羅が犯し難いほどの威厳に満ちているからだろうか。
「私は誰もが平等で自由であることを望む。母上の不自由と不幸を知っておるからな」
 青羅は蛇族の麒麟の母を持つ王だ。歴代の王によって虐げられてきた歴史を持つ民を想い、平等に扱い、自由を与えている。この国は青羅に、救われたのだ。
「……だから、私は、麒麟妃の自由と幸福を望んでおる」
 急に纏っていた空気が変わり、青羅がこちらに身体を向ける。相対すると何とも言い難い威圧感があり怯んでしまう。
「もし私がそなたを妃とし、帝となったならば、この身の総てをそなたに捧げる。そなたを守り、そなたの厭がることはけしてせぬ。必ずそなたを幸福にしよう。心の底からそなたを愛し、そなただけを愛し生きよう」
 青羅の手が俺の足に触れる。そしてそっと持ち上げると足の甲に唇を近づけた。
「ちょ、ちょっと待て! 俺には黒威が――」
 真剣な表情で俺を見詰める青羅に、俺は堪らず足を引いて後ろに下がる。恥ずかしい言葉で何回もぶん殴られた気分だ。
 しかし、俺はさっき、何を言おうとしたのだろう。
 次の瞬間、湧き水の方から飛沫が上がり、驚いてその方を見る。黒い髪に褐色の肌の男が、水溜まりの淵に手を掛けから半身を出して俺と青羅の方を渋面で睨み付けていた。
「青羅……何してる……黄太から、離れろ……」
 苦しそうに途切れ途切れに言葉を繋ぐ。様子が可笑しい。立ち上がると、水が赤く染まっているのが見えた。
「黒威ッ……!」
 身体が勝手に動いていた。黒威の傍に駆け寄り、水から引き摺り上げる。裸の黒威を見て背筋が凍った。身体中に無数の傷跡――新しい傷の中に古い傷もあった――、そして腹部に深い傷を負っていて、脈打つ度に血が溢れ出る。
「おい、しっかりしろッ! 何があったんだ!」
 黒威を抱え、傷口を手で押さえ付けた。身体に力が入らないのか、ぐったりとしたまま荒い呼吸を繰り返している。
「その傷……白月だな。四神最強の玄武とて二人相手は分が悪い、か」
 青羅の台詞に黒威は舌打ちすると、無理に身体を起こそうとして痛みに顔をしかめた。
「青羅、頼む! 何か手当てできるもん持ってきてくれ! このままじゃ……!」
「ああ、すぐに」
 足早に部屋を出ていく青羅の背を見、額に汗を浮かべる黒威の顔を見下ろす。
「ごめん……」
 指の間から溢れる血と、苦しそうに胸を上下させる姿を見ていると、息が詰まりそうだ。
「……何でお前が、謝る……?」
「勝手に、俺が……城を出て行ったから……それで、黒威がこんな目に……」
 意思が弱かった。自分で、どうすればいいかわからなかった。だから水海の誘いに乗って城を出てしまった。その結果赤麗のもとに連れてこられて、最悪な目に遭った。そして、俺を救い出そうとして、黒威が傷付いている。全部、考え無しに行動した俺のせいだ。
「悪いのは、俺だ……お前の意思を無視して……お前の、嫌がることをした」
 ――嫌がること。それは、もしかしなくても俺が城を飛び出す要因になった寝室でのあの事件のことだろうか。思い出して謝罪しようとしていた気分が削がれる。
「……悪かった。知っていたら、しなかった……」
「そのことは……もういい。帝になるために必要だったんだろ。赤麗がそういう感じのこと言ってたからな」
 また嫌なことを思い出しそうになったが、黒威の手が弱々しく俺の頬に触れた。血が出過ぎているのだろう、異様に手が冷たい。だが、俺を真っ直ぐに見据える濃紺の瞳は、強い光を放っていた。
「そうでなくても俺は……いつかお前に……触れたいと、望んだ……」
 どくんと心臓が跳ねた。俺は黒威を見詰めたまま、高鳴る鼓動の意味に混乱する。
 と、騒がしい音が遠くから近づいてきて、出入り口を振り返った。青羅とその後ろから数人の男性と中年の女性一人が続いて入ってくる。
「濡れた身体を拭いて、傷口を塞いで頂戴!」
 女性の指示で男達が黒威を囲み、俺は傍を離れた。女性は青羅に何かを頼んでいる。そして青羅が頷き目を瞑ると、辺りが緑に輝いた。瞬間、足元から木が天井に突き刺さる勢いで生えてきて、あまりのことに面食らう。
 その木の葉を女性は数十枚採ると、持っていた擂り鉢に入れて押し潰し始める。そして男性の一人が水で湿らせた布を女性の前に差し出した。布の上に満遍なく潰した草を並べると、女性はそれを持って黒威の傍に近付く。
「っ、がぁ……!」
 女性が重傷の傷口にその布を押し付けると、黒威は呻き声を上げ、気を失ったのか脱力した。咄嗟に駆け寄りそうになった俺を青羅が肩を掴んで制する。
「あれは薬草。痛みで失神しただけよ。激痛を発するが、効果は絶大ぞ」
「……そう、か」
 安堵して息を吐くと、青羅は俺を見詰めた。
「もし私が赤麗のような見目であったなら……そなたは、私の妃になったか」
 どうしてそんなことを聞くのか分からなかったが、恐らく先程まで話していたことと関係があるのだろう。
 もしあの時、あの日の帰り道。赤麗でも黒威でもなく青羅が俺の前に現れていたら、と考える。王としての威厳も、民を想う優しさも、麒麟が何者でも愛し幸福にするという懐の深さも、ある。きっと、青羅が帝となったら、世界は豊かになって、皆自由で平等になる。そして俺がその妃となったら、悪くはない、と思う。
 ――でも、何かが、違う。
「……無理矢理ならわかんねえけど、多分そういう気にはならなかったと思うぜ。ちなみに、あんたの見た目は関係ねえぞ。別に悪いと思わねえし」
 青羅は「そうか」とふっと息を吐くように、少し嬉しそうに笑った。
 この違和感の意味を、俺は理解しなければならないだろう。この感情が、一体どこから来るものなのかを。
「王よ、この者を別室へ連れて行きます」
「うむ」
 黒威を抱えて男達が出て行く。
「青羅、俺も付いてっていいか?」
 気を失っているとはいえ、一人にしてはおけない。青羅が頷くのを見て、男達の後ろをついていく。
 薄暗い洞窟を抜け、階段を上る。人々が出入りしていたのとは別の部屋の入口を潜った。祭事に使うものなのか、太鼓や笛のような楽器、色とりどりの旗が置いてある部屋だった。
 その部屋の奥にまた別の部屋へ続く入口があり、そこに運び込まれていく。竹に似た植物で編まれたベッドと木のテーブル、椅子だけがある簡素な部屋だった。
 黒威はベッドの上に横たえられる。後からやってきた女性は、薬草をすり潰したものを黒威の細かい傷口に塗り込んでいく。
「俺も手伝う」
「ええ、頼みます」
 擂り鉢から薬草を取り、腕の傷に塗っていく。鍛えられた筋肉質な腕には、今回の傷ではない古い傷が所々に残っていた。
 黒威は青羅や赤麗のように中央の宮殿で生まれたわけではない。珪貝の話では南のあまり裕福とは言えない村に生まれたそうだ。帝は中央の国の宮殿で暮らしているようだし、帝の子がそのような地で生まれたのには、何か理由があるだろう。
 俺は、何も知らない。北の王、玄武ではない、ただ一人の黒威という人間の人生を。
 まだ、俺は黒威と出会ってから二日しか経っていないのだ。余りに濃密な時間を過ごしていたせいで、何日も経ったかのように錯覚してたが。
 ――帝になるために、麒麟を手に入れるために、こんなに傷付いているのか? それとも、他に理由があるのだろうか?
 ふっと先の黒威の言葉を思い出し、心臓がどくんと強く脈打つ。そして、黒威の城での出来事を思い出して顔が熱くなった。
「麒麟の君、どうかなさいましたか」
 治療師が訝しげに顔を覗き込んできたので、頭を横に振って「なんでもない」と誤魔化し慌てて手を動かす。
 治療が終わり――塗り薬だけで大きな傷も見事に血が止まった――、一人部屋に残された。汗の滲んだ黒威の額を水で濡らした布で拭う。眉間に皺が寄っている。傷が痛むのだろう。
「っ、う……」
 強く握り込む黒威の拳の上に手を乗せる。青羅は白月に傷を負わされたというようなことを言っていた。西の王、白虎の名だ。一体俺が青羅に連れられて行った後、何があったというのだろう。
 険しい表情が緩み、一定のリズムで胸が上下するのを見て、安堵の溜息を吐く。
 目が覚めたら、幾らでも話せばいい。今は黒威の傷を癒すことを考えよう。
 何も出来ない自分に苛立ちを覚えながら、俺は黒威の手を握りしめた。
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