創造主は崩壊寸前の世界の王子に恋をする。

mkxw

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ひび割れた黒の仮面の奥から現れたのは、俺に酷似した存在だった。
 だがその瞳は虚ろで、深い絶望と怨嗟を湛えていた。

 

「お前は……」

『俺は、お前が創らなかった可能性。
 選ばれなかった未来に取り残された、お前自身だ』

 

 その声に、俺の胸が締めつけられる。
 知っている。こいつの存在を、ずっと――忘れようとしていた。

 

『なぜ俺を否定した? なぜ捨てた? お前は、自分で選んだくせに、俺の痛みから目を背けた』

「……違う、俺は……」

『違わない! お前は創造主を名乗りながら、責任から逃げた。
 この世界の“善い部分”だけを残し、俺のような存在を捨てた。
 ――お前こそが、世界を壊す“本当の闇”だ』

 

 その言葉は鋭く、俺の心を突き刺す。

 カイが俺の肩に手を置いた。

「悠……大丈夫。聞いて。お前は、そんなふうに人を切り捨てるような奴じゃない」

「でも……カイ、こいつの言ってること、全部、間違ってない。
 俺は、自分に都合のいい選択をして、知らんふりしてきた……!」

 

 “もうひとりの俺”が手を伸ばし、俺の胸を掴んだ。
 指先から黒い靄が流れ込んでくる――。

『戻ってこい。俺たちは一つだった。
 そうすれば、苦しまなくて済む。もう、何も選ばなくていい。誰も傷つけなくていいんだ……』

 

「……やめろ」

 その声は、自分のものとは思えないほど静かだった。

「たしかに、お前は俺だ。俺が創った、俺の中のもう一人。
 でも、だからこそ――俺は、お前を否定しない。
 否定も、肯定も、全部引き受けて……共に生きる」

 

『……なぜ、そんなことを?』

「一人でいるより、二人のほうが強いからだ。
 痛みも悲しみも、分け合えるなら――俺は、お前を拒まない」

 

 そのとき、“もうひとりの俺”の姿が微かに揺らいだ。

 黒い靄が薄れてゆく。

 

『……そんなの、信じられるわけ……』

 声が震える。

『……俺は、お前に消されるって思ってたのに……!』

 

「消さない。お前がいたから、俺はここまで来られた。
 ずっとお前の存在に支えられてた。気づかずに、でも、ずっと一緒だったんだよ」

 

 俺は、そっと彼――“もうひとりの俺”に手を伸ばした。

 手を握ると、その影はふっと軽くなり、涙のように空気に溶けていった。

 

 その最後の一粒が、俺の胸の中心に吸い込まれていく。

 心が、完全にひとつになった。

 

 カイがそっと、俺の背中に腕をまわした。

「ようやく……本当の意味で、“おかえり”だね」

「ああ……ただいま」

 

 空が開ける。
 重く垂れこめていた雲が晴れ、陽光が差し込んでくる。

 世界が静かに――再び、呼吸を始めた。

 

 でもまだ、終わりじゃない。
 本当の戦いはこれからだ。

 俺とカイ、そして、すべての“可能性”を抱きしめた上で――

 この世界を、守る。
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