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第二十一話 視察準備
今日はエイベルの部屋でレオ様と料理をしています。念願の海の皇国に行けるのが楽しみで顔が緩んでしまいます。
「レオ様、私、海の皇国の視察に行くんです。」
「レティシアが行くなら俺も行くかな」
ポツリと零された言葉に驚きました。
レオ様も視察に行くんでしょうか・・。まだ打ち合わせをしていないので随行する方も知りません。
「通訳はお任せください」
「止めないのか?」
時々不思議な質問をされ不思議な顔で見られます。
「国王陛下が反対されるなら止めます。きっと楽しいですわ。一緒に遊びましょうね」
「俺は納得できない。なんでお前が行くんだよ」
エイベルは私の海の皇国行きが決まってから不機嫌です。マール公爵にお願いしたのは内緒です。
「エイベルは水魔法が使えず、海の皇国語が話せません。ビアード公爵嫡男が他国に行く理由がありません。お土産買ってくるので安心してください」
「何かあったら・・」
なにを心配しているんでしょう。戦いにいくわけでもありませんのに。にっこりと笑いかけます。
「大丈夫ですよ。ビアード公爵家の名を有名にしてきますわ」
「余計なことはせずに、マナ達の言うことを守れよ」
エイベルの中では私は問題児なんでしょうか。私は悪いことはあまりしてませんのに。もしかして置いていくから拗ねてるんでしょうか。確かにエイベルにとって未知の国。訪問して遊びたいですよね。仕方がないから大人の余裕で譲ってあげましょう。
「わかりました。お手紙書きますね」
「エイベル、心配しすぎじゃないか」
「こいつは危なっかしいんです。仮病のために躊躇なく毒薬を飲む人間です」
前言撤回です。なんで知ってるんですか!?
余計なことを言うエイベルを睨み、レオ様ににっこり笑いかけます。
「エイベル、うるさいです。レオ様、気にしないでください」
「レティシアの愛読書が毒草辞典なのって」
「あれは偶然ですよ。」
レオ様の視線が痛いですが笑顔でごまかします。自分で毒薬を飲むなんて公爵令嬢として悪癖持ちと思われるわけにはいきません。なんとかごまかして、レオ様とエイベルと一緒に夕食を食べました。最近はレオ様もよくお話してくださるようになりました。理由はわかりませんが定期的にサラ様のための水の魔石をお渡ししています。
***
私はマール公爵に呼ばれマール公爵邸を訪問しました。マール公爵の執務室で打ち合わせの予定です。
「マール公爵、このたびはありがとうございました」
「予定ではビアード嬢には3日は自由な時間を作れるだろう」
3日もいただけるのはありがたいです。夜にこっそり抜け出す必要がなくなりました。
「ありがとうございます。マール公爵、レティシアとお呼びください。ビアードの名は警戒させるかもしれません」
「わかった。今回はレオ殿下も同行する。」
「かしこまりました。」
「レオ殿下は初めての視察だ」
初めての視察って今まで公務をサボっていたんでしょうか・・。王家のことは気にしてはいけません。
「楽しめるといいですわね。レオ様にも自由時間はありますか?」
「必要だと思うのかい?」
マール公爵が難しい顔をしています。王族にも自由時間が必要だと思いますが・・。
「あればありがたいと思います」
「機嫌を損ねるわけには・・」
機嫌?
レオ様よりよっぽどクロード殿下のほうが・・・。
マール公爵の前だとクロード殿下は違うのかもしれません。計算高い方ですから・・。余計なことを言って殿下の機嫌を損ねるわけにはいけません。殿下の冷気を思い出したら寒気がしました。マール公爵に見つめられているので、笑みを浮かべてごまかします。ぼんやりしている場合ではありませんでしたわ。
「レオ様は短気ではありませんよ。」
「君は王宮には行ったことはないんだよな。殿下と面識があるのかい?」
王宮に行ったのは社交デビューの時だけですね。
凝視されています。理由がわかりました。うっかり話してしまいましたが生前の伯父様であるマール公爵をごまかせるとは思えません。
「マール公爵、内緒にしていただきたいんですが、レオ様は兄のお友達です。ビアード公爵家とは全く関係のない茶飲み友達です」
笑顔でマール公爵を見つめます。
「…。レオ殿下の機嫌をとれるのか?」
お菓子をあげればいいから簡単です。
「お任せください。」
マール公爵が突然声を出して笑い出しました。調子が悪いんでしょうか…。
レオ様は王宮でどんな扱いを受けてますの…。気にしてはいけいのに突っ込みたくなりますわ。
「やっぱり欲しいな。うちのリオの婚約者にならないか?」
冗談とわかっていますが、流せる話題ではありません。
察しの悪さに呆れられても構いませんわ。
「私には務まりませんのでお断りさせてください。マール様なら選びたい放題ですよ。まがいものの深窓のご令嬢なんて選ぶ必要はありません」
「気にしてるのかい?」
「全くしてませんわ。私はお父様達さえ認めてくださるなら恥じないようにビアード公爵令嬢として努めるだけですわ。マール公爵、瞳の色を変える方法をご存知ですか?」
「魔道具を用意すればいい」
「お金は払うので、私とレオ様の分もお願いします」
「レオ殿下の世話係をしてくれるなら、それだけでいいよ」
それだけで貴重な魔道具をいただくわけにはいきません。
「レオ様の侍女もやりましょうか?」
「侍女もできるのか?」
「はい。いつでも出稼ぎにいけますわ」
楽しそうなマール公爵に時々不思議な視線を受けながら無事に打ち合わせが終わりました。
部屋を出るとリオに会いました。
「待って。時間があるなら書庫に案内しようか」
リオとは関わる気はありませんが魅力的な誘いです。マール公爵邸の書庫に入る機会はきっともうないでしょう。少しだけならいいでしょう。
「いいんですか?」
「ああ。」
嬉しそうに笑うリオに案内されて書庫に入ります。やはりマール公爵邸の書庫は大きくて本の種類も豊富ですわ。マール公爵の収集癖のおかげで立派な書庫になったそうです。
「読んでもいいですか?」
「ああ。好きに過ごして」
「ありがとうございます」
懐かしい場所です。
生前にリオに読んでもらった絵本があり懐かしくて手にとります。生前はこの書庫でたくさんの子供時代を過ごしました。ここは思い出が詰まった優しい場所です。近くにある懐かしい気配に傍にいるのに違う存在ということが悲しくなります。
目を閉じると優しい顔で「シア」と呼ぶ姿が浮かんできます。今の私をみたら抱き寄せて「どうした?」って言うでしょう。会いたい。寂しい。この本もリオの膝の上で読んでもらったんです。視界が歪んでいきます。
「ビアード嬢」
姿形が同じで、心配そうな声もそっくり。ただ紡ぐ言葉は違うんです。聞きたくなくて耳を塞ぎます。リオは私をシアと呼びます。近づいてくる気配に目を閉じてしゃがみこみます。
「違う、りお、どこ。」
涙が溢れて止まりません。一番安心する腕はないんです。
「りおにいさま・・・」
頭を撫でる手もそっくりです。神様は意地悪です。大丈夫です。リオとの思い出はいっぱいある。涙を拭き大きく息を吸って吐きます。令嬢モードの仮面を被り立ち上がって礼をします。
「マール様、失礼しました。気分が優れないので失礼します」
礼をして、足早に立ち去ります。待たせている馬車に乗り込んで学園に帰ります。
エイベルの部屋を訪ねて勢いよく抱きつきます。驚きながら頭を撫でてくれる手に慰められながら抑えていた涙を流します。たくさん泣いて、ようやく涙が止まりスッキリしました。
「落ち着いたか」
エイベルは私が突然泣いても気にしません。
「はい」
「レティシア、海の皇国に行くときはストームを連れていけ」
「え?」
「お前の命令を聞くように頼んである。ちゃんと帰ってこい。うちにはお前が必要だ」
「ありがとうございます」
リオはいない。でもエイベルも他のみんなも私を必要としてくれます。神様は意地悪だけど優しさもくれます。私は書庫から絵本を持ち帰ったことに気付きました。さすがに会うのが気まずいです。
エイベルの服を掴んで見つめます。
「エイベル、マール様の本を持ってきてしまったんですが、返してくれませんか?」
「わかったよ」
「ありがとう」
今世は嫌なことはエイベルに遠慮なく押し付けます。
海の皇国に行く準備をしないといけません。
どうかロキ達の幸せな未来を掴めますように。一番欲しいものは掴めないので、他は取りこぼさないように頑張りましょう。
「レオ様、私、海の皇国の視察に行くんです。」
「レティシアが行くなら俺も行くかな」
ポツリと零された言葉に驚きました。
レオ様も視察に行くんでしょうか・・。まだ打ち合わせをしていないので随行する方も知りません。
「通訳はお任せください」
「止めないのか?」
時々不思議な質問をされ不思議な顔で見られます。
「国王陛下が反対されるなら止めます。きっと楽しいですわ。一緒に遊びましょうね」
「俺は納得できない。なんでお前が行くんだよ」
エイベルは私の海の皇国行きが決まってから不機嫌です。マール公爵にお願いしたのは内緒です。
「エイベルは水魔法が使えず、海の皇国語が話せません。ビアード公爵嫡男が他国に行く理由がありません。お土産買ってくるので安心してください」
「何かあったら・・」
なにを心配しているんでしょう。戦いにいくわけでもありませんのに。にっこりと笑いかけます。
「大丈夫ですよ。ビアード公爵家の名を有名にしてきますわ」
「余計なことはせずに、マナ達の言うことを守れよ」
エイベルの中では私は問題児なんでしょうか。私は悪いことはあまりしてませんのに。もしかして置いていくから拗ねてるんでしょうか。確かにエイベルにとって未知の国。訪問して遊びたいですよね。仕方がないから大人の余裕で譲ってあげましょう。
「わかりました。お手紙書きますね」
「エイベル、心配しすぎじゃないか」
「こいつは危なっかしいんです。仮病のために躊躇なく毒薬を飲む人間です」
前言撤回です。なんで知ってるんですか!?
余計なことを言うエイベルを睨み、レオ様ににっこり笑いかけます。
「エイベル、うるさいです。レオ様、気にしないでください」
「レティシアの愛読書が毒草辞典なのって」
「あれは偶然ですよ。」
レオ様の視線が痛いですが笑顔でごまかします。自分で毒薬を飲むなんて公爵令嬢として悪癖持ちと思われるわけにはいきません。なんとかごまかして、レオ様とエイベルと一緒に夕食を食べました。最近はレオ様もよくお話してくださるようになりました。理由はわかりませんが定期的にサラ様のための水の魔石をお渡ししています。
***
私はマール公爵に呼ばれマール公爵邸を訪問しました。マール公爵の執務室で打ち合わせの予定です。
「マール公爵、このたびはありがとうございました」
「予定ではビアード嬢には3日は自由な時間を作れるだろう」
3日もいただけるのはありがたいです。夜にこっそり抜け出す必要がなくなりました。
「ありがとうございます。マール公爵、レティシアとお呼びください。ビアードの名は警戒させるかもしれません」
「わかった。今回はレオ殿下も同行する。」
「かしこまりました。」
「レオ殿下は初めての視察だ」
初めての視察って今まで公務をサボっていたんでしょうか・・。王家のことは気にしてはいけません。
「楽しめるといいですわね。レオ様にも自由時間はありますか?」
「必要だと思うのかい?」
マール公爵が難しい顔をしています。王族にも自由時間が必要だと思いますが・・。
「あればありがたいと思います」
「機嫌を損ねるわけには・・」
機嫌?
レオ様よりよっぽどクロード殿下のほうが・・・。
マール公爵の前だとクロード殿下は違うのかもしれません。計算高い方ですから・・。余計なことを言って殿下の機嫌を損ねるわけにはいけません。殿下の冷気を思い出したら寒気がしました。マール公爵に見つめられているので、笑みを浮かべてごまかします。ぼんやりしている場合ではありませんでしたわ。
「レオ様は短気ではありませんよ。」
「君は王宮には行ったことはないんだよな。殿下と面識があるのかい?」
王宮に行ったのは社交デビューの時だけですね。
凝視されています。理由がわかりました。うっかり話してしまいましたが生前の伯父様であるマール公爵をごまかせるとは思えません。
「マール公爵、内緒にしていただきたいんですが、レオ様は兄のお友達です。ビアード公爵家とは全く関係のない茶飲み友達です」
笑顔でマール公爵を見つめます。
「…。レオ殿下の機嫌をとれるのか?」
お菓子をあげればいいから簡単です。
「お任せください。」
マール公爵が突然声を出して笑い出しました。調子が悪いんでしょうか…。
レオ様は王宮でどんな扱いを受けてますの…。気にしてはいけいのに突っ込みたくなりますわ。
「やっぱり欲しいな。うちのリオの婚約者にならないか?」
冗談とわかっていますが、流せる話題ではありません。
察しの悪さに呆れられても構いませんわ。
「私には務まりませんのでお断りさせてください。マール様なら選びたい放題ですよ。まがいものの深窓のご令嬢なんて選ぶ必要はありません」
「気にしてるのかい?」
「全くしてませんわ。私はお父様達さえ認めてくださるなら恥じないようにビアード公爵令嬢として努めるだけですわ。マール公爵、瞳の色を変える方法をご存知ですか?」
「魔道具を用意すればいい」
「お金は払うので、私とレオ様の分もお願いします」
「レオ殿下の世話係をしてくれるなら、それだけでいいよ」
それだけで貴重な魔道具をいただくわけにはいきません。
「レオ様の侍女もやりましょうか?」
「侍女もできるのか?」
「はい。いつでも出稼ぎにいけますわ」
楽しそうなマール公爵に時々不思議な視線を受けながら無事に打ち合わせが終わりました。
部屋を出るとリオに会いました。
「待って。時間があるなら書庫に案内しようか」
リオとは関わる気はありませんが魅力的な誘いです。マール公爵邸の書庫に入る機会はきっともうないでしょう。少しだけならいいでしょう。
「いいんですか?」
「ああ。」
嬉しそうに笑うリオに案内されて書庫に入ります。やはりマール公爵邸の書庫は大きくて本の種類も豊富ですわ。マール公爵の収集癖のおかげで立派な書庫になったそうです。
「読んでもいいですか?」
「ああ。好きに過ごして」
「ありがとうございます」
懐かしい場所です。
生前にリオに読んでもらった絵本があり懐かしくて手にとります。生前はこの書庫でたくさんの子供時代を過ごしました。ここは思い出が詰まった優しい場所です。近くにある懐かしい気配に傍にいるのに違う存在ということが悲しくなります。
目を閉じると優しい顔で「シア」と呼ぶ姿が浮かんできます。今の私をみたら抱き寄せて「どうした?」って言うでしょう。会いたい。寂しい。この本もリオの膝の上で読んでもらったんです。視界が歪んでいきます。
「ビアード嬢」
姿形が同じで、心配そうな声もそっくり。ただ紡ぐ言葉は違うんです。聞きたくなくて耳を塞ぎます。リオは私をシアと呼びます。近づいてくる気配に目を閉じてしゃがみこみます。
「違う、りお、どこ。」
涙が溢れて止まりません。一番安心する腕はないんです。
「りおにいさま・・・」
頭を撫でる手もそっくりです。神様は意地悪です。大丈夫です。リオとの思い出はいっぱいある。涙を拭き大きく息を吸って吐きます。令嬢モードの仮面を被り立ち上がって礼をします。
「マール様、失礼しました。気分が優れないので失礼します」
礼をして、足早に立ち去ります。待たせている馬車に乗り込んで学園に帰ります。
エイベルの部屋を訪ねて勢いよく抱きつきます。驚きながら頭を撫でてくれる手に慰められながら抑えていた涙を流します。たくさん泣いて、ようやく涙が止まりスッキリしました。
「落ち着いたか」
エイベルは私が突然泣いても気にしません。
「はい」
「レティシア、海の皇国に行くときはストームを連れていけ」
「え?」
「お前の命令を聞くように頼んである。ちゃんと帰ってこい。うちにはお前が必要だ」
「ありがとうございます」
リオはいない。でもエイベルも他のみんなも私を必要としてくれます。神様は意地悪だけど優しさもくれます。私は書庫から絵本を持ち帰ったことに気付きました。さすがに会うのが気まずいです。
エイベルの服を掴んで見つめます。
「エイベル、マール様の本を持ってきてしまったんですが、返してくれませんか?」
「わかったよ」
「ありがとう」
今世は嫌なことはエイベルに遠慮なく押し付けます。
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