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第十六話 新しい侍女
私はリアナ・ルメラ様をビアード領に連れて帰ってきました。
まだルメラ男爵家の養女ではないので、リアナですわね。ルメラ領で魔法を使って眠らせたエイベルが起きません。昨日までは王宮でクロード殿下の側でお務めに励んでいたそうです。私が倒れて帰還できなくなったという嘘の話を信じて、ルメラ男爵領まで馬で迎えに来てくれたそうです。エイベル、私の我儘のためにごめんなさい。事情を聞いて酷い態度で魔法で眠らせたことを反省しました。
公爵邸に帰るとビアード公爵夫妻が迎え抱き締められました。そして使用人達も集まってます。
「レティ、体調は平気かい?」
「ご心配おかけして申し訳ありません。熱も下がりましたわ。」
「良かったわ。」
「お兄様はお疲れのようなので、お部屋で休んでます。」
「エイベルは鍛錬が足りないわ」
「お母様、お兄様を怒らないでください。お兄様に心配をかけた私が悪いのです。どうか休ませてあげてくださいませ」
ビアード公爵夫妻はエイベルには厳しいです。悲しい顔をすると二人の眉間の皺が消えて優しい顔になりました。
「仕方ないわ」
「ありがとうございます。もう一つお願いがあります。ルメラ領で体調を崩したときに、助けてくれた方がいるんです。私と同じ年なのですが、家庭環境が酷く…。」
優しく愛情深いビアード公爵夫妻を騙すのは非常に心苦しいですが悲しい顔を浮かべて嘘の話をします。
「恩人をこのような場所においておけずに連れて帰ってきました。私の侍女としてお側においてもいいですか?」
「レティの恩人か。侍女でも構わないが、学園には通わないのか?」
「思いつきませんでしたわ。編入試験を受かるでしょうか・・・」
「本人と相談ね。もし侍女として学園に連れて行くかは出来栄え次第よ」
「わかりました。お父様、お母様、ありがとうございます。」
ビアード公爵夫妻は優しいというか甘いです。不届き者も倒せるのでよそ者でも快く招き入れるそうです。その方針はどうかと思いますが口をはさめる立場ではないので気にしません。
リアナは執事長に預けました。
「お嬢様、ご無事で」
「心配をおかけして申しありません。もう回復しましたわ」
心配そうな使用人達に笑みを浮かべると泣かれ、相当心配かけたようで。
「お嬢様、お帰りなさい」
「お嬢様、だいじょうぶ?」
ロキとナギが使用人の隙間を潜って抱きついてきました。
「ただいま帰りました。はい、元気ですよ。今日から新しい侍女が入るから仲良くしてあげてね」
「はい。」
「うん」
二人の頭を撫でます。仮病なのに皆様に心配かけたようで罪悪感が…。後日、何かお詫びを用意しましょう。
ロキ達のことも、どうにかしませんと。とりあえず、今は二人と別れて眠っているエイベルの部屋にいきます。エイベルに体力回復の治癒魔法をかけます。エイベルの寝顔は今世は初めて見ましたが、そろそろ起きそうですね。最初の人生はよく居眠りしているのを見かけたんですが・・。
「お兄様、おはようございます」
伸びてくる手が頬に添えられます。
「大丈夫か?」
眉を下げて心配そうな顔で見つめられ、罪悪感にさらに胸が痛くなってきました。
「ご心配おかけました。私は元気です」
エイベルが起き上がりました。
「俺は、」
戸惑った顔をするエイベルに優しい笑みを浮かべます。
「今日はゆっくり休んでください。お話してあげましょうか?」
先程の心配そうな顔が嘘のように眉間に皺を浮かべたエイベルに睨まれて、嫌な予感がしました。
「お兄様、今日から侍女が一人増えました。可愛らしい方ですが、好きな方がいるので惚れてはいけません。上目遣いにイチコロされてはいけません」
「お前は俺に言うことはないのか?」
「心配かけてごめんなさい」
頭を下げそっと顔を上げても、眉間の皺が消えません。ごまかされてくれません。
「眠らせる魔法をかけてごめんなさい。」
咎めるようにじっと見られてます。
「仮病を使って申し訳ありません」
ようやく眉間の皺が消えて長いため息をつかれました。
「心配するからやめろ。あと、毒薬飲むのもだ」
エイベルが素直なのは珍しいですが、王家のお茶会があるので毒薬は約束できません。
「善処します」
「父上に報告してくる」
ベッドを抜け出そうとする腕を掴みます。確実にマナとマオが怒られます。それに、あそこまで心配かけて、仮病だと見つかれば使用人達も怖いです。
「ごめんなさい。もうしません。報告しないでください。護衛は私に騙されましたの。悪いのは私です。胸に留めてくださいませ」
苦笑したエイベルに乱暴に頭を撫でられました。たぶん許してくれましたわ。エイベルは両親よりも面倒ですが、リオよりは簡単でありがたいですわ。
「念願のお友達はできたのか?」
「お兄様、ハク様を探すのを手伝ってください」
リアナの説明をします。母親の洗脳と偶然会った貴族に恋をしているので叶うように手伝いたいことを。
エイベルの眉間に皺が戻りました。
「危なくないか?」
「え?」
「恋のためなら手段を選ばない人間だろ。ハクに命じられればお前を殺すんじゃないか?」
「まさか」
「二人っきりにはなるなよ。心も許すな。嫌な感じがする」
ビアード公爵もエイベルも直感に優れています。いささか警戒しすぎと思いますが、従いましょう。嫡男の命令には逆らえません。今回は相当心配をかけたようですし。
「わかりました。」
「新しい侍女については俺が指示を出す。お前も友達を疑いたくないだろうしな」
エイベルは妹に甘いです。ビアード公爵もエイベルも私に家や貴族の闇は見せたくないようなので知らないふりをします。
私はリアナがビアード公爵家の害にならないように気をつけましょう。私の第一はビアード公爵家ですから。
エイベルやビアードのわかりやすい優しさや愛情に胸がじんわりと温かくなります。昔の私は家に甘やかしてもらえるなんて思いもしませんでしたわ。ルーンも王家も薄汚い世界から目隠しするのは許されませんでしたもの。
「よろしくお願いします。お兄様、私は貴方の妹に産まれて幸せです。」
「バカ」
照れてるエイベルに笑みがこぼれます。私はエイベルのためにも社交を頑張りましょう。
***
リアナは侍女として優秀でした。ただ嫌なことがあると泣き落としで逃げる癖が問題視されてます。うちの使用人達には効かないようで、エイベルもイチコロされずに過ごしています。
「リアナ、大丈夫ですか?」
「礼儀作法が面倒。ルリ、」
「お嬢様への言葉遣い」
マナが冷たく零しました。
「だって」
潤んだ瞳でリアナに見つめられますが厳しく言わないといけませんね。
「うちの使用人は泣き落としは効きません。泣き落としは奥の手にしないと全く効果がなくなりますよ」
「え?」
「ハクのお嫁さんになりたいなら、泣き落としではなく鉄壁の笑顔が必要です。貴族は人前で泣くなど許されません。」
「頑張る」
「はい。頑張ってください。」
リアナの様子ではビアード公爵家の侍女として学園に連れて行くのは危険そうです。
「マナ、どう思います?」
「お嬢様がお心を傾ける理由がわかりません。私はお嬢様の専属を譲るつもりはありません」
拗ねた顔のマナの言葉に思わず笑ってしまいました。腹心のマナを外す選択肢はありませんでした。
「マナがいないと私が困ります。うちとは関係もない生徒として過ごしてもらうほうがいいかしら。編入試験受かるかな・・」
「ロキに頼みましょう。あの子は優秀です。」
ロキ?ロキはマナにも懐いてますし、よくわかりませんがマナに任せましょう。侍女の仕事は私にはわかりませんので。
「任せます。マナの仕事がどんどん増えますね。過剰なら教えてください」
「まだまだ余力があるからお任せください」
「私の侍女は頼りになるわ。無理はしないでください。私はマナに倒れられたら生活できません」
マナは私の腹心の侍女です。生前の腹心の侍女のシエルと同じくらい優秀です。マナは私が嘘をついたことも全て知っています。マナには情報収集と監視などたくさんの仕事をお願いしています。他の侍女に頼むと拗ねる所は可愛らしいです。有能なのでありがたく頼らせてもらってます。なぜかマナの忠誠は私に捧げられているので、ビアード公爵夫妻の命令よりも私の命令を優先してくれる貴重な侍女です。
まだルメラ男爵家の養女ではないので、リアナですわね。ルメラ領で魔法を使って眠らせたエイベルが起きません。昨日までは王宮でクロード殿下の側でお務めに励んでいたそうです。私が倒れて帰還できなくなったという嘘の話を信じて、ルメラ男爵領まで馬で迎えに来てくれたそうです。エイベル、私の我儘のためにごめんなさい。事情を聞いて酷い態度で魔法で眠らせたことを反省しました。
公爵邸に帰るとビアード公爵夫妻が迎え抱き締められました。そして使用人達も集まってます。
「レティ、体調は平気かい?」
「ご心配おかけして申し訳ありません。熱も下がりましたわ。」
「良かったわ。」
「お兄様はお疲れのようなので、お部屋で休んでます。」
「エイベルは鍛錬が足りないわ」
「お母様、お兄様を怒らないでください。お兄様に心配をかけた私が悪いのです。どうか休ませてあげてくださいませ」
ビアード公爵夫妻はエイベルには厳しいです。悲しい顔をすると二人の眉間の皺が消えて優しい顔になりました。
「仕方ないわ」
「ありがとうございます。もう一つお願いがあります。ルメラ領で体調を崩したときに、助けてくれた方がいるんです。私と同じ年なのですが、家庭環境が酷く…。」
優しく愛情深いビアード公爵夫妻を騙すのは非常に心苦しいですが悲しい顔を浮かべて嘘の話をします。
「恩人をこのような場所においておけずに連れて帰ってきました。私の侍女としてお側においてもいいですか?」
「レティの恩人か。侍女でも構わないが、学園には通わないのか?」
「思いつきませんでしたわ。編入試験を受かるでしょうか・・・」
「本人と相談ね。もし侍女として学園に連れて行くかは出来栄え次第よ」
「わかりました。お父様、お母様、ありがとうございます。」
ビアード公爵夫妻は優しいというか甘いです。不届き者も倒せるのでよそ者でも快く招き入れるそうです。その方針はどうかと思いますが口をはさめる立場ではないので気にしません。
リアナは執事長に預けました。
「お嬢様、ご無事で」
「心配をおかけして申しありません。もう回復しましたわ」
心配そうな使用人達に笑みを浮かべると泣かれ、相当心配かけたようで。
「お嬢様、お帰りなさい」
「お嬢様、だいじょうぶ?」
ロキとナギが使用人の隙間を潜って抱きついてきました。
「ただいま帰りました。はい、元気ですよ。今日から新しい侍女が入るから仲良くしてあげてね」
「はい。」
「うん」
二人の頭を撫でます。仮病なのに皆様に心配かけたようで罪悪感が…。後日、何かお詫びを用意しましょう。
ロキ達のことも、どうにかしませんと。とりあえず、今は二人と別れて眠っているエイベルの部屋にいきます。エイベルに体力回復の治癒魔法をかけます。エイベルの寝顔は今世は初めて見ましたが、そろそろ起きそうですね。最初の人生はよく居眠りしているのを見かけたんですが・・。
「お兄様、おはようございます」
伸びてくる手が頬に添えられます。
「大丈夫か?」
眉を下げて心配そうな顔で見つめられ、罪悪感にさらに胸が痛くなってきました。
「ご心配おかけました。私は元気です」
エイベルが起き上がりました。
「俺は、」
戸惑った顔をするエイベルに優しい笑みを浮かべます。
「今日はゆっくり休んでください。お話してあげましょうか?」
先程の心配そうな顔が嘘のように眉間に皺を浮かべたエイベルに睨まれて、嫌な予感がしました。
「お兄様、今日から侍女が一人増えました。可愛らしい方ですが、好きな方がいるので惚れてはいけません。上目遣いにイチコロされてはいけません」
「お前は俺に言うことはないのか?」
「心配かけてごめんなさい」
頭を下げそっと顔を上げても、眉間の皺が消えません。ごまかされてくれません。
「眠らせる魔法をかけてごめんなさい。」
咎めるようにじっと見られてます。
「仮病を使って申し訳ありません」
ようやく眉間の皺が消えて長いため息をつかれました。
「心配するからやめろ。あと、毒薬飲むのもだ」
エイベルが素直なのは珍しいですが、王家のお茶会があるので毒薬は約束できません。
「善処します」
「父上に報告してくる」
ベッドを抜け出そうとする腕を掴みます。確実にマナとマオが怒られます。それに、あそこまで心配かけて、仮病だと見つかれば使用人達も怖いです。
「ごめんなさい。もうしません。報告しないでください。護衛は私に騙されましたの。悪いのは私です。胸に留めてくださいませ」
苦笑したエイベルに乱暴に頭を撫でられました。たぶん許してくれましたわ。エイベルは両親よりも面倒ですが、リオよりは簡単でありがたいですわ。
「念願のお友達はできたのか?」
「お兄様、ハク様を探すのを手伝ってください」
リアナの説明をします。母親の洗脳と偶然会った貴族に恋をしているので叶うように手伝いたいことを。
エイベルの眉間に皺が戻りました。
「危なくないか?」
「え?」
「恋のためなら手段を選ばない人間だろ。ハクに命じられればお前を殺すんじゃないか?」
「まさか」
「二人っきりにはなるなよ。心も許すな。嫌な感じがする」
ビアード公爵もエイベルも直感に優れています。いささか警戒しすぎと思いますが、従いましょう。嫡男の命令には逆らえません。今回は相当心配をかけたようですし。
「わかりました。」
「新しい侍女については俺が指示を出す。お前も友達を疑いたくないだろうしな」
エイベルは妹に甘いです。ビアード公爵もエイベルも私に家や貴族の闇は見せたくないようなので知らないふりをします。
私はリアナがビアード公爵家の害にならないように気をつけましょう。私の第一はビアード公爵家ですから。
エイベルやビアードのわかりやすい優しさや愛情に胸がじんわりと温かくなります。昔の私は家に甘やかしてもらえるなんて思いもしませんでしたわ。ルーンも王家も薄汚い世界から目隠しするのは許されませんでしたもの。
「よろしくお願いします。お兄様、私は貴方の妹に産まれて幸せです。」
「バカ」
照れてるエイベルに笑みがこぼれます。私はエイベルのためにも社交を頑張りましょう。
***
リアナは侍女として優秀でした。ただ嫌なことがあると泣き落としで逃げる癖が問題視されてます。うちの使用人達には効かないようで、エイベルもイチコロされずに過ごしています。
「リアナ、大丈夫ですか?」
「礼儀作法が面倒。ルリ、」
「お嬢様への言葉遣い」
マナが冷たく零しました。
「だって」
潤んだ瞳でリアナに見つめられますが厳しく言わないといけませんね。
「うちの使用人は泣き落としは効きません。泣き落としは奥の手にしないと全く効果がなくなりますよ」
「え?」
「ハクのお嫁さんになりたいなら、泣き落としではなく鉄壁の笑顔が必要です。貴族は人前で泣くなど許されません。」
「頑張る」
「はい。頑張ってください。」
リアナの様子ではビアード公爵家の侍女として学園に連れて行くのは危険そうです。
「マナ、どう思います?」
「お嬢様がお心を傾ける理由がわかりません。私はお嬢様の専属を譲るつもりはありません」
拗ねた顔のマナの言葉に思わず笑ってしまいました。腹心のマナを外す選択肢はありませんでした。
「マナがいないと私が困ります。うちとは関係もない生徒として過ごしてもらうほうがいいかしら。編入試験受かるかな・・」
「ロキに頼みましょう。あの子は優秀です。」
ロキ?ロキはマナにも懐いてますし、よくわかりませんがマナに任せましょう。侍女の仕事は私にはわかりませんので。
「任せます。マナの仕事がどんどん増えますね。過剰なら教えてください」
「まだまだ余力があるからお任せください」
「私の侍女は頼りになるわ。無理はしないでください。私はマナに倒れられたら生活できません」
マナは私の腹心の侍女です。生前の腹心の侍女のシエルと同じくらい優秀です。マナは私が嘘をついたことも全て知っています。マナには情報収集と監視などたくさんの仕事をお願いしています。他の侍女に頼むと拗ねる所は可愛らしいです。有能なのでありがたく頼らせてもらってます。なぜかマナの忠誠は私に捧げられているので、ビアード公爵夫妻の命令よりも私の命令を優先してくれる貴重な侍女です。
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