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第一章 第一の秘密
第七話
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「総選挙」とは、年に一度行われるいわゆるΩの人気投票である。上位の者ほど多くのテレビ番組への出演など露出が増える仕組みになっている。
そしてこの投票で最下位になった者は、養豚場に行くことになるのだ。
だから、労働成績の優秀な者の中には好きなΩのアダルト動画を見たいがためにあえて好きなΩ以外への投票を行う者もいるらしい。
が、実際のところ目にできるのはごく一部の人間だけだから、普通に好きな子に投票するのが通例だ。
「でもその割に学生時代好きだったベティのアダルト動画ばっか毎回もらってんじゃん」
「そ、それは! 仕方ねえよ! 正直めちゃくちゃヌけるし!」
俺が唯一観た動画は、オリヴァーに推されて観たベティの動画。発情期の時のものと聞いたので、一応こういう感じかと参考資料として観ただけなのだが、「性感調教~乳首でイク淫らな身体~」とかいうちょっとアレなやつだった。
「エイクはぜんっぜん、Ωに興味ねえよな? そういう意味でお前もブレないっていうか……まあ結構変な奴に絡まれるからかもしんねぇけど」
「……はあ、それな」
少し他のβよりも見た目がいいというだけで、性的な目で見られることが多かった。工場長もその一人だが、街を歩いていても、目の色違うやつに付き纏われたり暗がりに連れ込まれそうになったりする。
当然俺も馬鹿ではないから、そいつら全員返り討ちにしてきた。
具体的には顔面をぐちゃぐちゃにして腕か脚かどこかしらの骨をへし折る。ベストは再起不能になるまで股間を蹴ることだが、まあ流石に相当なことをしない限りはそこまではしない。
「気をつけろよ! さっきだってユンベルトの名前出さなきゃ危なかったんだからな!」
βにとってαは脅威でしかない。αに何をされてもβは文句を言えない。弁解の余地もなく、βが全て悪いことになる。殴られても物を奪われても――強姦されても。
だから、出来るだけ関わりを持たないよう、波風を立てないようにしている。
「エイク!」
工場の出入り口で、立派な体躯の、軍服に身を包んでいる青年が手を挙げた。精悍な顔つきだが少し垂れ目で柔らかな雰囲気を持つ。彼は俺の無二の親友でαのユンベルトだ。
オリヴァーは俺の肩をポンと叩いて「じゃあな」と去っていく。彼も、αとは関わりたくないのだ。それが、βの当然の反応。でも、俺は記憶が無いことでαへの興味があった。そのせいで嫌な目にも遭ったが、それが今の俺とユンベルト――ユンとの関係を繋いでいる。
「どうしたんだよ、その服!」
「今日は入隊式の予行練習だったから、本番通りに軍服を着て行なったんだ」
新品の軍服に袖を通して、少し照れ臭そうにするユンの腕を軽く小突いて、「似合ってるよ」と言うと、嬉しそうに「ありがとう」と言って笑った。
「行こう」と促して歩き出すと、周囲にいたβが慌てて道の端に寄る。それを見てユンは困ったように笑った。
身長が一九〇ほどあるユンに対して、俺は一七〇くらい――正確な背丈は測ると絶望するので知らない――だから、顔を見る時はいつも見上げる形になる。
ユンは特別技能研修校でも随一の身体能力を持つエリート中のエリートだ。正直並みのαが数人がかりで掛かっても押さえられるかどうかというレベルで、それは出会った当初からそうだった。
そしてこの投票で最下位になった者は、養豚場に行くことになるのだ。
だから、労働成績の優秀な者の中には好きなΩのアダルト動画を見たいがためにあえて好きなΩ以外への投票を行う者もいるらしい。
が、実際のところ目にできるのはごく一部の人間だけだから、普通に好きな子に投票するのが通例だ。
「でもその割に学生時代好きだったベティのアダルト動画ばっか毎回もらってんじゃん」
「そ、それは! 仕方ねえよ! 正直めちゃくちゃヌけるし!」
俺が唯一観た動画は、オリヴァーに推されて観たベティの動画。発情期の時のものと聞いたので、一応こういう感じかと参考資料として観ただけなのだが、「性感調教~乳首でイク淫らな身体~」とかいうちょっとアレなやつだった。
「エイクはぜんっぜん、Ωに興味ねえよな? そういう意味でお前もブレないっていうか……まあ結構変な奴に絡まれるからかもしんねぇけど」
「……はあ、それな」
少し他のβよりも見た目がいいというだけで、性的な目で見られることが多かった。工場長もその一人だが、街を歩いていても、目の色違うやつに付き纏われたり暗がりに連れ込まれそうになったりする。
当然俺も馬鹿ではないから、そいつら全員返り討ちにしてきた。
具体的には顔面をぐちゃぐちゃにして腕か脚かどこかしらの骨をへし折る。ベストは再起不能になるまで股間を蹴ることだが、まあ流石に相当なことをしない限りはそこまではしない。
「気をつけろよ! さっきだってユンベルトの名前出さなきゃ危なかったんだからな!」
βにとってαは脅威でしかない。αに何をされてもβは文句を言えない。弁解の余地もなく、βが全て悪いことになる。殴られても物を奪われても――強姦されても。
だから、出来るだけ関わりを持たないよう、波風を立てないようにしている。
「エイク!」
工場の出入り口で、立派な体躯の、軍服に身を包んでいる青年が手を挙げた。精悍な顔つきだが少し垂れ目で柔らかな雰囲気を持つ。彼は俺の無二の親友でαのユンベルトだ。
オリヴァーは俺の肩をポンと叩いて「じゃあな」と去っていく。彼も、αとは関わりたくないのだ。それが、βの当然の反応。でも、俺は記憶が無いことでαへの興味があった。そのせいで嫌な目にも遭ったが、それが今の俺とユンベルト――ユンとの関係を繋いでいる。
「どうしたんだよ、その服!」
「今日は入隊式の予行練習だったから、本番通りに軍服を着て行なったんだ」
新品の軍服に袖を通して、少し照れ臭そうにするユンの腕を軽く小突いて、「似合ってるよ」と言うと、嬉しそうに「ありがとう」と言って笑った。
「行こう」と促して歩き出すと、周囲にいたβが慌てて道の端に寄る。それを見てユンは困ったように笑った。
身長が一九〇ほどあるユンに対して、俺は一七〇くらい――正確な背丈は測ると絶望するので知らない――だから、顔を見る時はいつも見上げる形になる。
ユンは特別技能研修校でも随一の身体能力を持つエリート中のエリートだ。正直並みのαが数人がかりで掛かっても押さえられるかどうかというレベルで、それは出会った当初からそうだった。
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