追憶令嬢のやり直し

夕鈴

文字の大きさ
104 / 286

元夫の苦難 9

しおりを挟む
登校するとルイーザ・ラズ侯爵令嬢に待ち伏せされていた。

「リオ様、レティシア様に全く意識されてませんがよろしいのですか?」
「関係ないだろう」
「変わった方ですよね。私の方が絶対お役に立ちますよ」

俺は喧嘩を売られているのか?外交問題になるから心を折れば問題になるよな…。
レティシアも君にだけは言われたくないと思うが…。少なくともレティシアは留学先で嫌がる貴族に付き纏わないし悪口も言わないし決闘を挑んだりしない。
能力重視の父上達が外交官に欲しいと口にしたのは今の所はレティシアだけだ。

「レティシアはうちの家族に気に入られている。父上と義姉上は特に」
「エレン様ですか!?」
「ああ。絶対に逃すなと」
「あまり社交は得意なようには見えませんが…」
「俺は用があるのでこれで」

なんでレティシアの悪口を伝えにくるんだろうか…。彼女の起こした問題を穏便に収めているのはレティシアだ。彼女が動かなければ、殿下が仲裁に動くかラル王国に抗議を申し立てるか、どれだけ面倒になったのかわからないのか?人の話を聞かない相手に話しても無駄か。
クロード殿下はレティシアが仲裁に駆け回っているのを知っている。
レティシアが報告しなくても彼女の非常識な行動は注目を集めている。そして臣下を放置して自分に色目を使う姫君に辟易している。
この留学で楽しそうなのはラル王国側だけである。
立ち去ると追いかけてこないことにほっとした。以前より付き纏われていないのだけはありがたい。

***

放課後にカーチスに用があり2年1組を訪ねるといない。レティシアもいないのか…。

「マール様、グルト様ならレティシアの部屋にいますよ」
「は?」
「クラムがいないので、レティシアが接待役の代役を。俺、伝言頼まれてるんですが帰ってこないんですよ。伝えていただけますか?」
「ああ。伝えておく」
「ありがとうございます。失礼します」

レティシアの友人のフィル・カーソンは礼をして教室を出て行く。女好きのグルトの接待をレティシアが?
嫌な予感しかせず、レティシアの部屋に足早に進むと友人と話しているカーチスを見つけた。視線を向けると目が合い、駆け寄ってきた。

「グルトはどうした?」
「すみません。たぶん教室です」
「レティシアの部屋にいる」

カーチスが目を見開いた。

「ビアード!!まずい!!すみません!!失礼します」

慌てた様子でカーチスがレティシアの部屋に足を早めたので追いかける。
ノックをせずにカーチスがレティシアの部屋に入り固まっている。
部屋の中には楽しそうなラズ侯爵令嬢と真っ赤な顔のアリス・マートン嬢が目に入った。
二人の視線の先の光景は許せないものだった。
レティシアの髪に口づけながら、レティシアと見つめ合うグルトは斬ってもいいだろうか・・。

「レティシア!?」

ゆっくりと振り向いたレティシアは俺とカーチスを見て淑やかな笑みを浮かべた。

「カーチス様、お疲れさまです。ラズ様のおもてなしを代わってください」

言葉を失っているカーチスは放っておいて、レティシアの髪から手を離さないグルトを睨む。

「離れてくれないか」
「マール様、振り払ったら外交問題になりますか?」

振り払わないのは接待役だからか?
いつもと同じ穏やかな顔を向ける無防備なレティシアが心配でたまらない。
いつか襲われるんじゃないか?
グルトを意識していないことに喜ぶべきか?今はレティシアの美しい銀髪に触れている男の排除が先決か…。

「ならない。むしろ、訴えるなら喜んで協力するよ」
「アリス様に同じことをしたら沈めますので覚えておいてください」

綺麗な笑みを浮かべてグルトに向き直ったレティシアの言葉に目を丸くする。見つめ合う二人が不愉快だから強制的に引き離そう。
レティシアに用事を聞かれたので笑みを浮かべる。

「グルトを迎えにきた。代役悪いな。行くか」

グルトのレティシアに触れていた手を強く掴み退室した。

「邪魔するなよ」
「後輩に手を出されるわけにはいかない。女遊びは帰国してからにしろよ」
「恋愛は自由だ。レティシアに恋人はいないんだよな?慣れてないか?」
「は?」
「俺に迫られて動揺しない令嬢は初めてだ。静かに見ているだけで、頬も染めない。髪ではなく口づけたら」
「迫るな!!」
「グルト、ビアードは物凄くモテる。令嬢に慕われて赤面しても男に迫られて慌てることはない。押し倒されても動じない」

サラリと言ったカーチスの肩を掴んだ。

「押し倒した?」
「ご、誤解です。武術の手合わせで…」
「無関係なリオに文句を言う権利があるのか?」
「無関係じゃない」
「レティシアは無関係って言ってるのに?」
「マール様を挑発するなよ。ビアードは重度のブラコンだから無謀だよ。未だに誰も落とせていない」
「ブラコンか…。まだ時間はあるから。それに」
「カーチス、きちんと接待しろよ!!離れるなんて許さないから。今回は見逃すけど次は覚悟しておけ。レティシアに接待の代役させたら」
「マール様!?」

真っ青な顔で見るカーチスをしっかりと脅す。
留学生の接待の統率責任者は俺だし、トラブルは防がないと。
俺はグルトをレティシアにできるかぎり近づけないように手を回すことにした。
妹のラズ侯爵令嬢がレティシアに付き纏っているのはこの際見逃す。
留学生の受け入れがなくなればいいのに。
クロード殿下も迷惑そうに接待している。殿下にとって問題を起こす臣下を制御できない問題ばかり起こしそうな姫様達は好みじゃないから仕方ないか。早く留学期間が終わるのを祈るばかりである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない

千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。 失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。 ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。 公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。 ※毎午前中に数話更新します。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

処理中です...