創造主は崩壊寸前の世界の王子に恋をする。

mkxw

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すべての音が消えた静寂の中、俺たちはただ“存在”していた。
 時間も重力もない、始まりにも終わりにも届かない場所。

 

 そこにあったのは――一滴の光。
 小さな、小さな、けれど限りない可能性を秘めたひとしずく。

 

 俺は、カイと視線を交わす。

「これが、世界の種……」

「ここから、また“すべて”が始まるんだね」

 

 ふたりで、その光に触れた瞬間、全身が弾けるような衝撃に包まれた。

 思考が広がり、魂がほどけ、無数のイメージが奔流のように流れ込んでくる。

 風の匂い、土の感触、川のせせらぎ、人々の笑い声、涙、祈り、命の声。

 

 それらが交じり合い、“世界の骨格”が形を取り始めた。

 

「悠、この世界……どんなふうに創る?」

 カイが、まるで絵筆を握るように指先で宙を撫でる。

 

 その軌跡に、空が生まれ、大地が生まれ、風が吹く。
 生命が宿る――それは、魔法なんかじゃない。願いの力、愛の力だった。

 

 俺もまた、手を伸ばした。

 ふたりの創造は重なり合い、広がっていく。
 悲しみのない世界じゃない。でも、乗り越えていける世界。

 ひとりきりじゃないと、信じられる場所。

 

「ここは……お前と創った世界なんだな」

「うん。最初にひとりで創った世界とは、全然違う」

 

 静かに、けれど確かに芽吹いていく命。
 草木が風に揺れ、鳥たちが空を駆け、子どもが笑う声がどこからか聞こえてくる。

 

 すべてが、優しい。

 

 けれど――その優しさは、“脆さ”と隣り合わせだ。

 だからこそ、守りたいと思う。

 

「この世界に、俺たちの名前を刻もう」
「これは、“ふたりで創った世界”。君がいて、俺がいて、だから生まれたんだ」

 

 カイが微笑む。

「じゃあ、名前は……《レクオリア》。“記憶の祝福”って意味で」

「……いいね。それにしよう」

 

 こうして、新たな世界《レクオリア》が生まれた。

 かつての苦しみも、喪失も、涙も、
 すべてがこの光の一部として、未来へ受け継がれていく。

 

 俺は、カイの手を取った。

「ありがとう、カイ。お前がいてくれて、本当によかった」

「こっちこそ。……君が創ってくれたこの世界で、君と生きていけることが、何よりの幸せだよ」

 

 ふたりで微笑み合ったその瞬間、世界が確かに“息をした”。

 

 そして――時が、再び動き出す。

 風が吹き抜け、生命が目を覚まし、歴史がまたひとつ、始まりのページをめくる。

 

 これは、新しい物語の、第一章。
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