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しおりを挟む「ひぃ、や、やぁ、ぁ、あ」
背後から覆い被さる男に押さえ付けられ身動きがとれないまま性衝動を叩きつけられる。これが青年ルークにとって人生初の性交渉である。
同性に犯されるなど想像すらしたことがなかったのに現実はそんな彼を裏切った。認めたくないが、内壁を擦りあげられる度に下腹部がキュンキュン震えて喜んでいる。ぱんぱんと肉のぶつかる音が落ち着いても、耳孔に舌を差し入れられ、ぐちゅぐちゅと唾液の音が脳まで犯そうとしてくる。
逃げたいのに逃がして貰えないままビクンッビクンッと激しく背を跳ねさせてルークは身悶えた。
「ああン、も、やあああああっ」
そもそもどうしてこんなことになったのか。
ルークは孤児だ。地味な見た目、中肉中背の、これといって特徴のない貧しい平民。
この国では孤児院に在籍できるのは基本的に16歳までと決められている。子供達は絶対的な期限を前に誰しもが焦りつつ、奮闘している。
そんな環境下で18歳になっても孤児院に残るルークは異質だ。それもそのはず、最早ルークは孤児ではなく一人の大人として孤児院を運営する側である。後継者と認められ、日々資金繰りに悪戦苦闘しながらも、毎日子供達と笑って、楽しく暮らしていた。
そんな幸せな日常が、実は大変脆いものだったのだと突き付けられる瞬間は唐突で。
突然武装した騎士達が孤児院に訪れた。
「ルーク様ですね?どうかご同行願いたい」
怯える子供達の保護者として、盾として、ルークに応じないという選択肢はなかった。
窓を塞がれた馬車で連れて来られた先は見覚えのない場所だった。大理石の床や、白亜の壁が、平民には手の届かない財産を突きつけている。そんな建物内でお仕着せ姿の女性たちに顔色一つ変えずに服を剥かれ、身体を清められ、全裸のまま暗い一室に押し込められ。
暗さに驚き、ドアにしがみついたルークの背後で、何かが動く気配がした。恐る恐る振り向く頃には少しづつ暗さに目が慣れてきて、寝台の上に大柄な影が四つん這いになっているのを発見した。影はまるで威嚇する猫のように腰を上げ、ふーッふーッと荒い呼吸を繰り返している。顔は見えないが恐らく人間の、男性だろう。
「…あの、大丈夫ですか?」
苦しそうな相手が心配になり、恐る恐る近づいて手を伸ばす。そんなルークの優しさを踏み躙るように、爪が食い込むほどの力で腕を捕まれ、寝台の上に転がされ、足首を掴まれ、両脚を大きく開かされる。
「や、何を───ッ」
怯えて萎れる陰茎をよそに、乱暴者の太い指がぐにぐにとルークの尻穴をまさぐる。冷たい液体を直接穴に注がれ、そのおぞましさにルークは暴れるが、男の方が力強くて抑え込まれてしまう。慎ましやかな孔を指で内側から広げて男が喉を鳴らす。やだ、こわい、やめてと幼子のように手足をばたつかせるルークだが、男が何をしようとしているのか察せないほどウブでは無い。察したからこそ余裕も見えもなく暴れる。
舌打ちされ、男の全身で潰すように身体を抑え込まれ、めりめりッと強引に貫かれた。
「─────っ」
痛みに歯を噛み締め、脂汗を流しながら身悶える。どくんどくんと心臓がふたつあるかのような動悸の噛み合わなさに気持ち悪さを覚え、ルークは気を失った。
どれくらい気を失っていたのかわからないが、いつの間にかうつ伏せにされ、ルークは犯され続けていた。ゴリゴリと内側を削られていく、割り開かれていく。そんな現状を理解した途端、名状しがたい電撃のような刺激が駆け巡った。
「ひぐぅ───!」
ぎゅぎゅっと後孔を締め付けてしまい、縁が捲れるのではないかというほど肉棒に引きずられる。ガツンッと一際強く内壁の行き止まりを陰茎で殴られ、そのまま胎内で熱の塊がぶちまけられた。その熱さにルークが流した涙すら舐め取られ、奪われる。
だが、果てたなら、もうこの悪夢も終わりだろう。背中にのしかかっていた重みが薄れ、ホッと安堵の息を吐く。最早抵抗するだけの気力は残っていない。しかし、一向に胎内から出ていかない雄に嫌な予感を覚えて肩越しに相手を見遣る。
改めて見た男は、絵画にでも登場しそうなほど、見事な銀髪の、精悍な男だった。青い瞳が剣呑な色を湛え、荒く浅い呼吸が飢えた獣のよう。どこにでもいる茶髪に黒目のルークとは異なる、どこにいても目立ちそうな男。記憶を探ってもルークには男が誰か分からない。
ようやくゆっくり抜かれ始めた楔に、何度目かの吐息を零すと、不意に後ろから両腕を掴まれ、ルークは瞠目した。馬の手網を引くように両腕を引かれ、上半身を逸らす。シーツに擦り付けられていた乳首が外気に震えた。軽く膝を立て、ルークが腰を持ち上げると、再び男が動き出す。先程までとは違った壁側を意図的に擦られ、目の前がチカチカする。本人の気付かぬところで快楽に溺れた瞳が妖しい輝きを放つ。
「や、もう、おわり、とまって───」
ルークの嘆願に男が応えることはない。その代わりとばかりに今度は奥ではなく、入り口付近を丹念にぐぽぐぽと掻き回される。その少し先に、決定的に訳が分からなくなってしまうポイントがあるのに、あくまでその手前でグラインドする。
「あ、あ、も、」
欲しい。決定打が、トドメが欲しい。そう望んでしまう己が信じられなくて、嫌で、振り払おうと左右に頭を振り乱して啜り泣く。自ら腰を振り出したことにさえ気づかず、ルークの理性は戦っていた。
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