指先で描く恋模様

三神 凜緒

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第二章

それぞれの家の夜~

時代っていうのはどこまで便利になって、どこまで不便になっていくのかな?
先生たちがよく言っているのは、昔はもっと無駄な事を楽しんでいた。
無駄の中にこそ余裕が産まれ、無駄な事だから真剣になれて、バカ騒ぎが出来たと言ってた。

「高い…いや、本当に高いね…最近のコンビニってこんなにお高いの?」
「最近色々と…円安だとか、消費税だとか、お米や小麦が高くなったとか…色々高くなる原因が多いしね~」
「あっ…これ半額シール貼ってる…これにしよっかな? でも…これは辛くてきついかな…」

煌々と輝く店内の明かりに誘われるように入ったコンビニの中で、また来客を知らすインターホンが鳴り響く。アタイと母さんは二人で買い物かごを持って商品を見ていた。
手に取っては、また置いて、手に取ってはまた置いてと…繰り返しながら二人で顔を合わせてどれが良いか話し合ったりしていく…

「お肌の為にもやっぱり…美容に良いクエン酸のドリンクとか…やっぱりいるかしらね?」

気づいたら母さんの姿が隣にいない…夕飯のチョイスをしているかと思ったら、美容に良いというドリンクのある冷蔵庫の方へ… どうやらお店に入ってからずっと気になっていたらしい…美容とか疲労とかに良いっていう宣伝文句を大々的に宣伝しているから気になっていたご様子だ…
……母さんの場合実年齢よりもかなり若く見えるのって、肌年齢が若いのが原因だよね? スキンケアを欠かさずしているのかな?

「この物凄い…酸っぱい奴のこと? 確かに定期的に飲めばお肌に良いと思うけど…広良のアトピーもあるし、何個か買っておこっか?」
「あの子飲むかしらね…酸っぱいの苦手だって言ってたけど…でも、買っちゃお♪」

手に取ったドリンクを四本ほどかごに入れてから、また弁当コーナー…から横にあったサンドイッチを二つほど自分用にカゴに入れた後に、サラダを手にして……手に取ってからまた棚に戻して、手を止めて唸っていた。
なんか…サラダはサラダでも…野菜よりも牛タンとか、鶏肉とかが多いタイプのサラダを手にして唸っている。おかしいな…母さんの好みって野菜スティックタイプとかが好きだった気がするんだけど…?

「あの二人って何を食べるのかしら…分からない…」
「広良はお肉系の丼好きだけど、父さんは…のり弁とか魚とか…さっぱりした感じの物が好きじゃなかったっけ? ただ二人とも…野菜はあまり食べないよね」
「そうなのよね~ でもお野菜とか食べて欲しいし…野菜ジュースは不味いって不評だし…なんでこんな時ばかり…お父さんにはメールを送っても反応ないのよ~広良は何でもいいって言うし……それが一番困るのよ」

肉系列の丼物なのは決定として、問題はサイドメニュー…恐らく、これだけじゃ足りないというのは確実だし、サラダとチキンの揚げ物とかで良いかしらと…ブツブツと真剣な表情で悩んでいる母さんの隣で苦笑をしちゃてた。

「本当にどうしよっかな‥アタイは…あっ…冷凍食品のスペゲッティも良いね…これにしよ」
「あら…随分と安いのを選ぶのね? 良いの?」
「うん~これでいいや」

これがいいなと自分の分を選んで気が緩んだのか、軽く欠伸をしてから…何となく周りを見回してみる…母さんはまだ選んでいたんだけど…店内を少し歩いてみる。
会社帰りのサラリーマンや、トラック運転手ぽい人や、アタイたちみたいな親子連れの人、大学生の女の人二人組…

「駐車場を見た時に結構人がいるなって思ったんだけど、あの車の量に対してお客さんがいないのって…店員さんの車も入っていたのかな?」

ブラブラと店内を回りながら他の人の様子や、面白いお菓子がないかなと手に取っては、何となくイイやとまた棚に戻してしまう。
外を見ると、もう真っ暗になっており…いくつもの車と、自転車の姿が。窓ガラスにはどこか笑っている自分の顔が映っていて…はにかむと少し可愛い…気がする!

「アタイって…綺麗な方の容姿だよな…うんっ―――って何を言ってるんだ…はぁ~」

弁当コーナーへ戻ると、母さんは二人の分を選び終わったみたいで、アタイに何かほかに欲しい物はないの? と訊いてきたから首を横に振り、二人でレジに並ぶ。
帰る頃には普段ならもう、父さんは家に戻ってるはずなんだけど…ちゃんと広良が説明してくれてるかな?

――――
――――――――
氷雨家では大抵の物は自作してしまう風潮がある。その方が安上がりだから…っていうのがあるんだけど、もっと言うとその方が美味しいから…ってのも大きい。

「ビールの返礼を色々考えたけど…やっぱり…手作りケーキでも贈ろうかね…夜中に作っておこっかな…」
「シフォンケーキとか良いんじゃない? あれなら簡単に作れるし」

台所で手に持っている明日作成予定の兵士や移動砲台のプラモ部品を一つずつにらめっこをしながら丁寧に洗いながら…ケーキレシピ本とにらめっこしている母さんに声をかける。
俺はプラモから手を離して、冷蔵庫から卵や牛乳を取り出し台所の作業台に乗せておく。さっさと材料を常温に戻した方が美味しくなるからだ。後はグラニュー糖に~サラダ油に…生クリームはさすがに買ってないから、明日すぐに買って来れば良いんだけど…

「明日休みだし、向こうの家に持っていくよ」
「うん、お願いね」

材料を粗方作業台に乗せると、洗い終わったプラモを持って自分の部屋に。
出荷状態のプラモには汚れとか、型から外す時に使われる離型剤とかついているので、それを洗剤で洗った方が塗料がのってくれる。手間だけど仕方ない…
自分の部屋に戻ると、積みプラの山があり、その隣にはプラモ用の作業台…とはいっても普通の勉強机に、ベニヤ板を壁際に立てかけ釘を打ち込み、100均で買ったワイヤーネットのラックをいくつか立てかけ、筆や塗料やうすめ液、マジックなどを仕舞ってある。
作業台の前に座り、ザルに入れてあるプラモの部品を一つずつ綺麗なタオルで拭いてから、乾燥用の箱の中に一つずつ入れていき、埃が入らないように蓋をする。乾燥機なるものも売ってのは見た事あるけど、そこまで急ぐ訳でもないから自然乾燥だ。

「とりあえず、これはこのままで良いとして…昨日乾かしておいた細筆を二本ぐらい…今回は迷彩服にする訳じゃないから、そこまで手こずらないと思うけど…基本は緑と黒と…縁を金色にするぐらいか…」

机の引き出しから設定資料を取り出して…何度もお気に入りのページを見返していると…そのままデザインをコピーするのではなく、少しアレンジを加えられないかと考えたりもしてしまう…

「アニメ本編にはあまりないけど、サーモグラフィーのカメラとか…暗視ゴーグルとか…確か他のセットでそういうの前に作ったのあったし…上手くサイズ合うかな~」

確か自衛隊の人が、暗視ゴーグルを頭に付けると前のめりになりそうになるからと、頭の後ろにも錘をつけていたって話を思い出して、後頭部を守れるようなヘルメットを付けるのもありかなと…色々妄想をしてしまう。

「手持ちにそういう装備持ってるし…腰につけたり、頭の上に暗視ゴーグルつけて…偵察兵のような通信機やレーダー積んでるリュック背負わせれば‥それっぽく見えるかな~」

パイロットの装備ではないけど、小隊のサポートをする偵察兵としてそういうのも一度作ってみようと考えながら、今日はシンプルにパイロットの兵士を作ろうと頭を切り替える。

「とりあえず、パイロットにもライフルや、小銃はコックピットに持ち込むはずだし、肩にライフル下げさせて…敬礼の仕方は海軍方式が良いかな~コックピット狭いし…」

見た目は陸軍ぽい制服だけど、敬礼が海軍というのもまた‥ミスマッチだけど面白い感じもする。日本では元々、空軍は海軍の管轄であり形式も海軍の物に統一していた。
それは戦闘機が空母から発着する事が多い事から管理を一括していた所にある。
このロボットアニメでも空飛ぶ空母から発着する描写があるし…やっぱり海軍方式である、脇を閉めた感じの敬礼の方がよいだろうと、腕の付け根の角度を削っておくか…

「制服もちゃんとピシっとボタンを締めて、凛々しい感じのがやっぱりいいよな~」

自分好みで兵士をチョイスしていき、塗装前に軽く加工をしていく…手慣れた物で作業そのものはすぐに終わり…削りカスを小さなチリトリで回収し、軽く削った部分を洗った後に…そこを乾かしてる間に胴体の塗装をし始める。
最初は全体に緑で塗ってからその上に、黒や金を上書きするように重ね塗りをしていく。

「やっぱりスプレーよりも筆塗りの方が感情が乗って、面白いんだよな…」

制服の金縁の塗装はかなり難しいと思うけど、まっすぐな線を引くために毎日腕を静止させるための筋トレはしているから、線がグニャグニャにならないのは実はかなり気持ち良い。
制服を塗装し終えると‥頭の部品の方へ…拡大鏡を設置して顔をアップで見ながら、まるでその顔を撫でる様な気分で筆を動かす。

「心配しなくても、イケメンにしてやるからな~どれどれ」

凛々しくてビシっとした感じの表情をイメージしながら描く。せっかく生まれて来たのだから、出来れば周りから格好いいと思われるような奴になって欲しいという想いを抱きながらいつも作っている…んだけど…!恥ずかしいから絶対に誰にも言わないでいた。

「ヨシ…これでいいかな…後は乾かして…手足を接着剤でくっつけて~明日ツヤ消し振りかければ…」

ひと段落した時には数時間が経過しており、もう深夜に…明日休みだとは言えこれは長すぎたかなと苦笑いしながら、机の上に置いてある鏡に写る自分の顔を見たら…苦笑いかと思ったら、思いっきりニヤニヤと嬉しそうに笑っている男の表情が見えていた。

――――あれ? 俺ってこんなニヤついてるような男だったっけ? もっと凛々しいクールな表情をしてると思ったのに…まさか母さんもそれに気づいて……
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