指先で描く恋模様

三神 凜緒

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校長先生のお仕置き!?…って何だろ…? (追加しました 手直しの可能性あり)

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結論から言えば、勝手に抜け出したボクたちは~それなりに怒られました。
校外学習の翌日に先生たちとボクたち生徒全員が、学校の茶室に呼ばれ校長先生が点ててくれたお茶を回し飲みしながら、説法を永遠と説かれていた。
多分、一時間ぐらいかな~? その間、『当たり前のように』正座をさせられ、『当たり前のように』足首を捻っていた工藤先生は正座が免除されて、『当たり前のように』先生たちは正座に慣れていて余裕そうな表情であった。

「先生達、何で平気そうな顔しているんですか?」
「普段から嗜《たしな》みとして校長先生から受けているからね。一時間位どうって事は無い」
「さいですか…あははは…」

実際の所、大久保先生たちもいたので、バツとしてはかなり軽く済んだ方らしい…
懐紙の使い方が分からずに、校長先生に教わりながら最初に茶菓子を受け取ったんだけど、あまり綺麗には食べれなかった気がする…
それでも女性らしく出来たかなと頑張ったつもりだけど…小さな竹のナイフで小分けにしながら、優雅に食べる工藤先生の姿が印象的だった。
そう…茶菓子を最初に配られ、頭を下げながら受け取った時はまだ余裕があった…!

「アタイ…もうだめかもしんない…」
「まだ開始して10分も経ってないよ? 頑張ってよ!」
「いや…私もかなり限界に来てますわ…これ…」
「そりゃ、ボクだってきつくなって来たけど…うううっ…!」

美桜と葵、三人で悶絶しながら茶菓子を食べ終わり、さっさとこの時間が過ぎるのを待つ。
校長先生の説法の内容? そんな有り難い物、ボクが覚えきれている訳ないでしょ!?
ただただ、足の痺れとの戦いだったよ! さっさとこの時間が過ぎれば良いとか思ったもん! 問題になった工藤先生が一人正座をしていないのが気にくわないとか、考えないようにしているんだが……足を崩しながら一人、涼しい顔で茶を啜っているんだよね~

「工藤先生だけズルいよ~」
「あははは…そう見えるよね……私は別の件で罰則受けてるのよ…」
「ええっ!? どんな罰則ですか?」
「――――短歌を100ほど作れとか言われた…」
「はっ? それは…かなりえぐい状態ですね…」

100って…それは短歌作るのが好きな人でもきついんじゃないかな? 一日二日で出来る内容じゃないし、脳を限界まで酷使しそう…もしかして、校長先生ってかなりスパルタだったりするのかな? まあ…それなら少し胸がすっとしたかな――――

「アタイ…もうだめだ…きっともう二度と歩けない…」
「気をしっかり持つんだ。大丈夫…血が通わなくなってもしばらくすれば元に戻るから…壊死するほど血が通ってない訳じゃない…」

――――などと思う事もなく、ボクたちは一時間の地獄に耐えきった…訳でもない!
最終的に正座は一時間も保てる筈もなく、30分程で限界が来て、その後は休み休みで、正座をする事にした。痺れた足に鞭とか振るう人じゃなくて良かった…うん!

「良いかお前達、茶道とは本来どんな者でも、身分の上下なく互いに思いやりを持って接する為のモノ。本来作法などという物は存在しなかったのだが、そこは日本人の悪い癖が出てると言えるだろうな……形式立ててしっかりとした物を作りたがる…」
「私の目の錯覚かな~? 何か話が長くなってるけど、二時間はあのままじゃない?」
「気のせいじゃないよ…あれはもう…人間じゃない…!!」

校長先生曰く…子供に罰則を与える時には自分も同じ苦を受けるべきだとか…それによって、体罰のやりすぎを自制する事が出来るとか…
つまり…校長先生はず~っと休まず正座していたんだけど…大僧正が足を痺れさせて悶絶とか…ありえないよね…うん…

「やれやれ…この体たらくでは、茶道を必須科目にすべきか…」
「それは勘弁してください! っていうか、先生達まで頷かないで!!」

この学校…本当に男子高校と呼ばれた工業高校なのか!? 無駄に文化的な所に凝っているんだけど…これも学生時代の楽しみなのかな~?
結局~校長先生の罰則とは勉強をさせる事なのかも知れない…などと悟って来た自分である。
大人はいつの時代だって、子供の為にどこまでも無情になれるんだな~っと感じた日でした。

――――
――――――――
それから数日後、全校生徒と先生方がそれぞれに作った短歌や俳句を提出し、廊下に並べられる事になった。どれもその数日の間に行われた、習字の時間に書いた物だ。
はっきり言っちゃえば……ボクの字はそんなに上手じゃなかったね!!
これはもうだまし討ちだよ~とは、思ったけど仕方ないね………うん~(工藤先生の字が異常に達筆で、綺麗だったのは…もう諦めだね~はあ~)
放課後の間に先生たちが貼ってくれたみたいで、朝のホームルームの後、美桜と葵三人で皆の作品を見回ってみた。そしたら、どれも俳句が多い印象だったんだよね。

「そういえば、何で俳句には季語なんているのかな?」
「明確な答えは分からないらしいけど、工藤先生曰く、季語がある方が短い文章で情景描写しやすいから~とか言ってたね。縛りプレイというよりも、救済処置?だと言ってた」
「季語が救済処置…その発想はなかった…!」

時々、季語のない川柳と呼ばれる物を作ってる人もいそうだけど、それはそれでそのまま掲示されてるのは、それも個性という事か…掲示された生徒は今頃悶絶してないか!?
何か所々で、掲示された作品に指を指されながら、弄られている生徒がいるんだけど…

「なるほどね……よし…! 結局、二人はどんなものを提出したの?」
「お前…一体何を見てよしと頷いた? 碌な事を考えてないだろ!」
「その様子では、樹はかなり自分の作品に自信があるんでしょうね?」
「そうだね~♪ 自分なりの決意表明かな…あれは…ふんふふん~ふふん~」

ちょっとした悪戯心だったけど、思えば二人を弄っても仕方ないか~と、悟りを開いて手を頭の後ろで組みながら、鼻歌を歌いながら歩く。
そうしたら後ろから付いてくる二人から何やら、勝手な事を喋ってるのが聞こえて来た。

「あれは何かあったのか? 普段あんなことを言わないよな?」
「単純に工藤先生と比べて、歌や字の出来が違い過ぎてうっぷんが溜まってるんじゃない?」
「なるほどな…まあ、ああいう悪戯心が沸くようになったのは、乙女に近づいた証でもあるか…」
「そうだね~」
「……………」

今日も良い天気で気持ちよかったな~登校時にはカラスがえらく吠えていてうるさかったけど、元気でいるのはとても良い事なんだと思う! 色々あって元気でいられてない人もいるみたいだし、ボク位はこうしていないとね…

「それで~これが…樹の決意表明なわけ?」
「分かりやすい歌だよね…工藤先生への挑戦状とか?」
「だから違うって~…昔の自分とは違う、生まれ変わった事の証…みたいなものかな?」

短歌や歌なんて、結局は自分の気持ちを表す、自己満足でしかない。それを良いか悪いか判断するのは結局自分ではなく、それぞれの気持ちや価値観なんだと思う。
秋の山で見つけたものは、結局自分の弱さや不器用さ、それに人のぬくもりであった。

【秋霧に 山風吹けば たおやかに 花は揺れども 服す事なし】
(たおやかにとは(しとやかになる)という意味、服すとは(ひれ伏す)という意味もある。他の翻訳については…ご想像にまかせます)

「綺麗にまとまっているね…良いんじゃない?」
「樹にしては、頑張ってると思う」
「ありがと~♪ それで~二人の作品はどれかな~?」
「わざわざ探さなくて良いよ~!?」
「美桜は往生際が悪いな…私と一緒に笑われば良いよ…」
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