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元夫の苦難3
父上にビアード公爵夫妻に気に入られてこいと笑顔で書類を渡され送り出された。
ビアード公爵邸に着くと、見覚えのある男を見つけた。海の皇国でレティシアが荷物持ちとして引き取った男は顔色も肉付きも良くなり表情も明るい。
「世話になりました」
フラン王国語に不慣れなら海の皇国語で話すか。
『気にしないでください。体調が回復されてよかったです』
『言葉が不慣れで申し訳ありません。レティシア様から教わってますが中々・・』
レティシアと親しいのか。
ビアード領内に味方が欲しい。うまくすれば心象も良くなるかもしれない。ビアードでの俺の立ち位置は訓練に参加しているその他大勢と一緒だ。
気まずそうな顔の男に笑みを浮かべて提案することにした。
『俺でよければ教えますよ』
『ご迷惑でなければ』
あっさり了承されて、驚いたがありがたい。
ウォントという左腕のない執事と予定を合わせて次回はビアード領で会う約束をした。
ビアード領に訓練以外で訪問する口実ができるのはありがたい。もしかしたら会えるかもしれない。ウォントにはそれらしい理由を伝えて口止めを頼んだ。シスコンのビアードには知られたら面倒だから。
ウォントと話す俺を見つけて執事長が近づき、粗相があったかと謝罪されたが、話しただけと弁明する。
執事長に案内されビアード公爵夫妻と面会するが、書類を渡し礼を言われるだけですぐに終わり退室すると足に勢いよく何かがぶつかった。
幼女が尻もちをついている。
「大丈夫か?」
「大丈夫。お兄ちゃんは」
かがんで幼女を抱き起こすと、執事服を着た少年が近づき礼をした。
「妹が申しわけありません。ナギ、お客様に失礼だ」
「お兄ちゃん、お嬢様とお揃い」
幼女が俺の顔を指さしている。
「同じ瞳の色でも家族じゃない。離れて。人を指ささない」
「お嬢様、全然帰って来ない」
「我儘言わない。お嬢様はエイベル様のために忙しい。」
「最近、ルーンばっかり」
「お嬢様にお手紙を書こう。その前にきちんと挨拶して」
「失礼しました」
「妹が申しわけありませんでした」
少年が礼をして妹の手を引っ張り去っていく。こんな小さい子供が働いてるのか?
しばらくして執事長に謝罪をされて、外まで送られた。俺に無関心なビアード公爵夫妻にはどうすれば気に入られるんだろうか。
親しくなれればウォントに聞いてみるか?
***
ウォントに言葉を教え始めた。頭の回転も速く言葉の覚えも悪くない。レティシアの役に立ちたいからレティシアのことを教えて欲しいと頼まれたが俺が教えられるのは学園での様子くらいだ。ウォントとビアード領を歩くと、領民はビアード兄妹の話ばかりしている。
レティシアはビアード領民に異常に好かれている。ウォントや領民の話すレティシアのビアード領での話は楽しく、貴重な情報はありがたい。
ウォントとは最初の頃はビアード領を案内してもらっていたけど、騒がしいのでビアード領の森の中で話をすることが増えた。
ビアード公爵家の情報を聞くためにウォントのビアードの生活での話を聞いていた。
好きな人がいるのに全く相手にされず苦労している話に共感してしまった。
森の中を歩いていると澄んだ泉に着き、ウォントが静かに泉を見つめている。
「レティシア様は時々護衛騎士のかわりに俺を連れ出して話を聞いてくれるんです。レティシア様は俺を強いって言うんです」
レティシアは使用人への心配りが凄いよな。俺は一度も使用人のために時間を作ったことはない。
給金の分だけ働いてくれればいい。
護衛って、ウォントは騎士としてはあまり強くないと言っていたが平気なのか?
「強い?」
「愛する人に素っ気なくされても追いかけられることが。レティシア様は俺のようにはなれないって。笑っているのに悲しそうなんです。愛する人を亡くした世界は寂しく、最愛の人が恋しくてたまらないって。そこの泉に潜って泣きはらした目で帰ってくるんです。貴族だから自分の意思で選べないけどって最後は明るく笑われるんです。あんなに優しいレティシア様は幸せになれないんでしょうか・・・」
寂しそうに語るウォントの言葉に目を見張る。
強さは心の事?
いつも笑顔の彼女が泣き腫らす?
殿下に睨まれても、叩かれても、怪我した時でさえ泣いてる姿は見たことがない。
愛する人が亡くなったってビアード公爵家にそんな情報あったか?
分家のほうか?
「どんな相手だったんだろうな」
「世界で一番素敵な人だそうです。似ている方を見ると愛する人との違いに切なくなるそうです。レティシア様は彼しか愛せないから俺には幸せになってほしいって笑うんです。時とともに傷が癒え新しい出会いをなんて気休めさえも言えません。どうすればお慰めできるのか」
彼って男?
この言いようだと方家族じゃなくて恋人・・・?
ウォントの言葉に脳裏によぎった姿があった。
学園では絶対に泣かないのに、前にうちの書庫で様子がおかしくなって泣いてたよな。
似てる?
まさか、レティシアは俺の中に別の誰かを探しているのか…?
誘導してもウォントはこれ以上の情報は持っていなかった。
村に戻り食事をした後にウォントと別れ泉に立ち寄る。
ここで彼女は泣いてるんだろうか。
彼女の泣き顔を見たの3回。
初めて会った時は俺が似ていて動揺して泣いたのか?
大蛇を見た時もリオが死ぬと涙を流して腕に縋った。
うちの書庫では消えそうにリオと呼んで蹲っていた。
泉を眺めているとパシャンと音がして人の気配がした。
視線を向けると泉からキラキラと光る銀髪が見え、顔を出したのは髪を解いているレティシア。泉からびしょ濡れで上がり、目が合うと大きく目を開けて近づいてくる。
「え?リオ?」
首を傾げたレティシアはふんわり笑い、ゆっくりと手を伸ばし胸に触れられる。
俺の胸にあてられた冷たい両手が離れて、そっと抱きしめられ、肌に感じる柔らかい体に思考が止まる。
俺の熱る体と正反対の冷たい彼女の背に手を回すとレティシアの力が抜け胸に顔を埋められた。
「リオ、ずるい。でも会えて嬉しい。幸せなのに寂しい。ビアードに慣れない。我儘言わないから。時々でいいから会いに来て。リオ兄様の腕に帰ってこれるなら、シアは頑張る」
胸に顔を埋めたまま甘えを含んだ拗ねる口調。
「お嬢様」
レティシアが顔をあげた。
「見つかりました。リオ、約束です。愛してますわ」
レティシアの顔が近づいて唇が重なった。
目が合うとふんわり笑って離れていく。
「マオ、ここにいますわ」
さらに体が熱くなり、頭が真っ白で気付くとあたりは暗くなっていた。
初めて知った甘えるように拗ねた声も笑顔もたまらなかった。
触れられた唇を思い出すとさらに体が熱くなる。
俺に向けられたものではない。
レティシアの中にいるリオは別人か。
今までの行動も理解した。
うちの書庫で俺の名を呼んで泣き崩れたのも、訳の分からなかった言葉も親しみがこもった視線も彼女の中のリオに向けられたものだ。
俺へのものじゃない。
あんな表情を、仕草も、向けられる全てのものが羨ましい!!
でも彼女のリオはもういないのか・・・。
俺がもらってもいいよな。
俺は彼女が手に入るなら代わりでもいい。
レティシアが欲しい。
腕の中で甘える様子は格別で思い出すと笑いがこみ上げる。
父上の言葉がようやくわかった。
恋は生易しいものじゃない。全てを捨ててもどんな汚い手を使っても手に入れたい衝動に駆られ、理性も飛ぶ。
笑いが収まり体の熱もようやく冷め、気づくと濡れた体も乾いている。
どうしたら手に入れられるか。
情報を集めるか。
ウォントと親しくなって良かった。
ルーンに行ってるって言ってたから母上に相談しよう。
ウォントとはこのまま親交を深め、ここの泉にも顔を出すか。
もしも俺にそっくりな相手が好きだったなら勝機はある。
俺は三男だから婿入りできるし、強くさえなれば可能性はある。
父上は嫁に迎えたいみたいだけど、ビアードに婿入りしてもマールの夜会に参加すれば許してくれるだろう。
初めて光が見えた。
愉快でたまらない。
マール公爵邸に帰り、晩餐の後に母上にレティシアのことを教えてほしいと頼んだ。
「何が知りたいの?」
「好きな男の好みを。モテなくて、武術ができて、兄と仲が良い以外の」
母上が楽しそうに笑っている。
「いつも傍にいて、守ってくれるところが好きって言ってたわ。抱きしめて頭を撫でてもらうと安心するみたいよ。自慢のお兄様って」
あいつはそんなことしているのか!?
いつもレティシアの頭を躊躇なく叩いているのに、抱きしめてるのか!?
時々頭を撫でて、レティシアが嬉しそうに笑うのは知っているけど。
ビアードへの不満は後にしよう。
今は兄の話を知りたいわけじゃないんだけど。
「母上、俺は男の趣味を」
「バカね。レティシアはブラコンよ。婚約者候補にしたいと名前をあげたのは頼りになる兄ばかりだもの。ビアード公爵夫人が嘆いてたわ。婿に迎え入れたくても家が手放さないって。レティシアは嫁に出さないので婿入り必須ですって。リオは末っ子だから残念ね」
俺だって年上だし…。
「俺は彼女が欲しいから努力します。いずれビアード公爵を倒します」
母上にずっと笑われている。
「多分エイベル様にも勝たないとお嫁にもらえないわよ。今のリオでは無理。レティシアはエイベル様を強くするために動いているわ。同じ日にローゼに挑みに行く?」
ルーンにいるのは、そういうことか…。
「お願いします」
「手配はしてあげるわ。他に攫われないように頑張りなさい」
母上も味方だったのか。
俺が彼女を好きなこと知らない人間はいないのか…。
反対されるよりはいいか…。協力者は多い方がいいよな。
「母上、令嬢達に嫌われる方法を考えてください」
「令嬢達とはうまく付き合ったほうがいいわよ。利害が一致する令嬢もいるはずよ。自分のファンもちゃんと手綱を握りなさい」
「手綱?」
「レティシアは貴方との視察から帰って1週間で貴方のファンに15回も呼び出され、問い詰められたそうよ。言葉は濁したけど、リオのファンは過激だから近付きたくないって。自分でできないならご令嬢に相談しなさい。適任者はいるはずよ」
初耳だった。
近付きたくないって、やっぱり避けられてたのか。
俺が話しかけるといつも周りを見る理由はそれだったんだろうか。
母上のことだから直接聞いたんだよな。
贈り物の仲介も絡まれたんだろうか…。
彼女は俺に用がないのに会いにこないもんな…。
「社交の教材には丁度いいわ。レティシアはリオのより話せる言語が多く、魔法も上手い。頼りにされるには先が遠いわね」
楽しそうな母上に頼って叔母上に師事することにした。
強くて頼れる存在を目指すために。
ビアード公爵邸に着くと、見覚えのある男を見つけた。海の皇国でレティシアが荷物持ちとして引き取った男は顔色も肉付きも良くなり表情も明るい。
「世話になりました」
フラン王国語に不慣れなら海の皇国語で話すか。
『気にしないでください。体調が回復されてよかったです』
『言葉が不慣れで申し訳ありません。レティシア様から教わってますが中々・・』
レティシアと親しいのか。
ビアード領内に味方が欲しい。うまくすれば心象も良くなるかもしれない。ビアードでの俺の立ち位置は訓練に参加しているその他大勢と一緒だ。
気まずそうな顔の男に笑みを浮かべて提案することにした。
『俺でよければ教えますよ』
『ご迷惑でなければ』
あっさり了承されて、驚いたがありがたい。
ウォントという左腕のない執事と予定を合わせて次回はビアード領で会う約束をした。
ビアード領に訓練以外で訪問する口実ができるのはありがたい。もしかしたら会えるかもしれない。ウォントにはそれらしい理由を伝えて口止めを頼んだ。シスコンのビアードには知られたら面倒だから。
ウォントと話す俺を見つけて執事長が近づき、粗相があったかと謝罪されたが、話しただけと弁明する。
執事長に案内されビアード公爵夫妻と面会するが、書類を渡し礼を言われるだけですぐに終わり退室すると足に勢いよく何かがぶつかった。
幼女が尻もちをついている。
「大丈夫か?」
「大丈夫。お兄ちゃんは」
かがんで幼女を抱き起こすと、執事服を着た少年が近づき礼をした。
「妹が申しわけありません。ナギ、お客様に失礼だ」
「お兄ちゃん、お嬢様とお揃い」
幼女が俺の顔を指さしている。
「同じ瞳の色でも家族じゃない。離れて。人を指ささない」
「お嬢様、全然帰って来ない」
「我儘言わない。お嬢様はエイベル様のために忙しい。」
「最近、ルーンばっかり」
「お嬢様にお手紙を書こう。その前にきちんと挨拶して」
「失礼しました」
「妹が申しわけありませんでした」
少年が礼をして妹の手を引っ張り去っていく。こんな小さい子供が働いてるのか?
しばらくして執事長に謝罪をされて、外まで送られた。俺に無関心なビアード公爵夫妻にはどうすれば気に入られるんだろうか。
親しくなれればウォントに聞いてみるか?
***
ウォントに言葉を教え始めた。頭の回転も速く言葉の覚えも悪くない。レティシアの役に立ちたいからレティシアのことを教えて欲しいと頼まれたが俺が教えられるのは学園での様子くらいだ。ウォントとビアード領を歩くと、領民はビアード兄妹の話ばかりしている。
レティシアはビアード領民に異常に好かれている。ウォントや領民の話すレティシアのビアード領での話は楽しく、貴重な情報はありがたい。
ウォントとは最初の頃はビアード領を案内してもらっていたけど、騒がしいのでビアード領の森の中で話をすることが増えた。
ビアード公爵家の情報を聞くためにウォントのビアードの生活での話を聞いていた。
好きな人がいるのに全く相手にされず苦労している話に共感してしまった。
森の中を歩いていると澄んだ泉に着き、ウォントが静かに泉を見つめている。
「レティシア様は時々護衛騎士のかわりに俺を連れ出して話を聞いてくれるんです。レティシア様は俺を強いって言うんです」
レティシアは使用人への心配りが凄いよな。俺は一度も使用人のために時間を作ったことはない。
給金の分だけ働いてくれればいい。
護衛って、ウォントは騎士としてはあまり強くないと言っていたが平気なのか?
「強い?」
「愛する人に素っ気なくされても追いかけられることが。レティシア様は俺のようにはなれないって。笑っているのに悲しそうなんです。愛する人を亡くした世界は寂しく、最愛の人が恋しくてたまらないって。そこの泉に潜って泣きはらした目で帰ってくるんです。貴族だから自分の意思で選べないけどって最後は明るく笑われるんです。あんなに優しいレティシア様は幸せになれないんでしょうか・・・」
寂しそうに語るウォントの言葉に目を見張る。
強さは心の事?
いつも笑顔の彼女が泣き腫らす?
殿下に睨まれても、叩かれても、怪我した時でさえ泣いてる姿は見たことがない。
愛する人が亡くなったってビアード公爵家にそんな情報あったか?
分家のほうか?
「どんな相手だったんだろうな」
「世界で一番素敵な人だそうです。似ている方を見ると愛する人との違いに切なくなるそうです。レティシア様は彼しか愛せないから俺には幸せになってほしいって笑うんです。時とともに傷が癒え新しい出会いをなんて気休めさえも言えません。どうすればお慰めできるのか」
彼って男?
この言いようだと方家族じゃなくて恋人・・・?
ウォントの言葉に脳裏によぎった姿があった。
学園では絶対に泣かないのに、前にうちの書庫で様子がおかしくなって泣いてたよな。
似てる?
まさか、レティシアは俺の中に別の誰かを探しているのか…?
誘導してもウォントはこれ以上の情報は持っていなかった。
村に戻り食事をした後にウォントと別れ泉に立ち寄る。
ここで彼女は泣いてるんだろうか。
彼女の泣き顔を見たの3回。
初めて会った時は俺が似ていて動揺して泣いたのか?
大蛇を見た時もリオが死ぬと涙を流して腕に縋った。
うちの書庫では消えそうにリオと呼んで蹲っていた。
泉を眺めているとパシャンと音がして人の気配がした。
視線を向けると泉からキラキラと光る銀髪が見え、顔を出したのは髪を解いているレティシア。泉からびしょ濡れで上がり、目が合うと大きく目を開けて近づいてくる。
「え?リオ?」
首を傾げたレティシアはふんわり笑い、ゆっくりと手を伸ばし胸に触れられる。
俺の胸にあてられた冷たい両手が離れて、そっと抱きしめられ、肌に感じる柔らかい体に思考が止まる。
俺の熱る体と正反対の冷たい彼女の背に手を回すとレティシアの力が抜け胸に顔を埋められた。
「リオ、ずるい。でも会えて嬉しい。幸せなのに寂しい。ビアードに慣れない。我儘言わないから。時々でいいから会いに来て。リオ兄様の腕に帰ってこれるなら、シアは頑張る」
胸に顔を埋めたまま甘えを含んだ拗ねる口調。
「お嬢様」
レティシアが顔をあげた。
「見つかりました。リオ、約束です。愛してますわ」
レティシアの顔が近づいて唇が重なった。
目が合うとふんわり笑って離れていく。
「マオ、ここにいますわ」
さらに体が熱くなり、頭が真っ白で気付くとあたりは暗くなっていた。
初めて知った甘えるように拗ねた声も笑顔もたまらなかった。
触れられた唇を思い出すとさらに体が熱くなる。
俺に向けられたものではない。
レティシアの中にいるリオは別人か。
今までの行動も理解した。
うちの書庫で俺の名を呼んで泣き崩れたのも、訳の分からなかった言葉も親しみがこもった視線も彼女の中のリオに向けられたものだ。
俺へのものじゃない。
あんな表情を、仕草も、向けられる全てのものが羨ましい!!
でも彼女のリオはもういないのか・・・。
俺がもらってもいいよな。
俺は彼女が手に入るなら代わりでもいい。
レティシアが欲しい。
腕の中で甘える様子は格別で思い出すと笑いがこみ上げる。
父上の言葉がようやくわかった。
恋は生易しいものじゃない。全てを捨ててもどんな汚い手を使っても手に入れたい衝動に駆られ、理性も飛ぶ。
笑いが収まり体の熱もようやく冷め、気づくと濡れた体も乾いている。
どうしたら手に入れられるか。
情報を集めるか。
ウォントと親しくなって良かった。
ルーンに行ってるって言ってたから母上に相談しよう。
ウォントとはこのまま親交を深め、ここの泉にも顔を出すか。
もしも俺にそっくりな相手が好きだったなら勝機はある。
俺は三男だから婿入りできるし、強くさえなれば可能性はある。
父上は嫁に迎えたいみたいだけど、ビアードに婿入りしてもマールの夜会に参加すれば許してくれるだろう。
初めて光が見えた。
愉快でたまらない。
マール公爵邸に帰り、晩餐の後に母上にレティシアのことを教えてほしいと頼んだ。
「何が知りたいの?」
「好きな男の好みを。モテなくて、武術ができて、兄と仲が良い以外の」
母上が楽しそうに笑っている。
「いつも傍にいて、守ってくれるところが好きって言ってたわ。抱きしめて頭を撫でてもらうと安心するみたいよ。自慢のお兄様って」
あいつはそんなことしているのか!?
いつもレティシアの頭を躊躇なく叩いているのに、抱きしめてるのか!?
時々頭を撫でて、レティシアが嬉しそうに笑うのは知っているけど。
ビアードへの不満は後にしよう。
今は兄の話を知りたいわけじゃないんだけど。
「母上、俺は男の趣味を」
「バカね。レティシアはブラコンよ。婚約者候補にしたいと名前をあげたのは頼りになる兄ばかりだもの。ビアード公爵夫人が嘆いてたわ。婿に迎え入れたくても家が手放さないって。レティシアは嫁に出さないので婿入り必須ですって。リオは末っ子だから残念ね」
俺だって年上だし…。
「俺は彼女が欲しいから努力します。いずれビアード公爵を倒します」
母上にずっと笑われている。
「多分エイベル様にも勝たないとお嫁にもらえないわよ。今のリオでは無理。レティシアはエイベル様を強くするために動いているわ。同じ日にローゼに挑みに行く?」
ルーンにいるのは、そういうことか…。
「お願いします」
「手配はしてあげるわ。他に攫われないように頑張りなさい」
母上も味方だったのか。
俺が彼女を好きなこと知らない人間はいないのか…。
反対されるよりはいいか…。協力者は多い方がいいよな。
「母上、令嬢達に嫌われる方法を考えてください」
「令嬢達とはうまく付き合ったほうがいいわよ。利害が一致する令嬢もいるはずよ。自分のファンもちゃんと手綱を握りなさい」
「手綱?」
「レティシアは貴方との視察から帰って1週間で貴方のファンに15回も呼び出され、問い詰められたそうよ。言葉は濁したけど、リオのファンは過激だから近付きたくないって。自分でできないならご令嬢に相談しなさい。適任者はいるはずよ」
初耳だった。
近付きたくないって、やっぱり避けられてたのか。
俺が話しかけるといつも周りを見る理由はそれだったんだろうか。
母上のことだから直接聞いたんだよな。
贈り物の仲介も絡まれたんだろうか…。
彼女は俺に用がないのに会いにこないもんな…。
「社交の教材には丁度いいわ。レティシアはリオのより話せる言語が多く、魔法も上手い。頼りにされるには先が遠いわね」
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