オメガの城

藤間留彦

文字の大きさ
7 / 45
第一章 第一の秘密

第七話

しおりを挟む
 「総選挙」とは、年に一度行われるいわゆるΩの人気投票である。上位の者ほど多くのテレビ番組への出演など露出が増える仕組みになっている。
 そしてこの投票で最下位になった者は、養豚場に行くことになるのだ。

 だから、労働成績の優秀な者の中には好きなΩのアダルト動画を見たいがためにあえて好きなΩ以外への投票を行う者もいるらしい。
 が、実際のところ目にできるのはごく一部の人間だけだから、普通に好きな子に投票するのが通例だ。

「でもその割に学生時代好きだったベティのアダルト動画ばっか毎回もらってんじゃん」
「そ、それは! 仕方ねえよ! 正直めちゃくちゃヌけるし!」

 俺が唯一観た動画は、オリヴァーに推されて観たベティの動画。発情期の時のものと聞いたので、一応こういう感じかと参考資料として観ただけなのだが、「性感調教~乳首でイク淫らな身体~」とかいうちょっとアレなやつだった。

「エイクはぜんっぜん、Ωに興味ねえよな? そういう意味でお前もブレないっていうか……まあ結構変な奴に絡まれるからかもしんねぇけど」
「……はあ、それな」

 少し他のβよりも見た目がいいというだけで、性的な目で見られることが多かった。工場長もその一人だが、街を歩いていても、目の色違うやつに付き纏われたり暗がりに連れ込まれそうになったりする。
 当然俺も馬鹿ではないから、そいつら全員返り討ちにしてきた。

 具体的には顔面をぐちゃぐちゃにして腕か脚かどこかしらの骨をへし折る。ベストは再起不能になるまで股間を蹴ることだが、まあ流石に相当なことをしない限りはそこまではしない。

「気をつけろよ! さっきだってユンベルトの名前出さなきゃ危なかったんだからな!」

 βにとってαは脅威でしかない。αに何をされてもβは文句を言えない。弁解の余地もなく、βが全て悪いことになる。殴られても物を奪われても――強姦されても。
 だから、出来るだけ関わりを持たないよう、波風を立てないようにしている。

「エイク!」

 工場の出入り口で、立派な体躯の、軍服に身を包んでいる青年が手を挙げた。精悍な顔つきだが少し垂れ目で柔らかな雰囲気を持つ。彼は俺の無二の親友でαのユンベルトだ。

 オリヴァーは俺の肩をポンと叩いて「じゃあな」と去っていく。彼も、αとは関わりたくないのだ。それが、βの当然の反応。でも、俺は記憶が無いことでαへの興味があった。そのせいで嫌な目にも遭ったが、それが今の俺とユンベルト――ユンとの関係を繋いでいる。

「どうしたんだよ、その服!」
「今日は入隊式の予行練習だったから、本番通りに軍服を着て行なったんだ」

 新品の軍服に袖を通して、少し照れ臭そうにするユンの腕を軽く小突いて、「似合ってるよ」と言うと、嬉しそうに「ありがとう」と言って笑った。
 「行こう」と促して歩き出すと、周囲にいたβが慌てて道の端に寄る。それを見てユンは困ったように笑った。

 身長が一九〇ほどあるユンに対して、俺は一七〇くらい――正確な背丈は測ると絶望するので知らない――だから、顔を見る時はいつも見上げる形になる。

 ユンは特別技能研修校でも随一の身体能力を持つエリート中のエリートだ。正直並みのαが数人がかりで掛かっても押さえられるかどうかというレベルで、それは出会った当初からそうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

試情のΩは番えない

metta
BL
発情時の匂いが強すぎる体質のフィアルカは、オメガであるにもかかわらず、アルファに拒絶され続け「政略婚に使えないオメガはいらない」と家から放逐されることになった。寄る辺のなかったフィアルカは、幼い頃から主治医だった医師に誘われ、その強い匂いを利用して他のアルファとオメガが番になる手助けをしながら暮らしていた。 しかし医師が金を貰って、オメガ達を望まない番にしていたいう罪で捕まり、フィアルカは自分の匂いで望まない番となってしまった者がいるということを知る。 その事実に打ちひしがれるフィアルカに命じられた罰は、病にかかったアルファの青年の世話、そして青年との間に子を設けることだった。 フィアルカは青年に「罪びとのオメガ」だと罵られ拒絶されてしまうが、青年の拒絶は病をフィアルカに移さないためのものだと気づいたフィアルカは献身的に青年に仕え、やがて心を通わせていくがー一 病の青年‪α‬×発情の強すぎるΩ 紆余曲折ありますがハピエンです。 imooo(@imodayosagyo )さんの「再会年下攻め創作BL」の1次創作タグ企画に参加させていただいたツイノベをお話にしたものになります。素敵な表紙絵もimoooさんに描いていただいております。

僕がそばにいる理由

腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。 そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。 しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。 束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。 愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

処理中です...