創造主は崩壊寸前の世界の王子に恋をする。

mkxw

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塔の天井が開かれ、夜空に広がる光の粒――
 それは未だ誰にも選ばれていない「未来の可能性」だった。

 星ではない。世界だった。
 光ひとつひとつが、新たな世界の種。

「これが……創造の源……」

 俺は言葉を失った。

「悠」

 カイが俺の手を強く握る。
 その体温が、現実へと引き戻してくれる。

「君の願いが、この中から“形”になる。
 けれど、選べるのは一つだけ。理想と代償は、いつも隣り合わせ」

 塔の中央に、光の柱が立ち上った。
 その中には、俺が想像した記憶の断片――笑い合う人々、平和な町並み、温かな日常――が浮かんでいた。

「これが……俺の、理想の世界……」

 だけど。

「それを創るために、何かを壊すことになるんだよな」

 カイは黙って頷く。
 塔がゆっくり震えはじめる。

 この選択が、現実の世界に“書き換え”として現れる前兆だった。

「俺が願えば、世界の“設定”は変わる。
 戦争のなかった歴史、傷つけ合わない種族、死なない命だって選べるかもしれない」

「でも、悠。それは“今ある世界”を消して、新しく上書きすることだよ。
 君が守ろうとしていた人々、街、記憶、カイを含め――すべてが、変わるかもしれない」

「……カイを?」

 その可能性に、胸が締めつけられた。

「記憶だけじゃない。存在そのものが、“今のカイ”じゃなくなる可能性がある」

「じゃあ……お前と、この関係も……」

 俺の震える手を、カイが優しく包んだ。

「僕は、どんな形でも君のそばにいる。
 だから、悠が“創りたい世界”を選んで。後悔しないように」

 

 柱の光が、俺の胸に染み込んでいく。

 脳裏に、今までの旅路が走馬灯のように流れていった。

 苦しかったこと。泣いた夜。
 それでも――いつも隣にいたのはカイだった。

 

 俺は、静かに目を閉じた。

「俺は、“今のこの世界”を選ぶ。
 壊したくない。犠牲なんていらない。
 理想なんかより、お前と一緒にここにいたいんだよ」

 開いた瞳の奥で、光の柱が砕けた。
 塔が震え、空が割れる。

 代償を拒んだ俺の選択に、世界が揺れている。

 けれど――

「選んだな、創造主」

 例の黒マントの男が、塔の外から現れる。

 だがその声は、どこか穏やかだった。

「壊すことを選ばぬ創造主か。お前こそが“破壊と調和の核”なのかもしれん」

 彼は小さく笑って、虚空へと消えていった。

 

 塔の上空に、ひとつだけ残った“世界の種”がゆっくりと落ちてくる。
 俺は手を伸ばし、それをそっと掌に収めた。

 温かくて、やさしい光。

「これが、俺たちの未来」

 隣で、カイも静かに微笑んでいた。
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