煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード7ー4

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急に出かけることになり、少し慌ただしくなる。
夕方には雨という予報が出ていたので、出かける直前に洗濯物を室内干しに変えて慌ててでかけた。

たかだかバス停までも足が重く感じる。
(やっぱり、体が重いな…。)
買い物用とかの服ではちょっとラフすぎつかもと、ほんの少し着飾れる服はウエスト周りがちょっとだけきつくなってきた気がする。

なんとかカッコつけられる服が今日はワンピースしかなく、少し前のデザインだったがそれを着て出かけることにした。

(大丈夫、デートとかじゃないから。なんせ、一応病院だし)
そう言い聞かせて進む。幸いなことにあまり待たずにバスが来た。空いていたから席に座る。たった2停留所なのに…、とますます気が重くなる。

服も最近は買ってない。ちょっと前まで夫が忙しくて買い物できてない。
自分で買い物に行って、家族カードとはいえ夫の管理している口座から引き落としされるのは気が引ける。その感覚を持ち合わせてないし、なんとなく監視されている感じもして気が進まない。

かといって、ネットの服は自分に置き換えて想像するとなんだか似合わない気がして、今のところ下着ぐらいしか買ってない。
それも、自分での注文じゃなくサイトで気に入ったもののリンクを夫に送り買ってもらう。
よくわからないが、ネットで買ったりすればするほど得なのだそうだ。
ポイント…のあたりまではわかるけど、その先の仕組がよくわからない。

(世の中の人はそういうのを、どこまで理解して使いこなしているんだろうか。)
よくわからないから、結局のところ現金で支払えるところが落ち着く。
そんなことを考えているうちに病院についた。

ここに来るのは初めてだ。
何かあったときのためにと、家の近くの施設を一通り把握してはいるが、普段はマンションの近くにある個人病院を結婚後の新しいかかりつけ医院にしているので、まだ一度もお世話になったことはない。

近所のかかりつけの方も、病気で世話になるというよりは毎年の検診や予防接種くらいの利用だ。風邪を引いても、つい薬でなんとかしようとしてしまうのは、悪い癖だと思ってはいる。

とにかく、大きい病院なんて普段から縁のない場所なので、少し緊張しながら入口に入った。
とりあえず案内を見ようと思ったが、それより先に受付を見つけたのでそこで聞くことにした。
フロアを聞き、予約があるならそのまま向かってくださいと言われたので、案内に従う。見渡すとコンビニだけじゃなくカフェまであるので、なんだか不思議な感覚だった。

<心療内科>

昔は、精神科というカテゴリーの中にあったので、なかなか足が向かないところだったと記憶している。ただ最近そのあたりが見直されてきた。アメリカとかの影響が大いに関係あるのは間違いない。夫の会社にも社内のカウンセラーがいて、気楽に行くようにと言われているそうだ。

そういうこともあり最近では違和感なく通える場所の1つになりつつある。

待っている間、久しぶりにドキドキしていた。
何を話そう、どう話そう。色んな思いが去来した。

けれども、千草は多分この部屋の中に10分もいることができなかった。
緊張とともに入ったその部屋のことなんてほとんど覚えていない。なんとなく、白い空間、座り心地のいいソファー、耳障りのいいBGM。目に焼き付く時間もないまま、挨拶もそこそこに住所と名前が書いてある名刺をもらい追い出され気づいたらタクシーに乗っていた。

名刺には、住所と名前だけが書いてあった。
(御幸 来夢)と。

その頃、千草が後にした部屋で夫の友人のカウンセラーは、受話器を取って手慣れたように電話をかけた。
「彼女、今向かったよ。…うん、渡した。…うん、そうだな、じゃあまた。」
受話器をおくと、彼は日常に戻っていった。

その頃、まさか夫が出先でアクシデントに見舞われているなんて思いもよらないでいた。

病院で10分、タクシーで10分。2時前には、そのビルの前に立っていた。
さほど高くないビルなので、エレベーターなんかなく少し暗めの階段が千草を待っていた。

ここまで来て、少し躊躇する。入り口の前を3往復して心が決まりようやく階段をのぼることにした。後ろから誰かがついてきているとも気づかずに。

ドアをノックし、開いた瞬間不意に誰かに肩を叩かれたような気がした。

急なことで数秒意識が遠のいたような錯覚に陥った。われにかえる。振り向いたが誰も居ない。眼の前には青年のような少年のような人が一人笑顔で出迎えてくれたのだった。

そんなことを思い出していると、千草の想像よりも夫が早く戻ってきた。どうやら本当に飲み物を取りに行ったようで手に何かを抱えていた。

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