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兄の苦労日記15
妹は俺の部屋で仕事をするのが日課になっている。うちでも、俺の部屋に自由に出入りするし、邪魔はしないから気にしない。
「お兄様、コクーン様にそっくりの方をご存知ありませんか?」
「は?」
「リアナの探しているハク様にコクーン様の声と顔立ちがそっくりなんですって。リアナはハク様がコクーン様って言うんです。コクーン様は否定されてます。ルメラ領に訪れたことはないそうです」
俺はコクーンが苦手だ。理由がわからないが、警戒しろと直感が告げる。ビアードは直感を大事にする。父上の教えでもあり、日頃から自分の直感を無視しないことにしている。
コクーンの全てが演技に見えて、気色が悪く、人目のない時に妹に向けるねっとりとした視線さえも気持ち悪い。
もし本当にハクがコクーンなら…。友人達が言うにはコクーンは妹に惚れている。妹はハクと侍女を取り持とうとしているが狂信的にハクを想う侍女はハクの想い人が妹と知れば…。嫌な予感しかしない。
「もし見つけたら教えるよ」
「ありがとうございます。」
ビアード公爵家さえ関わらなければ恋愛に興味ない。怪しい侍女を気にかけている嬉しそうに笑う妹が巻き込まれるのは避けたい。恋愛や女心はよくわからない。俺の手におえないからステラを巻き込むか?
「私、海の皇国に視察に行くことになりました」
妹の言葉に思考が止まる。
「は?」
「通訳と水魔導士としてのお役目です。お父様の許可もでました」
「お前が行かなくてもいいだろ?」
「行きますよ」
「なんでそんなに行きたいんだ?」
「知りたいことがあるんです。海の皇国の情報は手に入りませんので」
「何を知りたい?」
「たくさんありすぎて言葉にできません。お兄様、私が行方不明になったら探してくれますか?」
「当然だろうが」
「ずっと?」
「ああ。父上達と一緒に必死に探すよ。何年も」
「そうですよね・・」
「俺が断るからやめないか?」
「嫌です。お土産買ってくるから楽しみにしてください」
妹の海の皇国行きは決まりらしい。なんで未成年で外交官に興味のない妹が行くのかわからない。
妹はどんなに説得しても視察を断る気はないようだ。
上機嫌な様子に頭を抱える。目立たず平穏に過ごしたいって言ってるわりに自分で厄介事に突っ込む癖はなんとかならないだろうか・・・。何度言っても通じない出来の悪い妹の育て方がわからない。馬の調教のほうがよっぽど簡単だ。
***
マール公爵邸に打ち合わせに行った妹が飛び込んできた。
抱きついて泣き出した妹をあやすとしばらくして泣き止む。マールの家の本を間違えて持ち出したと珍しく心底困っている。仕方ないから代わりに返してやるか。
「レティシア、視察は」
「やめません」
強い瞳で見上げる顔はさっきまでの情けない顔とは別人だ。やはりやめる気はないのか。
マールが苦手なのに、こんなんでまともに視察に行けるのか?決めたなら止めても無駄だよな。
いつの間にか切り替えて、笑顔で魔石を寄越せと言うので、望み通りの魔石を作って渡すと能天気な顔で笑う。こいつについては考えるだけ無駄だよな。
翌日本を返すためにマールを訪ねる。
「持ち出して悪かった」
マールに本を渡すと気まずそうに見られている。
「ビアード嬢は?」
何かあったのか?妹は何も話さないし、余計な情報を与える必要ないか。
「視察に向けて準備を夢中でしている。なんでレティシアに声がかかったんだ?」
「わからない。父上が国のためと言うだけで教えてもらえない」
「そうか。世話をかけた」
マールが仕組んだわけではないのか。
妹が視察に同行する理由がわからないが国のためなら断れないか。
放課後にレオ様が部屋に顔を出した。妹は視察の打ち合わせのためにマール公爵に呼び出されている。
「エイベル、レティシアは俺が見てるよ。何かあればレティシアを連れて転移魔法で帰ってくるよ」
「危機感がズレてるのでよろしくお願いします」
レオ様は俺の言葉に屈託ない笑顔を見せる。
レオ様は表情豊かになり妹はレオ様の変化を喜んでいる。恐れ多くも妹よりも常識がありそうなレオ様に頼むことにした。レオ様の護衛はビアードで精鋭を用意するから心配はしていない。
***
海の皇国の情報は少なく、妹は目的があるらしいが決して話さない。行動力のある妹の見知らぬ土地での視察は不安で仕方ない。
「ストーム、海の皇国に行くレティシアを守ってくれないか?」
「わかった」
「あいつの頼みも聞いてくれるか?」
「主の願いは叶えるよ。」
「頼むよ」
ストームは強い。教科書にない魔法を教えてくれるおかげで使える魔法が増えた。ストームをつければ、安全だろう。妹が余計なことに首をつっこまないことを祈るばかりである。
俺の心配など気にせずに、妹は上機嫌でお土産楽しみにしててくださいと笑顔で手を振って出発した。
***
家臣から送られてきた報告書に目を通す。怪しい侍女の態度は変わらないらしい。都合の良いことしか頭に入らない。面倒な奴を拾ってきたよな。
海の皇国に旅立った妹から手紙が届いた。
「エイベルへ
お元気ですか?ずっと訓練ですか?
海の皇国は海の魔物がたくさんいるので、水の魔法の訓練し放題です。帰ったら手合わせしてください。
荷物持ちを持って帰ります。
レオ様はお仕事きちんと頑張ってます。軍資金はバッチリなので、きちんとお土産買って帰るので安心して下さい。」
元気にやってるようだ。荷物持ちを持って帰るってまた何か拾ってきたんじゃないだろうな。俺は一言も土産を頼んでないんだけど。
明後日帰ってくるから迎えに行くか・・。
妹の教室を訪ね心配しているステラに手紙を渡すとフィルが覗き込む。
「お元気なんですね」
「レティシアは楽しそうですね」
フィルとステラが妹の手紙を読んで笑っている。
「ステラ、頼みがある」
「お任せください」
即答するステラに苦笑する。
「要件を聞いてから了承しろ。レティシアが怪しい友達を作った。お人好しが利用されないように気をつけてやってほしい」
「リアナはやばいよな。レティシアにお茶を淹れさせるし、うまく煽ってくる。うまくいかないと癇癪を起こすし」
フィルが心底呆れた表情を浮かべるのは珍しい。
「フィル、なんで知ってる?」
「レティシアに視察中にビアードに訓練に行くなら、リアナの様子を見てほしいと頼まれました。リアナはコクーンに会えずに不満が溜まっています。リアナの中ではコクーンが探し人のようです。」
妹はフィルに頼んだのか。フィルはある一件から父上やうちの騎士達に気に入られてるからよくうちで訓練している。生家よりもビアードのほうが強くなれると堂々と話すカーソン伯爵嫡男ってどうなんだろうか。強くなるために手段を選ばないことを評価すべきか。妹とフィルはお互いに家を盛り立てようと同盟を組んでいるらしい。当時は子供の遊びの口約束だと思っていたが二人は本気だったらしい。
「エイベル様、事情を教えてください」
ステラに怪しい友達の話をすると、冷笑を浮かべている。ステラはマナと気が合う。
「私はお泊りに行ってもよろしいですか?」
「レティシアを通すなら歓迎するよ」
「俺はコクーンを見てますよ。胡散臭いんだよな…。レティシアは紳士と言いますが」
「あいつの勘はあてにならない。」
妹の友達が心強くてありがたい。フィルは嫡男じゃなければ、妹を任せてもいいのに非常に残念だ。
***
妹を迎えに行くと能天気な顔で笑っていた。
馬車の中で妹の話を聞いて言葉を失う。
ローナが皇帝の妾でロキは皇族の血を引いている。ローナの家族に今後のことを相談してきたらしい。一時期、妹がロキ達の家族を探そうか悩んでいた時期があったが…。思いっきり頭を叩く。
「確証なくてもいいから相談しろ!!」
「ごめんなさい」
妹は左手のない男を連れて帰ってきた。
ローナの昔の恋人らしい。ローナ目当てに海の皇国から貴族が押しかけてくるかもしれないって…。父上達も予定を調整してうちで妹の帰りを待っているから後で報告するか。連れてきた男が災厄ではないといいが。妹の拾い癖はなんとかならないだろうか…。
とりあえず大きな問題は起こさず無事に帰ってきて良かった。
「お兄様、コクーン様にそっくりの方をご存知ありませんか?」
「は?」
「リアナの探しているハク様にコクーン様の声と顔立ちがそっくりなんですって。リアナはハク様がコクーン様って言うんです。コクーン様は否定されてます。ルメラ領に訪れたことはないそうです」
俺はコクーンが苦手だ。理由がわからないが、警戒しろと直感が告げる。ビアードは直感を大事にする。父上の教えでもあり、日頃から自分の直感を無視しないことにしている。
コクーンの全てが演技に見えて、気色が悪く、人目のない時に妹に向けるねっとりとした視線さえも気持ち悪い。
もし本当にハクがコクーンなら…。友人達が言うにはコクーンは妹に惚れている。妹はハクと侍女を取り持とうとしているが狂信的にハクを想う侍女はハクの想い人が妹と知れば…。嫌な予感しかしない。
「もし見つけたら教えるよ」
「ありがとうございます。」
ビアード公爵家さえ関わらなければ恋愛に興味ない。怪しい侍女を気にかけている嬉しそうに笑う妹が巻き込まれるのは避けたい。恋愛や女心はよくわからない。俺の手におえないからステラを巻き込むか?
「私、海の皇国に視察に行くことになりました」
妹の言葉に思考が止まる。
「は?」
「通訳と水魔導士としてのお役目です。お父様の許可もでました」
「お前が行かなくてもいいだろ?」
「行きますよ」
「なんでそんなに行きたいんだ?」
「知りたいことがあるんです。海の皇国の情報は手に入りませんので」
「何を知りたい?」
「たくさんありすぎて言葉にできません。お兄様、私が行方不明になったら探してくれますか?」
「当然だろうが」
「ずっと?」
「ああ。父上達と一緒に必死に探すよ。何年も」
「そうですよね・・」
「俺が断るからやめないか?」
「嫌です。お土産買ってくるから楽しみにしてください」
妹の海の皇国行きは決まりらしい。なんで未成年で外交官に興味のない妹が行くのかわからない。
妹はどんなに説得しても視察を断る気はないようだ。
上機嫌な様子に頭を抱える。目立たず平穏に過ごしたいって言ってるわりに自分で厄介事に突っ込む癖はなんとかならないだろうか・・・。何度言っても通じない出来の悪い妹の育て方がわからない。馬の調教のほうがよっぽど簡単だ。
***
マール公爵邸に打ち合わせに行った妹が飛び込んできた。
抱きついて泣き出した妹をあやすとしばらくして泣き止む。マールの家の本を間違えて持ち出したと珍しく心底困っている。仕方ないから代わりに返してやるか。
「レティシア、視察は」
「やめません」
強い瞳で見上げる顔はさっきまでの情けない顔とは別人だ。やはりやめる気はないのか。
マールが苦手なのに、こんなんでまともに視察に行けるのか?決めたなら止めても無駄だよな。
いつの間にか切り替えて、笑顔で魔石を寄越せと言うので、望み通りの魔石を作って渡すと能天気な顔で笑う。こいつについては考えるだけ無駄だよな。
翌日本を返すためにマールを訪ねる。
「持ち出して悪かった」
マールに本を渡すと気まずそうに見られている。
「ビアード嬢は?」
何かあったのか?妹は何も話さないし、余計な情報を与える必要ないか。
「視察に向けて準備を夢中でしている。なんでレティシアに声がかかったんだ?」
「わからない。父上が国のためと言うだけで教えてもらえない」
「そうか。世話をかけた」
マールが仕組んだわけではないのか。
妹が視察に同行する理由がわからないが国のためなら断れないか。
放課後にレオ様が部屋に顔を出した。妹は視察の打ち合わせのためにマール公爵に呼び出されている。
「エイベル、レティシアは俺が見てるよ。何かあればレティシアを連れて転移魔法で帰ってくるよ」
「危機感がズレてるのでよろしくお願いします」
レオ様は俺の言葉に屈託ない笑顔を見せる。
レオ様は表情豊かになり妹はレオ様の変化を喜んでいる。恐れ多くも妹よりも常識がありそうなレオ様に頼むことにした。レオ様の護衛はビアードで精鋭を用意するから心配はしていない。
***
海の皇国の情報は少なく、妹は目的があるらしいが決して話さない。行動力のある妹の見知らぬ土地での視察は不安で仕方ない。
「ストーム、海の皇国に行くレティシアを守ってくれないか?」
「わかった」
「あいつの頼みも聞いてくれるか?」
「主の願いは叶えるよ。」
「頼むよ」
ストームは強い。教科書にない魔法を教えてくれるおかげで使える魔法が増えた。ストームをつければ、安全だろう。妹が余計なことに首をつっこまないことを祈るばかりである。
俺の心配など気にせずに、妹は上機嫌でお土産楽しみにしててくださいと笑顔で手を振って出発した。
***
家臣から送られてきた報告書に目を通す。怪しい侍女の態度は変わらないらしい。都合の良いことしか頭に入らない。面倒な奴を拾ってきたよな。
海の皇国に旅立った妹から手紙が届いた。
「エイベルへ
お元気ですか?ずっと訓練ですか?
海の皇国は海の魔物がたくさんいるので、水の魔法の訓練し放題です。帰ったら手合わせしてください。
荷物持ちを持って帰ります。
レオ様はお仕事きちんと頑張ってます。軍資金はバッチリなので、きちんとお土産買って帰るので安心して下さい。」
元気にやってるようだ。荷物持ちを持って帰るってまた何か拾ってきたんじゃないだろうな。俺は一言も土産を頼んでないんだけど。
明後日帰ってくるから迎えに行くか・・。
妹の教室を訪ね心配しているステラに手紙を渡すとフィルが覗き込む。
「お元気なんですね」
「レティシアは楽しそうですね」
フィルとステラが妹の手紙を読んで笑っている。
「ステラ、頼みがある」
「お任せください」
即答するステラに苦笑する。
「要件を聞いてから了承しろ。レティシアが怪しい友達を作った。お人好しが利用されないように気をつけてやってほしい」
「リアナはやばいよな。レティシアにお茶を淹れさせるし、うまく煽ってくる。うまくいかないと癇癪を起こすし」
フィルが心底呆れた表情を浮かべるのは珍しい。
「フィル、なんで知ってる?」
「レティシアに視察中にビアードに訓練に行くなら、リアナの様子を見てほしいと頼まれました。リアナはコクーンに会えずに不満が溜まっています。リアナの中ではコクーンが探し人のようです。」
妹はフィルに頼んだのか。フィルはある一件から父上やうちの騎士達に気に入られてるからよくうちで訓練している。生家よりもビアードのほうが強くなれると堂々と話すカーソン伯爵嫡男ってどうなんだろうか。強くなるために手段を選ばないことを評価すべきか。妹とフィルはお互いに家を盛り立てようと同盟を組んでいるらしい。当時は子供の遊びの口約束だと思っていたが二人は本気だったらしい。
「エイベル様、事情を教えてください」
ステラに怪しい友達の話をすると、冷笑を浮かべている。ステラはマナと気が合う。
「私はお泊りに行ってもよろしいですか?」
「レティシアを通すなら歓迎するよ」
「俺はコクーンを見てますよ。胡散臭いんだよな…。レティシアは紳士と言いますが」
「あいつの勘はあてにならない。」
妹の友達が心強くてありがたい。フィルは嫡男じゃなければ、妹を任せてもいいのに非常に残念だ。
***
妹を迎えに行くと能天気な顔で笑っていた。
馬車の中で妹の話を聞いて言葉を失う。
ローナが皇帝の妾でロキは皇族の血を引いている。ローナの家族に今後のことを相談してきたらしい。一時期、妹がロキ達の家族を探そうか悩んでいた時期があったが…。思いっきり頭を叩く。
「確証なくてもいいから相談しろ!!」
「ごめんなさい」
妹は左手のない男を連れて帰ってきた。
ローナの昔の恋人らしい。ローナ目当てに海の皇国から貴族が押しかけてくるかもしれないって…。父上達も予定を調整してうちで妹の帰りを待っているから後で報告するか。連れてきた男が災厄ではないといいが。妹の拾い癖はなんとかならないだろうか…。
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