38 / 75
陽川花火編
第一話 始まり③
しおりを挟む
自席に着くと、よく絡んでくる不良が近づいてくるのが分かる。
「お前なんで陽川と急に仲良くなってんの?」
机を蹴飛ばされ、前の席の椅子に当たって大きな音がする。
「あいつもホモなんじゃん?」
「ははっ! マジかよ! キモっ!」
「つか今ヤってきたんじゃね? ザーメンくせえ!」
特に今まで自分に向けられる暴力も暴言も、何も思うところが無かった。暴力に関しては痛みはあるものの、ゴムの膜のようなものが自分の周りに纏わり付いているような感覚で、自分に起こっていることなのかどうかさえ、鈍感になっていた。
「ホモダチできて良かったじゃん、風岡君!」
――だから、昨日忠告したのに。
心底嫌になった。こうなることがわかっていたから、誰とも関わりたくなかった。
陽川花火は、何を目的として僕に近づいてくるのか。嫌がらせをしてくるこれらの方が余程分かりやすくていい。
残りどれくらい続くか分からない人生の道の途中に転がっている石の一つでしかないから。一年後には石があったことさえ忘れているだろう。
でも、自分のせいで誰かに迷惑を掛けるのは嫌だった。勝手に向こうから近づいてきたとはいえ、結局一緒に行動してしまったのは事実。僕が無視して、拒絶していれば良かったのだ。そうしなかったのは、自分の責任だ。
と、不良達が波が引くように僕の周りから離れ、自席に戻っていく。見ると教室の出入り口に陽川花火が立っていた。僕は数学の問題集を開き、視線を落とす。
「さっきは悪かったな」
彼はそう言って僕の机の脇を通り過ぎ、僕の後ろの席に座った。
言わなければ。「もう関わるな」と。もう、何も面倒を起こしたくはない。帰りにもしついてくることがあれば言おうと決めた。
が、午後の授業の後、僕は進路指導担当の先生に呼び出された。
職員室に行くと先生の机の側にパイプ椅子が置かれていた。深刻そうな顔で、僕の進路希望表を持って待っていた。
内容は僕の成績の事だった。正しくは、「この学校のレベルではお前の希望する大学への受験対策は出来ないが大丈夫か」ということだった。この学校の多くの生徒は就職希望で、残りは専門学校か偏差値の高くない大学・短大に進学するという。
僕は自主学習で充分賄えていることと、受験までにある残りの全国模試は個人で申し込むので学校側に対応を求めることは無い、ということを伝えた。先生は肩の荷が下りたようで、何かを紙に書いて「良かった良かった」と笑った。
職員室を出て、まだ時間があったので図書室に向かった。その間に先生が生徒指導室ではなく職員室を選んだ理由を考える。僕と密室に入りたくなかったのだ、と思う。
前の学校での噂は塾が同じだった生徒の口から学校中に広まっており、勿論先生達も知っている。先生達は更に母から僕の行動に注意するように伝えられているから、僕と極力接触しないように、しかし遠くから観察しているような視線を送られているのが分かった。
ただ、学校司書の女性は特に僕に気を留めていないようで、唯一僕のことを知らない人がいる図書室は集中できる場所だった。
というのも、そもそも図書室を利用する生徒はほとんど居らず、放課後ともなると今まで毎日のように通っているが、一人も見かけたことが無かった。
静かで集中出来る場所なので、いつも図書室が閉館になるまで勉強してから帰る。家に帰ってからも、晩御飯と風呂以外は寝るまで勉強をしているのだけれど。
勉強はただの暇潰しで、好きでも嫌いでもない。
「お前なんで陽川と急に仲良くなってんの?」
机を蹴飛ばされ、前の席の椅子に当たって大きな音がする。
「あいつもホモなんじゃん?」
「ははっ! マジかよ! キモっ!」
「つか今ヤってきたんじゃね? ザーメンくせえ!」
特に今まで自分に向けられる暴力も暴言も、何も思うところが無かった。暴力に関しては痛みはあるものの、ゴムの膜のようなものが自分の周りに纏わり付いているような感覚で、自分に起こっていることなのかどうかさえ、鈍感になっていた。
「ホモダチできて良かったじゃん、風岡君!」
――だから、昨日忠告したのに。
心底嫌になった。こうなることがわかっていたから、誰とも関わりたくなかった。
陽川花火は、何を目的として僕に近づいてくるのか。嫌がらせをしてくるこれらの方が余程分かりやすくていい。
残りどれくらい続くか分からない人生の道の途中に転がっている石の一つでしかないから。一年後には石があったことさえ忘れているだろう。
でも、自分のせいで誰かに迷惑を掛けるのは嫌だった。勝手に向こうから近づいてきたとはいえ、結局一緒に行動してしまったのは事実。僕が無視して、拒絶していれば良かったのだ。そうしなかったのは、自分の責任だ。
と、不良達が波が引くように僕の周りから離れ、自席に戻っていく。見ると教室の出入り口に陽川花火が立っていた。僕は数学の問題集を開き、視線を落とす。
「さっきは悪かったな」
彼はそう言って僕の机の脇を通り過ぎ、僕の後ろの席に座った。
言わなければ。「もう関わるな」と。もう、何も面倒を起こしたくはない。帰りにもしついてくることがあれば言おうと決めた。
が、午後の授業の後、僕は進路指導担当の先生に呼び出された。
職員室に行くと先生の机の側にパイプ椅子が置かれていた。深刻そうな顔で、僕の進路希望表を持って待っていた。
内容は僕の成績の事だった。正しくは、「この学校のレベルではお前の希望する大学への受験対策は出来ないが大丈夫か」ということだった。この学校の多くの生徒は就職希望で、残りは専門学校か偏差値の高くない大学・短大に進学するという。
僕は自主学習で充分賄えていることと、受験までにある残りの全国模試は個人で申し込むので学校側に対応を求めることは無い、ということを伝えた。先生は肩の荷が下りたようで、何かを紙に書いて「良かった良かった」と笑った。
職員室を出て、まだ時間があったので図書室に向かった。その間に先生が生徒指導室ではなく職員室を選んだ理由を考える。僕と密室に入りたくなかったのだ、と思う。
前の学校での噂は塾が同じだった生徒の口から学校中に広まっており、勿論先生達も知っている。先生達は更に母から僕の行動に注意するように伝えられているから、僕と極力接触しないように、しかし遠くから観察しているような視線を送られているのが分かった。
ただ、学校司書の女性は特に僕に気を留めていないようで、唯一僕のことを知らない人がいる図書室は集中できる場所だった。
というのも、そもそも図書室を利用する生徒はほとんど居らず、放課後ともなると今まで毎日のように通っているが、一人も見かけたことが無かった。
静かで集中出来る場所なので、いつも図書室が閉館になるまで勉強してから帰る。家に帰ってからも、晩御飯と風呂以外は寝るまで勉強をしているのだけれど。
勉強はただの暇潰しで、好きでも嫌いでもない。
0
あなたにおすすめの小説
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる