指先で描く恋模様

三神 凜緒

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休日の授業♪ その1

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その日も変わらず、とても日差しの暖かい一日の始まりだった。
目覚ましが鳴る前に眼を開き、パジャマを優しく脱ぎ捨てると、少し肌寒くなった気温に少し震える…

眠気を飛ばすように軽く背伸びをして、大きく深呼吸。そのまま下着姿のまま姿見の前に。
昔に比べたらとても肉付きの良い、綺麗な肌とシルエット…これが自分なんだよね…

そのまま直視すると恥ずかしくて、頭を振り、そのままの足でタンスへ…
袖を通す時には、背筋を伸ばし、踊る時のように指先まで神経を行き渡らせて、鏡に映る自分が変に映ってないか確認…
襟元がめくれているのを見つけ、そっと直し、ニコっと微笑む。

スカートは…履き慣れていないんだけど、シャツやブラウスに比べて多少もたつきながら身に着け、ドレッサーの前に座る時はそれを感じさせないように変な折り目をつけないように手で揃えてから、ゆっくりと腰を下ろす……

口紅は刷毛《はけ》で濡れと母が言っていた。直接塗るのは品がないとか…
なんて、多分殆どの女子はしないだろうな~とは思ったけど、衛生的にもこれはイイ気がしてる。

若いのだからそんな化粧を濃くしても仕方ないと、ほんのりと見えるか見えないか位の薄いファンデーションで頬を彩る…

化粧を終えてから、ボクは再び姿見の前に立つ。
真っ白で装飾の少ないブラウスに、緑色の少しだけタイトなスカート。
膝まで長い黒い靴下に、手首には虹色のブレスレット
あくまで派手過ぎない。ギリギリ室内服だと言い張れるぐらいの服装だと思う…

「これで…多分完璧な筈…うんっ!!」
「何が完璧なの~? 妙に気合入った朝だよね…」
「うおぅ!! 凛香…あんたも朝早いわね…!」

いつもいつもここ最近、イイタイミングでこっちを覗いてくる妹…何かの超能力でも身に着けているのではないだろう? ある種の電波を受信してるとか…??

「そりゃ、お姉ちゃんのせっかくの初陣だもんね~♪ 見送らないとダメでしょ?」
「初陣って…そんな大げさな…」
「ふふふ…もう数日前からずっとワクワクしてたもんね? うらやましいな~」
「そんなにワクワクしてた?」
「うん…何も知らないお父さんが勘ぐるぐらいには…」

父親は…僕と同じような性格で恥ずかしがると喋らない性格…ボクの様子に気づいても何も言わなかったのかな?
ああでも…料理中に意味もなく笑っていた時は、確かに何か言いたそうな顔をしていた…! 今さらそれに気づくとは…そこまで浮かれていたのかな?

「あはははは…恥ずかしい…どうして気づかなかったのかな…」
「恋してる乙女にはそんな些末な事はどうでもイイんでしょう~うんうん」

中学生のくせに、悟った顔でもっともらしく腕を組みながら頷く妹。
そんな顔しても、あんただって初恋もまだじゃないの…! とは情けなくて口に出さない。

「さっさと朝食食べて、東谷君を待とうっと…」
「ファイトだよ! お姉ちゃん~」

妹の声援に後押しされながら、私は決戦前の補給に入った…
決戦前の家族の雰囲気を一言で云えば…歓迎ムードでした~母も妹も同じノリで応援してくれていた。ただ父だけは…すんごく複雑な顔をしていたような気がする…


少し肌寒い玄関は、普段とは全く違い綺麗に靴を並べられており、中央部分にはお客様が靴を脱ぎやすいように空間を開けている。
時々、子供みたいに中央に靴を脱ぎ捨てて放置する人がいるが、家の場合は母の教育上、脱いだら手で脇に寄せるようにしている。
設置されて鏡に長くなった髪が跳ねてないか再確認。うん…大丈夫…

(ぴんぽ~~ん)
「は~~~い、今いきます~~~!」

響き渡るチャイムの音。少しだけ掠れた声に緊張しているのを感じる。
声色も、自分じゃ分からないけど少し変わってる気がする…まるで変声機を使ったみたいに…
ドアを開き、扉の前にいる東谷君を見る…彼の普段着という物をあまり見た事ないんだけど、とってもまとまっていて、普通の好青年みたいな雰囲気…
季節を意識しているのか、茶色のタータンチェックのカッターシャツに、スリムズボンを履いており、運動部らしいスマートな体格がよく分かる服装。
運動に向いてる服装じゃない。東谷君の事だからジャージで来るんじゃないかとちょっと心配だったので、少しほっとしている…

「いらっしゃい、東谷くん~♪ さっ、あがって~」

棒立ちしている彼に手を握り、中に招き入れると、彼は目をパチクリさせながら何度もこちらの顔を見ている…ふっふっふっふっ…びっくりしてるびっくりしてる(*^▽^*)
女性の顔をジロジロ見るなんて無作法だ…なんて普段なら云う所だけど、今回だけは特別よ~~♪

「あなたは…樹の親戚でしょうか?」

悩みに悩んだ末に出た言葉がそれか…つまり、今のボクはそれぐらい変わってるって事なんだね~!(^^)! いいね♪ いいね~♪

「えっと…その…そんな感じでしょうか? あなたは…樹ちゃんのお友達?」

此処まで来ると、どこまでいけば彼が気づくか試したくなった…
口元に指をあてて、流し目にしながら、そっと彼の肩に手を置き、軽く息を吹きかける。
すると彼は顔を真っ赤にして、『初対面でいきなり何をするんですか!?』と、離れちゃった…惜しい…普段のボクでは出来ない行為なのに、何か服装を変えるだけで別人になった気分…これも、ウィッグをつけて髪を伸ばして、女教師風の服装にした効果なのか…!

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ? もっとリラックスして」
「はい……何とか努力しますから…少し離れてください…」
「うふふふふっ……カワイイ~♪」

何か後ろから妹の、『お姉ちゃんが変な覚醒した~!』などという、訳の分からない視線を感じているけど、気にしない…いつ東谷君が気づくかは分からないけど、それまでは樹では出来ない事を一杯堪能しちゃうもんね!!
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