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第二章
氷雨君から見た家族の風景1
父親ってのがどんな物なのか、母からの話やドラマやマンガとか、色々情報を仕入れてはいるが正直分からない事ばかり。休日の家庭ってどんな雰囲気なんだろ?
結局、玄関先の前で右往左往していたら…家の住人とばったりと会ってしまうというのは、さっさとケーキを渡せというお達しなのかな?
「ふむ…君…」
「はいっ…あの…」
知り合いの家族に会うのって妙な緊張感を持ってしまい、掌に汗が滲む…
この人年齢はどれ位なんだろう…見た所30代前半? いや美桜ちゃんの年齢から逆算すると40前後のはず? 10歳ぐらいは若く見える…ただ凄く辛そうな姿なのが気になる…もしかして腰でも痛めてるのかな?
「言っておくが…娘はやらんぞ!」
「ていぃ!」
「ぐはっぅ! こ…お腰が…!」
朝日がやっと家々の隙間から顔を出し上へと昇ろうとしている頃、日差しに少し目を閉じた次の瞬間には、おじさんはすでに一人で立っており…先ほどの風景が幻覚だったのではないかと思う程に、綺麗に直立して立っていた。
「あれ? おかしいな‥今物凄くむごい一撃を腰に浴びてるのを見たんだけど‥気のせいかな?」
「君は誰かな? 美桜の友達のようだが…」
「ああ、はい…美桜さんと同じ学校で…一年上の氷雨って言います」
何を心配しているのか…父を横目でジっと見つめながら…冷や汗を垂らしながら愛想笑いのような笑みを浮かべる美桜ちゃんに、娘から少し離れて立ちながら、ちょっとだけ足を震わせながら、
「昨日、美桜さんのお母さんからビール箱を頂きまして、母がそのお礼にと…手作りケーキと紅茶を渡してきてくれと言われまして」
「おや、そうなのかい? 私はてっきり『娘さんを僕に下さい』とのたまおうかと…はぐぅ!」
空を見上げると、空を番《つがい》となったトンボがホバリングをしながら優雅に飛んでいた。どこか卵を産める川辺などを探しているのか…もしくは庭の池とか…中学の頃に一番見てて切ないのは、雨で出来た水たまりに卵を産んでるトンボを見た時は本当に悲しかった事もあったっけ…。
「最近トンボも数減ってるのか…本当に見ないよな…」
「イタタタッ…ちょっとした冗談じゃないか~」
「やかましいわっ!」
目にも止まらない程の速さで美桜ちゃんが何かをしてたようだけど、俺の目には映らなかった。ただ二度目は流石にきつかったのか…冷や汗っていうよりも脂汗を流しながら、おじさんが腰を抑えて唸っていた。
「やれやれ…初対面だしちょっと緊張をほぐそうとしたんだが…すまないね。家の娘はどうも母親に似ず、恥ずかしがり屋なようで…あたたあっ…」
「父さんがわ~る~い!」
「お二人とも仲が良いですね…」
先程見たトンボたちがどこに向かって飛んで行ったのか‥ふと目線で追ってしまう。
あの二匹はちゃんと産卵場所を見つけられたんだろうか…毎年心配になった所で、何かが変わる訳でもないのに…
「アハハ・・・そうかい?」
「あ、…ごめんなさい氷雨先輩…いやそんな…そんな事ありませんよ! こんな無神経な父親!」
二人の会話を見ていると持っていたケーキが重く感じていく。玄関の扉が開き昨日も出会った美桜ちゃんのお母さんが…助かったなという気持ちと、何となく形容しがたい感情が渦巻いているのを感じていた。おばさんに渡そうと箱を前に出していく。
「二人とも家にいないなと思って外に出てみたら…氷雨君? この箱は……」
「昨日はどうも…あの…これ…これ母からのビールのお返しにって作ったシフォンケーキと紅茶です。ご家族でどうぞ召し上がってください」
「あらあら~♪ そんなお返しなんて考えなくて良かったのに…処分に困ってたのを押し付けただけなのに…本当にありがとうね」
ただ願わくば‥トンボたちも己の生きた意味を残せたら良いと思っていた。
昨日作ったプラモでもそうだが…生まれたからにはイケメンだと思われるような…そんな生き方が出来ればな…
何て、自分がそんなイケメンな生き方をしてる訳でもないのに…何をつまらない事を考えているのか…
「いえ、母は手作りケーキ作るのが好きなので…処理するのが大変だからって、理由をつけてはケーキ作るのが好きなだけですから…」
「良いわね~料理好きなお母さまなのね?」
「事務仕事よりは100倍楽しいって言ってます…」
パティシエが太っていたり虫歯が多いのって、そもそもが試食や作ったお菓子の処理が大変だからって言うのがあるんだという事を思い出しながら、そういえば買い物頼まれていたんだよな… あ~今日は肌寒くなるから…使い捨てカイロを買った方が良いかなと思考を全く別の方向へ……
「ねえ…良かったら一緒に食べない?」
「えっ? いやこの後用事が…」
「良いから、良いから♪」
「おお~それは良いね? 出来るだけ長くお邪魔してくれても構わんぞ? 私はその間、整体師の方へ…」
「何言ってるのよ~? 家族みんなで食べた方が美味しいに決まってるじゃない♪」
買い物やら、何やらと色々用事があるんだという言葉を口にする前に…おばさんに捕まってしまう。昨日も思ったんだけどこの人…もしかして推しが強い…?
ケーキの箱を持ったまま、そのままズルズルと家の中へと連れられていく…
「ぐぁっ…いやちょっと、私は甘いものが…」
「緑冴ちゃんが好きなのは勿論知ってるわよ? さあ、行きましょ」
「父さん…諦めていこ? 母さんに逆らうだけ無駄だから……」
「お父さん…本当にコルセット着けないと、まともに座る事も出来ないよ~」
結局、玄関先の前で右往左往していたら…家の住人とばったりと会ってしまうというのは、さっさとケーキを渡せというお達しなのかな?
「ふむ…君…」
「はいっ…あの…」
知り合いの家族に会うのって妙な緊張感を持ってしまい、掌に汗が滲む…
この人年齢はどれ位なんだろう…見た所30代前半? いや美桜ちゃんの年齢から逆算すると40前後のはず? 10歳ぐらいは若く見える…ただ凄く辛そうな姿なのが気になる…もしかして腰でも痛めてるのかな?
「言っておくが…娘はやらんぞ!」
「ていぃ!」
「ぐはっぅ! こ…お腰が…!」
朝日がやっと家々の隙間から顔を出し上へと昇ろうとしている頃、日差しに少し目を閉じた次の瞬間には、おじさんはすでに一人で立っており…先ほどの風景が幻覚だったのではないかと思う程に、綺麗に直立して立っていた。
「あれ? おかしいな‥今物凄くむごい一撃を腰に浴びてるのを見たんだけど‥気のせいかな?」
「君は誰かな? 美桜の友達のようだが…」
「ああ、はい…美桜さんと同じ学校で…一年上の氷雨って言います」
何を心配しているのか…父を横目でジっと見つめながら…冷や汗を垂らしながら愛想笑いのような笑みを浮かべる美桜ちゃんに、娘から少し離れて立ちながら、ちょっとだけ足を震わせながら、
「昨日、美桜さんのお母さんからビール箱を頂きまして、母がそのお礼にと…手作りケーキと紅茶を渡してきてくれと言われまして」
「おや、そうなのかい? 私はてっきり『娘さんを僕に下さい』とのたまおうかと…はぐぅ!」
空を見上げると、空を番《つがい》となったトンボがホバリングをしながら優雅に飛んでいた。どこか卵を産める川辺などを探しているのか…もしくは庭の池とか…中学の頃に一番見てて切ないのは、雨で出来た水たまりに卵を産んでるトンボを見た時は本当に悲しかった事もあったっけ…。
「最近トンボも数減ってるのか…本当に見ないよな…」
「イタタタッ…ちょっとした冗談じゃないか~」
「やかましいわっ!」
目にも止まらない程の速さで美桜ちゃんが何かをしてたようだけど、俺の目には映らなかった。ただ二度目は流石にきつかったのか…冷や汗っていうよりも脂汗を流しながら、おじさんが腰を抑えて唸っていた。
「やれやれ…初対面だしちょっと緊張をほぐそうとしたんだが…すまないね。家の娘はどうも母親に似ず、恥ずかしがり屋なようで…あたたあっ…」
「父さんがわ~る~い!」
「お二人とも仲が良いですね…」
先程見たトンボたちがどこに向かって飛んで行ったのか‥ふと目線で追ってしまう。
あの二匹はちゃんと産卵場所を見つけられたんだろうか…毎年心配になった所で、何かが変わる訳でもないのに…
「アハハ・・・そうかい?」
「あ、…ごめんなさい氷雨先輩…いやそんな…そんな事ありませんよ! こんな無神経な父親!」
二人の会話を見ていると持っていたケーキが重く感じていく。玄関の扉が開き昨日も出会った美桜ちゃんのお母さんが…助かったなという気持ちと、何となく形容しがたい感情が渦巻いているのを感じていた。おばさんに渡そうと箱を前に出していく。
「二人とも家にいないなと思って外に出てみたら…氷雨君? この箱は……」
「昨日はどうも…あの…これ…これ母からのビールのお返しにって作ったシフォンケーキと紅茶です。ご家族でどうぞ召し上がってください」
「あらあら~♪ そんなお返しなんて考えなくて良かったのに…処分に困ってたのを押し付けただけなのに…本当にありがとうね」
ただ願わくば‥トンボたちも己の生きた意味を残せたら良いと思っていた。
昨日作ったプラモでもそうだが…生まれたからにはイケメンだと思われるような…そんな生き方が出来ればな…
何て、自分がそんなイケメンな生き方をしてる訳でもないのに…何をつまらない事を考えているのか…
「いえ、母は手作りケーキ作るのが好きなので…処理するのが大変だからって、理由をつけてはケーキ作るのが好きなだけですから…」
「良いわね~料理好きなお母さまなのね?」
「事務仕事よりは100倍楽しいって言ってます…」
パティシエが太っていたり虫歯が多いのって、そもそもが試食や作ったお菓子の処理が大変だからって言うのがあるんだという事を思い出しながら、そういえば買い物頼まれていたんだよな… あ~今日は肌寒くなるから…使い捨てカイロを買った方が良いかなと思考を全く別の方向へ……
「ねえ…良かったら一緒に食べない?」
「えっ? いやこの後用事が…」
「良いから、良いから♪」
「おお~それは良いね? 出来るだけ長くお邪魔してくれても構わんぞ? 私はその間、整体師の方へ…」
「何言ってるのよ~? 家族みんなで食べた方が美味しいに決まってるじゃない♪」
買い物やら、何やらと色々用事があるんだという言葉を口にする前に…おばさんに捕まってしまう。昨日も思ったんだけどこの人…もしかして推しが強い…?
ケーキの箱を持ったまま、そのままズルズルと家の中へと連れられていく…
「ぐぁっ…いやちょっと、私は甘いものが…」
「緑冴ちゃんが好きなのは勿論知ってるわよ? さあ、行きましょ」
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