指先で描く恋模様

三神 凜緒

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乙女たちによる吊り橋での攻防

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恋はどんな時に生まれるのだろう~? ―――と云うのは! 恋する乙女の命題である!
ピンチを一緒に共有する時なんて…吊り橋効果!なんていう言葉があるぐらい有名だよね…! こんなスポットが駐車場のすぐ傍にあるだなんて…これはそういう意図がある事って良いんだよねっ!

「この橋は山頂にある、昭和初期に寺を作る為の当時の修行僧が造った簡易的な橋であり、最低限な整備をしていますが…五人以上は同時に乗らないでください…って書いてるね」
「お寺って…! そっち(校長先生が大僧正だった)の方のフラグだったのかっ!?」
「えっと~~どうしたんだ? ……頭なんて抱えちゃって」

山の上は常に風が強く、どうしてこんな場所に?とツッコミを入れたくなるような大きな谷にかけられた橋が、激しく揺れ動いている。
年季の入った茶色くて太いロープが、それでも強く橋を支えてる。ロープとロープの間には所々欠けてたり、ひび割れた板が並べられており、これまでも幾人の人や物を支え、運んで来たのだろう…という事が分かる。分かるんだけどさ~

「いや…何かムードがね~(ないんだよな~)」
「ムード? ムードがどうしたんだ…こういう風景も俳句とかには使えるんじゃないか?」


ああ、そうだった…お土産屋さんでの出来事が原因で、何をしに来たのか忘れてしまっていた。というか…思い出す理由がなかった…のかな…だって、ねえ…誰も言わないんだもん。

「土産物屋さんや、整備された道を考えるに、観光地の筈なんだけどね…わざとこのままなのかな~? これじゃ…(恋するよりも前に、死の危険を感じるよ!)」
「さっきから、頭を抱えたり、悶絶したりして…大丈夫なのか?」
「うん~大丈夫~大丈夫だよ~~」

こんな非常識なモノがあるなんて、ギャグマンガじゃないんだからさ…単純にこれも、校長先生の趣味なのかな? お坊さんならこれぐらいの困難…修行時代に沢山経験してるから、ボク達とは感覚が違うのかな~?
ただ橋の向こうには、パンフレットにも書いてある『極上』のスイーツがある茶屋があるらしいので…甘い物好きな人は根性で渡るかも知れない…

「度胸試しで行くのには丁度良いかもな…橋の向こうでは誰か…カップル?が仲良くわたってるみたいだよ?」
「カップルが? どれどれ……って…ええっ! ……あれは…美桜?」

女子生徒の少ない学校なので、ある程度背格好が似ていれば、同一人物に見えたりもするが…30M位しか離れていないから、確認する事は出来る。
互いにフラフラとしながらも、互いに支えるように手を取り合い、橋をゆっくりと歩いているよ…相手は誰だ!?

「胸元のバッチが見えれば、どの学年か分かるけど…かなり遠くで見えないな~?」

実はこの学校は、学年によってつけるバッチの色が異なり、一年は赤、二年は緑、三年は紫となっているのだが…かなり小さく、ボクの目ではよく分からない…それに背中を向けているから、視力が良くても無理だ…
だけど、観察してると美桜がよろけて倒れそうになるのを、彼が腕を掴み支えた瞬間、一瞬だけこちらの方へ向いてくれた…

「胸元のバッチ? あれは…緑だから…2年生じゃないかな?」
「あんな遠くからでも見えるの? どれだけ視力がイイんだ…ボクも2.0ぐらいあるのに~」
「俺もそれぐらいだぞ? 偶然焦点が合ったんじゃないか?」
「そうなのかな~? あれ…でも考えてみたら…」

学校の視力検査って、そもそも2.0以上は検査しないんだよね。もしかして……?
って…そんな事でびっくりしてる場合じゃなかった! 美桜は…!?

「何か二人して仲良く手を取り合って、奥へ行ってるよ! 美桜がまさか年上が好きになるなんて…! ボクはてっきり…ショタコンだと思ったのに!」
「大声で失礼な事を言うな~~!!」

この世界の真実を叫んでいると、橋の向こうからアルミ製の筆箱が飛んできて、頭にクリーンヒットした……
頭を押さえて蹲ってると、隣で苦笑いしながら東谷君が頭を撫でてくれている…

「あいたたた~~ だって~! ボクの知る限り、今まで好きになった相手は子供っぽい人が多くて…てっきり、弟を可愛がってる反動でショタコンになってると思っていたのに…!!」
「もう~~~~!!」

その歩みは先程まで、よろけていたとは思えないぐらい、しっかりとしたもので、こちらに大股で近づき、襟首を掴まると顔を寄せて来て、小声でこちらに話しかけてくる。

「どういうつもりよ…!」
「ああ~~やっぱり、さっきのよろけは演技だったんだね?」

さすがはうら若き乙女だ…ボクも見習わなければ…ウンウンと頷いてると、ほっぺたを思い切り引っ張られる…(;^ω^)

「シッ…! お願いだから今回は邪魔しないで…! 邪魔しないでくれれば、東谷君にあんたの事をもっとアピールするからさ!」
「ラジャ~! 了解しました! 将官は貴殿の吉報を待つであります!」

ビシッと、小さく敬礼をし、本気の顔で恋に邁進している親友を見送る。
置いてけぼりを食らった見知らぬ先輩は、動じる事もなく、手すりに手をかけながら、微笑んでいる…中々に大人っぽい…寡黙そうな人だな~~

「頑張って猫被ってください~」
「やかましい~」

茶化してはいるけど、出来れば…出来れば面白い話の一つでも手土産に欲しい所である!
本当はボクも東谷君にくっつきながら吊り橋を渡って、イチャイチャしたかったんだけど~
美桜の邪魔しちゃ悪いし…ボクが傍にいたら緊張しちゃうだろうな~はあ~~仕方ない

「えっと~やっぱり高い所は苦手だから…別の場所にいこ?」
「そうだな~俺も実は高い所は苦手だ~ふふふ」
「その笑みはな~に?」
「いや…二人とも仲が良いなって思ってな…」
「そう…かな? あははは…」
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